キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

映画『イニシエーション・ラブ』レビュー(ネタバレなし)

こんばんは、キタガワです。


突然だが、読者貴君にとって映画に求める最も重要なポイントとは何だろうか。ストーリー?ジャンル?はたまたイケメン俳優?……好む映画の形態が人それぞれバラバラなように、その映画に求める事象というのもまた、異なって然るべしである。けれどもその実、全ての『映画を鑑賞する人間』に当て嵌まる共通項も絶対に存在する。それこそが「どうせ観るなら満足度の高い作品を観たい」との気持ちではなかろうか。


そんな『満足度の高い映画』として今なお教科書的にカテゴライズされるのが、ズバリ『どんでん返しもの』である。実際、どんでん返し作品の需要は高い。書店やレンタルショップにおいてもポップにデカデカと「衝撃のラスト!」「こんなラスト見たことない!」など最終的に何らかのどんでん返しが起こることを確約しているものは多く、今ではそうしたどんでん返しものを収集する人々が好みの作品を語る、特殊なオフ会が開催されている話も聞くほどだ。

 

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今回紹介する映画『イニシエーション・ラブ』は、そんなどんでん返しっぷりをひた隠しにするどころか、公式パンフレットに見たことのないQ数でもって「最後の5分全てが覆る。あなたは必ず2回観る」と銘打っている。……これは決して誇張ではない。今記事の最後に貼っている公式PVでも、公開当時バラエティー番組における番宣でも、今作については「最後には予想もしなかった、映画界に残る結末になっています!」といった売り文句を主演陣が発言したことを覚えている。そう。『イニシエーション・ラブ』は、映画界でも類を見ないレベルで振り切った言わば『どんでん返し宣言型映画』なのである。


今作のあらすじは、モテない男・鈴木がひょんな出会いからマユ(前田敦子)に好意を示し、後に関係が進展。鈴木は彼女に相応しい男になろうと奮起し、髪型や服装に気を使って自分を磨く。こうしてめでたく付き合うこととなった二人は幸せな日々を送っていたが、突如鈴木は東京本社への転勤が決まってしまったことにより、遠距離恋愛関係となる。そして鈴木は静岡と東京を毎週往復するハードスケジュールをこなすが、次第に心が離れていき……というもの。


公式にも大々的に冠されているので語ってしまうが、今作はラスト5分間のまさかの展開こそが最大の見せ場である。これは誇張でも何でもなく、1時間40分に渡る今作のストーリーは最後の5分で完全に、180度破壊されるのだ。


無論どんでん返しを行うためには多数の伏線回収が必要となる訳だが、それは例えば推理小説で言うところの、後に犯人とされる人物が突然「ちょっとトイレ行ってきますね」と席を離れたり、「僕昔自衛隊入ってて」と話した人物がその高い身体能力を生かしてトリックを成し得たりといったチープなものではない。その伏線の大半があまりにも自然、かつじっと画面を凝視していても意識の埒外にあるような予想外の事象であり、総じて視聴者の視線を上手くかわす行動が非常に秀逸なのだ。僕自身数多くのどんでん返し作品に触れた自負はあるが、見事に騙された。この点は素直に素晴らしいと思うし、上げに上げたハードルを見事クリアした感すらある。


しかしながら何というか、この映画を文句なしの好評価とする人間はおそらく、映画や小説等に触れた経験の少ない人間か、恋愛映画を好んで鑑賞する人間なのだろうなとも思ってしまう。というのも世間一般的に言われるどんでん返しものと比較すると、幾分興奮に欠けるからだ。その主人公たちに感情移入して一喜一憂する類いの人間にとっては間違いなく頭をハンマーで殴られるような衝撃であろうが、無意識的に日常に起こり得る物事の『裏』を考えてしまうような穿った人間には、どうしてもラストの展開は「うわー!スゲー!」ではなく「ああ……おお……」となる。実際『鑑賞前のハードルを超えたか超えなかったか』が賛否両論となる根本的な要因だと思っているため、これに関しては正直、どんでん返しを確定事項として期待を煽った売り方が悪かった(何かしらのアピールをしなければ動員が振るわない、今の映画シーンの悪い部分もあるが)。


いろいろ語ってはしまったが、前半から例のラストにかけてのストーリーも作り込まれていたし、それでいてオチはバシッと。更には空前絶後のオチに関しても予想出来ないように工夫が凝らされているなど、総合的に観ていち映画として非常にうまい作りであった。飄々と「私恋愛系の映画好きなのぉ~!」とのたまう女子にこの映画を観せたら、心底ぶったまげるんじゃなかろうか。


しかしながら『あなたは必ず二回観る』『140万人が騙された!』と事前にハードルを極端に高めて過度な期待を煽ったことを踏まえると、最終評価は以下の通りに。いろいろ書き殴ってきたが、異常にハードルが上がった(上げた)状態でこの完成度に着地したことは素晴らしかったし、個人的には内容を全く知らない友人に観せたい映画トップ5には入る。恋愛系の映画を観たい。でも普通の恋愛はつまらないとするワガママな人間にこそ、是非勧めたい1本。


ストーリー★★★★★
コメディー★★★☆☆
配役★★★☆☆
感動★★★★☆
エンターテインメント★★★★☆

総合評価★★★★☆

 


松田翔太×前田敦子!映画『イニシエーション・ラブ』予告編