キタガワのブログ

島根県在住。音楽ライター。酒浸り。

紅白歌合戦の初出場組の面々に感じた、『今』の音楽時代

こんばんは、キタガワです。

 

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先日、今年の紅白歌合戦の出場歌手が発表された。


毎年リーク情報がインターネット上で錯綜したり、予想外だの何だのと揶揄される紅白歌合戦。結果としては今年も例年同様の騒動めいた事象はあったものの、最終的にはいつもの紅白の発表と相成った。


何より驚きなのは、その顔ぶれだろう。


SEKAI NO OWARI、Sexy Zone、三代目 J Soul Brothersといった長年紅白歌合戦を彩ってきたアーティストは軒並み落選。それだけに留まらず、今年は特にお茶の間に広く鳴り響き、より一層のブレイクを期待されたはずのあいみょんやIZ*ONE、米津玄師といったネクストジェネレーションを代表するアーティストもおらず(おそらくあいみょんと米津玄師は自分から出場辞退したのだろうが)、例年になく物寂しさが残る結果となった。


そんな中注目したいのが、今年初出場となる面々だ。


間違いなく今年最もバズったと言われるOfficial髭男dismとKing Gnuを筆頭に、完全に出場のタイミングが1年遅れたFoorinがハレルーヤ。坂道グループからは満を持しての最後の刺客、日向坂46(元けやき坂46)が紅白内定を勝ち取った。更にはGENERATIONS、Kis-My-Ft2といった男性アイドルグループや、おそらく世間一般的は完全なる大穴だったであろうLiSAと菅田将暉という男女それぞれのソロアーティスト……。近年稀に見る異種格闘技ばりの様々なアーティストが集結した。


さて、今回は流行やオリオンチャートの奥の奥。3つの独自の視点から、主に初出場組に焦点を合わせながら紅白歌合戦を切っていこうと思う。


それではどうぞ。

 

 

何だかんだ米津

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僕は今年の3月に『米津玄師は宗教だ』という記事を執筆し、その最後に「今年の紅白で米津玄師繋がりで出場するのは何組だろう?」と書いた。


思えば2017年のあたりから、米津の勢いはある種宗教じみたものを感じるほどに留まることを知らなかった。音楽業界のみならず日本全体が米津が呟いた言葉の数々に翻弄されている感すらあり、そうした実情を危惧した当時の僕が思いの丈を爆発させた結果、それが『米津玄師は宗教だ』という色々とひん曲がった記事として帰結してしまったのである。


しかしながら、一度冷静に考えてみてほしい。今の日本の音楽シーンは読者の皆様方が思っている以上に、何だかんだ米津玄師1強時代なのだ。


米津自身の楽曲は“すべて”、某動画サイトにて5000万再生以上を記録。中には1億再生、4億再生なんてものもある。そして彼が手掛けた楽曲も軒並みブレイクを果たし、流行の中心へと躍り出ている。中田ヤスタカの『NANIMONO』。DAOKOの『打上花火』。Foorinの『パプリカ』。菅田将暉の『灰色と青』と『まちがいさがし』……。今まで世間一般的に見向きもされていなかったはずのアーティストたちが、米津の楽曲によってみるみるうちに名が知れ渡り、知名度を高めていった。


それは確かにアーティストとしては喜ばしいことだけれども、個人的には若干の怖さも感じさせる部分もあった。そしてそれは今年の紅白歌合戦にて、現実のものとなったのだ。


まず今回の紅白歌合戦の初出場組であるFoorinと菅田将暉が歌う楽曲はほぼ100%、米津が作詞作曲を務めた『パプリカ』と『まちがいさがし』である。そして僕の記憶が間違っていなければ、確かKing Gnuが大ブレイクを果たしたのも米津がツイッター上で「今一番オススメのバンド」としてプッシュしていたのがきっかけだった(特にKing Gnuは米津がオススメしてから、本当に驚くほど有名になった)。


こうして例を挙げただけでも、今年米津繋がりで紅白内定を獲得したのは間接的なものも含めて3組。そして昨今のリリース状況とオリオンチャートを鑑みるに、十中八九米津サイドは自分から内定を辞退しているが、もしも前回のような「祖父が~」といった話を持ち掛けられていたのであれば、米津自身も2年連続の紅白出場を果たしていただろう。


……今一度言わせてもらいたい。今の音楽シーンは何だかんだ米津である。

 

ストリーミングサービスの台頭

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音楽業界全体で見て今年の大きな出来事は、ストリーミングサービスの台頭であった。


