キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター。

映画『カイジ ファイナルゲーム』レビュー(ネタバレなし)

こんばんは、キタガワです。

 

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映画カイジの最終章にして完全オリジナルストーリー。更に映画における中心部分を担うゲーム要素は原作者・福本伸行自らが手掛け、過去作の主要人物に至っては軒並み再登場という大盤振る舞いっぷりで話題を集めた『カイジ ファイナルゲーム』を観た。


先に断っておくが、僕は現在もヤングマガジンにて絶賛連載中の原作『カイジ』の大ファンである。原作はもちろんのこと、雑誌の発売日には毎週欠かさずチェックする。……言わばカイジのヘビーリーダーと言っても過言ではないだろう。


そんなこんなで意気揚々と劇場へ足を運んだ訳だが、端的に表現するならば、個人的には然程良くなかった。具体的には頭を空っぽにして雰囲気のみで楽しむ分には十分だが、とりわけ映画カイジの1作目、2作目と比較してしまうと大きく見劣りする印象を受けた。


ストーリーの主だった展開は過去作とほぼ同じ。金を得ようと模索するカイジが大規模なギャンブルゲームへの参加を決意し、最終的にはイカサマとあからさまな侮蔑で翻弄する相手側に対し、大勝を収める流れである。


今作において過去作にも原作にもない確固たるオリジナリティーとして描かれているのは、貧富の超拡大だ。東京オリンピック終了後に急激に景気が落ち込み、その結果失業率は40%を超え、給料からは実に7割がピンハネ。ビールは350ml缶1本1000円と、かつての地下帝国ばりの格差社会となっていた。そのため過去作や原作では一貫して自身の借金返済を理由に行動してきたカイジだが、今回カイジが大金を得ようとするのは純粋に「生活をより良くするため」であり、その点も過去作と大きく異なる。


そうしたシナリオを踏まえて何故今作が個人的駄作として成り下がってしまったのか。その理由は、希望的観測に満ち溢れたそのストーリー展開だ。


思えばかつてのカイジは勝利への可能性を徹底的に思案し、相手への劇的な対処法然り、万が一のトラブルにも対応できるような工夫然り『攻略の糸口』と『成功に至るまでの確たる可能性』を病的なまでに突き詰めていた。


例えば当てれば13億の金を得る高額パチンコ『沼編(映画ではカイジ2で、結末も異なる)』では、僅かな傾斜により後方に存在する当たり穴に絶対的に玉が到達しないことを見抜いたカイジが、建物内にある端の空き家の一室を借りて水貯めを大量に設置し、パチンコとは逆側の地盤沈下を引き起こして強制的に当たり穴に入れた。更に同じく沼にて、店側の調整器具のちょうど真上に穴を空け、そこから磁石を吊り下げて日増しに調整器具を大きくする細工を施し、最終的には玉がブロッキングされないようにもした。


……これらは全て構造とルールを逆手に取ったもので、事実カイジは地盤沈下に先駆けてあえて店に潜入して警備を強化させたり元土木作業員に話を聞いたりし、調整器具に至っては「パチンコ中はどんなことがあっても店側の責任で中止は無効である」との注意書きを免罪符とし、行動の正当化を図っていた。総じて一見無謀なそれらの行動は綿密な計算と勝負の状況に合わせたものであり、カイジが「建物を傾けたのさ」「調整器具の上見てみな。穴空いてるだろ」と語った当初こそ「それはルール的に駄目だろ」という思いは抱くにしろ、物語が進むにつれて腹落ちし、気付けばカイジの着眼点に感服してしまう。それこそがカイジの面白さであり、今なお愛され続ける所以なのだと信じて疑わない。


さて、そうしたかつてのカイジの行動を踏まえると、今作のゲーム展開及びストーリーにはいささか無理がある。ゲームの攻略法を語れば物語の核心に触れる可能性が高いので名言は避けるが、選択を誤れば死ぬゲームや、負ければ全資産を剥奪されるゲームの攻略があまりに天文学的確率とは言わないまでも運否天賦に賭けたものが多く、『金を稼がないと死ぬ』という過去の絶体絶命の境遇と異なり『ただ金を得たいだけ』という今作のカイジにおける目的とも釣り合わない。加えて今まで慎重に事を運んできたカイジにしては非常に短絡的というか「勝負に勝てたのはただのラッキーだっただけでは?」と思う場面も多かった。


そして主立ったひとつが気になり始めると全体の悪い点も見えてくるもので、基本的な会話の流れで「それは○○だ」「○○って何だよ」といったオウム返しが頻発することや、もはやネット上でもお馴染みとなった藤原竜也の絶叫が過去作と比べて極めて多いこと、何より、全体を覆うカイジにとって有利に運びすぎるストーリー展開とゲーム構成の粗さに気付いてしまう。何も考えずに観るならいざ知らず、日常的に様々な物事を俯瞰で判断し、思いを巡らせる人間にとっては極めて不向きな映画であると思った次第である。


正直映画を1時間程経過した瞬間には「これは早くも今年の映画でワースト1位かもしれない」との思いも頭を過ったが、辛うじて持ち直した理由は後半部分の存在。序盤から中盤にかけての若干強引な流れを引き継いでうまく帰結させる手法はなかなかに筋は通っているように思えたし、加えてクライマックスへと突き進む高揚感にも繋がっていた。この部分だけを鑑みれば、確かにカイジの良さは出ている。しかし中盤までのストーリーとゲーム展開がどうにも……。という訳で、この点数に。


今作は様々な映画に触れた人であればあるほど、ある種の批判点が目につくだろう。だが藤原竜也による「キンキンに冷えてやがる!」の一言を観たいがために劇場に足を運ぶ人なら満点か。『ジョーズ』にしろ『ターミネーター』にしろ、人気映画の3作目に関しては嫌な予感が付き物だが、今作もまさにその類いであった。うーん……。


ストーリー★★☆☆☆
コメディー★★★☆☆
配役★☆☆☆☆
感動★★☆☆☆
エンターテインメント★★★☆☆
藤原竜也のカイジ度★★★★★

総合評価★★☆☆☆
(2019年公開。映画.com平均評価3.0点)

 


映画『カイジ ファイナルゲーム』予告