キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

『フジロックフェスティバル2021』の第2弾ラインナップから観る各日の特色と興奮

こんばんは、キタガワです。

 

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フジロック第二弾出演者発表の通知が届いたのは、5月某日の午前11時。この時期は都市部のみならず地方でも夏フェスが次第に近付いている関係上連日様々なフェスの追加出演アーティストの通知が届くが、やはりフジロックは別格で、どことなく通知を見るなり直ぐ様公式ページにアクセスしてしまう魅力がある。そして第2弾ラインナップを見て改めて思うのだ。「これは何としても行かにゃなるまい」と……。


さて、いよいよ全体像が明るみに出つつある今年のフジロック。今記事では取り分け新規に発表された出演者と、今回のラインナップから見えた各日の特色について迫っていきたい。なおメインの出演者やその他の環境に関しては前回の記事で書き記しているので、是非とも該当記事も合わせてご覧頂ければ幸いである。


まずは1日目。今回追加されたラインナップはメインアーティストから順に、millennium parade、METAFIVE、坂本慎太郎、SiM、前野健太、くるり、Tempalayだ。King Gnuのメインソングライターでもある常田大希率いるカオスプロジェクト・millennium parade(おそらくかなりの大所帯のライブになると予想)やおよそフジロックのイメージが皆無なハードコアバンド・SiM、映像表現を多用しゆったり魅せるTempalayなど、ある意味ではビックリ箱的なラインナップに驚きだが、中でも誰しもが目を疑ったのはロックバンド・ゆらゆら帝国の絶対的フロントマンとして伝説を作り上げ、今はソロとして活動する坂本慎太郎の起用ではなかろうか。パンクな勢いを見せていたゆらゆら帝国の反動からか、ソロになってからというもの坂本の楽曲は年々BPMは下がりダウナーなものが多くなっていて、活動の軸足も基本的に海外に向けている。彼は依然インタビューのひとつで「アッパーな楽曲だけ異様に盛り上がる日本のオーディエンスと、各々好き勝手に音楽を楽しむ海外のオーディエンスとの違い」について語り、次いで「海外でやる方が楽」というような内容も語っていたが、そんな彼が晴れてフジロック出演。稀代のサイケデリアの新たな伝説は今年、ここから生まれるはず。


更に1日目について今回のラインナップで分かったことがあるとすれば、ロックとポップのジャンルが明確に差別化されている点。現状の出演者の流れのみで考えるとそれこそmillennium paradeからRADWIMPS、ロックアーティストから坂本慎太郎など、総じて1時間おきに曲調がグワっと変化する日になりそうだ。故にほぼ人が疎らなステージが次の出演者の出順になった瞬間には満員御礼になった、なんて異常事態が頻発する可能性もあるかもしれない。だからこそ気になるのは『そうした特殊な環境下でアーティストはどのようなセットリストで挑むのか』ということで、特にRADWIMPSやドレスコーズといったロックアーティストは比較的緩やかな楽曲多めでセトリを組むことも考えられるし、そんな中でSiMやMAN WITH A MISSIONがゴリゴリのロックを鳴らせばそれはそれで面白いだろうし……。総じて今から妄想が止まらない初日である。

 


次いで2日目。追加はNUMBER GIRL、indigo la End、Dachambo、tricotと今回の発表の中では最も少ない追加となってはいるが、なかなかの顔触れ。ここで注目すべきは誰が何と言おうとナンバガで、あの超爆音を広大な野外で聴くことが出来た時点でもう『勝ち戦』と言うものである。おそらくはまだ明るい時間帯での出演となることだろうが、是非とも“OMOIDE IN MY HEAD”や“透明少女”といったアンセムでぶち上げてもらいたいところ。先日配信ライブで明かされた新曲“排水管”が披露されるかどうかも気になる部分。ナンバガ以外の組としては、個人的には1曲1曲を異様な尺のジャムセッションで作り上げるDachamboや、昨今内容一切口外禁止の謎のサイレントショー『秘蜜』を終えたtricotにも期待。


総じて2日目の当日はポップ・サイケ寄りの音楽空間が形成されそうな予感。環境的にも音楽的にも『フラっと歩きながらふと立ち寄った音楽を聴く』というフジロックお馴染みの過ごし方が最も適した日になりそうだ。現状ナンバガとCornelius、King Gnuが最も注目されてはいるだろうが、翻って例年の流れを見ていると第3弾ラインナップあたりで大型のアーティストが放り込まれることも多いので、まだまだ油断ならない。隠し球はまだまだあるような来さえしてしまう、そんな2日目。

 


最終日となる3日目は、今回の追加によりおよそ言葉を選ばずに言えば『全く予想が出来ないフジロック』となった。追加は秋山黄色、青葉市子、カルメン・マキ&OZ、GEZAN、秦基博、民謡クルセイダーズ、上原ひろみ ザ・ピアノクインテットと、第1弾を踏まえて考えてもロック、ヒップホップ、チルアウト、更にはジャズやインストなど見事にジャンルがバラけ、ある意味では最もフジロックらしい布陣。中でも連日ツイッター上で日本政府への怒りを綴り、バンドの存在自体を知らなかったという18歳の新メンバー(!)が加入したGEZANは今観るべきアクトのひとつで、例年同様破滅的なパフォーマンスにマヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo)による憤怒と悲観が加わった時、どのような化学反応を見せるのか注目だ。


なお昨今のフジロック最終日は荒々しい程の大雨になることでも知られていて、実際2018、2019年にはテントが吹き飛ばされたり、ステージ間を繋ぐ橋が豪雨で流される被害も確認された。ただどんな状況でも幸福を感じられるのはフジロックの素晴らしい部分で、大雨の中行われたケンドリック・ラマーやシーアのライブは今なお伝説として語り継がれている。そしてこの日ラストを飾るアーティストは電気グルーヴ。どう転んでも盛り上がらない訳がない。当日に発声制限が緩和されているかどうかは未定だが、是非とも全員で“虹”を大合唱して最高の夏を締め括りたい。

 


……誰もが周知の通り、新型コロナウイルスは未だ収束の兆しすら見せない。しかしながらフェス業界はそんな中でもタフな動きを取り続けていて、5月に開催されたVIVA LA ROCKとJAPAN JAMをはじめ、7月には京都大作戦が、8月にはおそらくROCK IN JAPAN FESTIVALやSUMMER SONICが、きっとフェスの成功例を積み重ねてくれるはず。故に全ての音楽好きが待ち望む9月のフジロックは、十中八九開催されると考えて良さそうだ。ことロックフェスが「今やるべきことではない」などと槍玉に上げられて久しいが、やはりこんな時だからこそ、音楽は鳴らされなければいけないとも思うのだ。邦楽アーティストのみで繰り広げられる希望のフジロックの日は、もうまもなくである。