はっきりと書いてしまうが、今や『CDを購入して聴く』という人間は、少なくとも若年層にはまずいない。特に今年はSpotifyやAmazon Music、LINE Music、Apple Musicといったストリーミングサービスが普及し、更にそこにTikTokや違法ダウンロードが入り込んでしまったために、音楽自体の価値は限りなく落ち込んでいる。極端な話をしてしまえば、『アルバム全体を聴く』という人間というのは若年層の50人に1人であると考えていい。


そんな時代だからこそ重要になるのは、ズバリ『1曲のバズ』である。


今年の初出場組で言えばヒゲダンの『Pretender』やKing Gnuの『白日』、Foorinの『パプリカ』、アニメ主題歌となって話題となったLiSAの『紅蓮華』がそれに該当する。先程の米津玄師の話にも繋がる話ではあるが、1曲だけでも爆発的に弾けた瞬間、そのアーティストにとっては何よりも勝るブレイクのきっかけとなるのが今の時代なのだ。


例えば個人的にはヒゲダンやFoorinならいざ知らず、King Gnuはメジャーデビュー1年目ということもあり、あまりにも紅白内定には早すぎると考えている。だからこそその裏にはストリーミングサービスの大バズが関係していることは明白で、言うなればNHK側も「ここまでブレイクしてしまっては流石に看過できない」と判断しての起用なのだろう。


これに関しては今の世の中の良い点なのか悪い点なのかは分からないが、とにかく。初出場組が今回内定を勝ち取ったその背景には間違いなく今の音楽事情が反映されているということを、忘れてはならない。

 

アイドルには絶対に勝てない

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これに関しては今年のみならず毎年毎年言われていることではあるのだが、やはりアイドルは人気が高い。


あまり知られていないことではあるが、紅白歌合戦の出場歌手の選考に当たって重要視されている事柄は、『今年の活躍・世論の支持・番組の企画演出』という3項目である。その中でCD売上やカラオケ、世論調査といった情報を総合的に判断し、NHK側が最終的に決定する。


さあ、勘の良い読者の方はお分かりだろう。まず『今年の活躍(CD売上)』の時点で、AKBグループ(坂道グループも同じ)は絶対的に上位に来るのである。


これに関しては僕が以前書いたこちらの記事を参考にして貰いたいのだが、『CD1枚に数秒間の握手券を封入し、握手の時間を増やすには何枚も購入するしかない』というこの悪どい手法でもって、AKBグループのCD売上はそんじょそこらのベテランアーティストが束になっても敵わない。


例えば今回内定が確定している日向坂46の最新シングルの売上は、初週で約47万枚。ちなみに同じく紅白に内定したヒゲダンの新譜は約8万枚である。この情報だけを見ても、いかにAKBグループのCD売上がとてつもないものなのか、ご理解いただけると思う。


次に『世論の支持』という点。これについては言うまでもないが、ファンが多いということはすなわち『曲が歌われたりリクエストされる回数も多い』のだ。例えばカラオケで『AKB縛り』のようなオフ会を開催したり、推しがSNS上で「全国のラジオでリクエストお願いします!」と語るだけで、あり得ないレベルの数字が動く。


最後の『企画演出』というのも、考えると簡単だ。アイドルはゴールデンボンバーのように大量の仕掛けを用意したり、バンドのように重い機材を準備する必要はない。必要なのは人数分のマイクだけ。しかも『電源が入っていなくても良い(要は口パク)』のだから、テレビ局にとってこれほど楽なものはないだろう。

 

おわりに

長々と語ってしまったが、僕は今年の紅白歌合戦をとても楽しみにしている。


今回の記事でボロクソに語った部分はあるにしろ、やはり大衆に多く認知される音楽番組というのは紅白歌合戦が一番だ。これをきっかけに音楽に対する興味が高まり、未だ見ぬ音楽に触れるきっかけになってくれれば、それは何よりも喜ばしいことである。


しかしながら声を大にして伝えたいのは、『全てを盲目的に捉えないでほしい』ということだ。


あなたが紅白歌合戦を観て、「菅田将暉かっこいい!」でも「King Gnuの井口さんやっぱり最高!」でもどのような感想を抱いても結構だが、今回の記事で書いたように、その裏にある部分を決して忘れないでほしい。


紅白歌合戦は清純なテレビ番組だ。だからこそ分かりやすく売れたアーティストを起用するし、売れた曲を演奏させるし、万人受けしたアーティストにオファーする。だが『音楽』というのは、それだけではないはずだ。もしも気に入って貰えたなら、そのアーティストの他の曲も聞いてほしい。その裏側にある深意を汲み取ってほしい。そして何より、紅白での1日のパフォーマンスだけが全てだとは思わないでほしいのだ。


以上が、僕が今回の記事で絶対に伝えたかったことだ。


貴方にとって今年の紅白歌合戦が最高のものとなることを、心から願っている。