キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

OverTheDogs解散……。最後までマイペースを貫いた素晴らしきオバ犬たちの歩みを今

こんばんは、キタガワです。

 

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正直な気持ちを綴ってしまうと、この結末を全く想像していなかった訳ではなかった。特にこの数年は表立った活動が少なくなってきていたし、コロナ禍に突入してからは月に何回かしか活動アナウンスが成されない状態になっていて「もしや」という気持ちは確かにあった。しかしながらこれまでマイペースに活動を続けてきた彼らのことだ。流石に解散はないだろうと考えていたのだが、結果はよもやだった。ただ毎年9月22日(オバ犬界隈ではバカの日と呼ばれている)のみ活動を行うというのだから、実にオバ犬らしい幕切れとも言えよう。

 

 
OverTheDogsは2002年に結成された恒吉豊(Vo)、佐藤ダイキ(Ba)、樋口三四郎(Gt)、星英二郎(Key)による4人組バンドで、その単純明快なワードセンスと耳馴染みの良いキャッチーな楽曲、恒吉による透明感のある歌声で、一躍ロックシーン期待の新星として台頭した。ただ元々OverTheDogsがそっくりそのままの形態であったのかと言えばそうではなく、元々は恒吉がドラム、佐藤がベース、そしてボーカルには荻野彰という別の人物を据えたシンプルなスリーピースだった。その後、荻野が交通事故により他界。恒吉がドラムからボーカルに転向し樋口が加入、キーボードとドラムを求めてメンバー募集をかけるも難航し、恒吉いわく「『これ弾いときゃいいんだろ』って奴が来て、多分こいつとやったら最終的に殴り合いの喧嘩になるだろうなって思って」というキーボーディストや、何かと馬が合わないギターなど意に沿わない人物との顔合わせが続く中、結果メンバーに加わったのが星と田中(田中は後に脱退)だった。なお樋口と星は解散コメントでそれぞれ「ギターがまったく弾けない僕を笑いながら信じてくれてありがとう」「ろくにピアノを弾けない自分を拾ってくれた」と綴っているようにメンバー募集を見るまで担当楽器を弾いたこともないズブの素人だったそうだが、それ以上の人間性の良さと真摯に楽器に向き合う姿勢が受け入れられ、正式に加入となった。

 

【フル】OverTheDogs「神様になれますように」 - YouTube


そんな彼らの知名度を高める契機となったのが、その多くがライブで披露されてきたフルアルバム『トケメグル』。“神様になれますように”や“普遍ソング”といった楽曲がパワープッシュされ、渋谷WWWをソールドアウトさせる動員力を見せ付けた。その後の彼らはインディーズレーベルに移籍したことも作用してか、取り分けライブハウス飲む中でも小バコとされるキャパ最大100~150規模の会場を巡るツアーを敢行したり、サイコロを振って出た目の数だけ進み記載された楽曲を演奏する『すごろっく』など自由奔放に活動。実際筆者が参加した広島公演でもかつて「ひとりひとりの顔がちゃんと見えるから」とキャパ飲む小さいライブハウスを回る重要性について語っていたし、タワーレコード限定で配布されたサンプラーでは「1曲1曲大事に育てた曲たちなので、みんなに愛されればいいなと思っております」と6曲を収録したミニアルバム『冷やし中華以外、始めました』について語っていたように、彼らにとって最も精神的に疲弊しない活動方針を模索した結果がこの流れではあったのだろう。


これ以降……具体的にはフルアルバム『君が使える魔法について』リリース後あたりから、彼らは混迷期に突入してしまう。バンド名をOverTheDogsからOVER THE DOGSへと突然改名して気付けば元通りになっていたり、楽曲のYouTube上の閲覧数が1万回を切ることが増えたり、恒吉の髪色がどんどん変化していったのも思えばこの頃で、そのため彼らの活動を温かく見守りながらも行く末について一抹の不安を抱いていたファンは、きっと少なくなかったと推察する。


加えて、そんな彼らの活動に大きな打撃を与えたのが新型コロナウイルスであることは言うまでもない。かつて恒吉が「新型コロナ変異株。感染するよりも感染させるのが怖い。もっというとライヴに来てくれるみんなには『連帯責任だーおらー騒げー』くらいに思うけど皆んなが家に帰ってじーちゃんばーちゃんやら子供やら免疫力のあまりない家族やら弱いものに連鎖するのが怖い。それが最近の見解。ライヴはしたい」と綴っていたように……これは希望的な考えではあるが、今までライブ活動でファンと触れ合い、それを更なる原動力として曲作りを行う彼らのことだ。もしもライブを通常通り行えていれば解散することはなかったのではとも思う。

 

OverTheDogs「本当の未来は」@渋谷WWW - YouTube


楽曲の面でも明らかな変化がある。2020年~今年にかけて発表した楽曲はギターの音もベースも控えめ(というよりほぼ聴こえない)で、恒吉の声と星のキーボードが前面に押し出されているが、これも解散コメントで「恒吉と星は一緒に音楽を続けていく」と言及があったように、実質的に恒吉と星の2名で制作に着手したもののようにも取れる。彼らは解散理由について「方向性の違い」という言葉を多用していたけれど、個人的にはこの言葉はおよそオバ犬とは最も縁遠い場所に位置する言葉であると思っていて、メンバー全員がひたすらにしりとりをするだけの“気まぐれしりとり”や佐藤の性格について歌った歌謡曲チックな“桃色ダイキ吐息”然り、ある種自由な制作を行ってきた過程を踏まえると腑に落ちない部分もある。それでは「仲が悪くなったのか?」というとそうではないだろうし、仲が悪くなったとは考えたくないのが正直なところ。故に、あくまで個人的な意見だが『コロナウイルスによって思うような活動が出来なくなってしまったこと』と『それによって生まれた空白と年齢の経過が各々の価値観を隔ててしまったこと』というのが正式な解散理由なのだろうと考える。


オバ犬がかねてより思考し続けてきた、素晴らしい未来。“本当の未来は”で歌われていた空飛ぶ車も疲れないシューズも、死んでしまった人たちと話せるようになることもなかったし、海外まで5秒で行ける未来も、癌の治療薬が出来るどころか世界は未曾有のパンデミックに直面してしまった。同じようにかつて『トケメグル』で想像していた本当の未来はバンドが売れて大金持ちになるものではなく、結果バンドの解散という最も悲しい結末を辿ることになったが、今はその決断をいちファンとしてゆっくりと飲み込んでいきたい。

 

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