こんばんは、キタガワです。
1月23日、21時。欅坂46の公式サイトにて、織田奈那、鈴本美愉のグループ卒業と、平手友梨奈の脱退が発表された。
ツイッターには直ぐ様ファンによる文字制限の140文字には到底収まりきらない、けれども僅かな文章でもはっきりと絶望が汲み取れるほどの、悲痛な叫びが踊った。だが公式サイトを何度読み返しても、純然たる事実は覆らない。
平手友梨菜は、平手は、てちは、紛れもなく脱退したのだ。
……思い返せば、確かに予兆はあった。平手が初めて『山口百恵の再来』と呼ばれ崇拝されるようになったのは、彼女が初めてセンターを務めた“サイレントマジョリティー”の頃だっただろうか。ライブ映像を見れば一目瞭然だが、平手の存在感は圧倒的だ。笑顔を見せず歌詞に自分を憑依させ自傷的に歌い踊るそれは、もはや『アイドルのライブ』というより一種の演劇に近く、観る者全てを虜にするカリスマ性を持ち合わせていた。
いつしか平手の存在は欅坂46のファンのみならず、広く認知されるようになった。アイドルらしからぬ憂いを帯びたパフォーマンスは多くの支持を集め、欅坂46はいつの間にやら平手を中心に据え、日常生活における鬱屈した感情を体現する楽曲が圧倒的に多くなった。《一人が楽なのは話さなくていいから》(“避雷針”)、《目配せしてる仲間には僕は厄介者でしかない》(“黒い羊”)、《誰かと一緒にいたってストレスだけ溜まってく》(“アンビバレント”)……。そんな思いの丈を吐き出す楽曲群は、かつて“僕たちは付き合っている”で魅せた『一対一の恋愛』とも、“二人セゾン”で魅せたアイドル然とした爽やかな雰囲気とも、大きくかけ離れたものだった。
そして飛躍的なブレイクを果たした欅坂46と反比例するかのように、平手の精神状態は次第に悪くなっていった。前述の通り、平手のパフォーマンスは楽曲に自身を投影して行われる。かつてとりわけ歌詞の内容がハードで、一時期セットリストに入れることをタブーとした“エキセントリック”で平手が苦痛を訴えたことに顕著だが、辛い境遇を歌詞に敷き詰めた楽曲が大半を占めた現在の欅坂46において、彼女の負担は相当なものだったろう。
しかし彼女は今や欅坂46不動のセンター。更にはセットリストの決定権も持ち、……こんなことを書くのは申し訳ないのだが、欅坂46に一切興味のない人が「欅って平手のいるグループでしょ?それしか知らないけど」と語っているのを観たこともある。学校生活も交際も全て犠牲にし、欅坂46というグループの中心人物となってしまった、18歳の女の子、平手友梨菜。彼女は良く頑張ったと思う。それこそ山口百恵が「普通の女の子に戻ります」と語ってステージを降りたように、平手にはこの選択肢しか残されていなかったのだろうと、心苦しい思いにも駆られてしまう。そしてステージ上で見せる儚げな姿そのまま、消えるようにいなくなってしまったのは悲しいかな、彼女らしいなとも思う。
昨今のライブは欠席が続き、世間的にはミステリアスなイメージが付き揶揄されることも多かった。それでも彼女はラジオやテレビ番組に出続けたのだ。欅坂46を有名にしたのが平手なのだとするならば、平手を潰れさせた戦犯も、紛れもなく欅坂46なのだ。
これからの平手は、きっと欅坂46に代わる新たな光を探して生きていくだろう。映画『響』にて鬼気迫る演技を見せたように女優業を主とするかもしれないし、もしくは“角を曲がる”や“渋谷からPARCOが消えた日”のように、独特な歌声を活かしたソロ活動を行うかもしれない。
脱退前最後のライブも握手会も行われない今、僕らが出来ることはひとつ。それは彼女の行く末を見守り、今までで以上に応援することである。彼女が選んだ脱退。彼女が選んだネクストステージ。それはきっと光輝いているはずだ。
最後に、残された欅坂46について。今回の平手の脱退は、間違いなく大きな痛手となって欅坂46を直撃するだろう。それは決して、売上の減少や活動ペース低下といった一面のみに留まらない。ダンスパートの見直し。シングルの完成。何より、平手を超える求心性を宿した人物をセンターに据えること……。今やることは山積みだ。そしてこの窮地を脱して平手の脱退が過去の出来事として下火になった頃、ようやく欅坂46は次の一歩を踏み出すことができる。
そして同時に気付くはずだ。欅坂46には、平手が必要不可欠であったということを。
「欅坂はずっと、世の中に何かを届けていくグループだと思ってるから。それがなくなったら、(欅坂46としての平手友梨菜は)終わりかなあって思う」……。昨年4月に発売された某雑誌にて平手が放った一言が、僕は今でも忘れられない。一体彼女が脱退を決意した理由は何だったのか。彼女は脱退の後、何をしたいのか。彼女の口から語られる真実を、今はじっと待ちたい。
てち、今までお疲れさまでした。今後に訪れるであろう素晴らしき未来を、心より願っております。