キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

【ライブレポート】『ティッシュタイム・フェスティバル~大感謝祭~』@豊洲PIT

こんばんは、キタガワです。

 

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10月22日、豊洲PITにて行われたオナニーマシーン主催のライブイベント『ティッシュタイム・フェスティバル』に参加した。


今回のライブは20年に渡って活動を続けるオナニーマシーンが、盟友たちを集めて開催する大規模なものだ。しかし同時に、世間一般的な同窓会チックなイベントとは一線を画すものでもある。


2018年の7月、オナニーマシーンのフロントマンであるイノマー(Vo.Ba)は口腔底がんを発症し、余命3年であることを宣告された身である。その後は舌を全て切除し内臓までも失っただけでなく、その1年後……。つまり今年の7月には癌が転移、再発したことを公表した。癌の進行は現在ステージ4。彼のツイッターには、壮絶な闘病生活の模様が日々更新されている状態だ。


ステージ4の口腔底がんは、発症してから5年間までの平均生存率が45%とも言われている。イノマーは喋ることがほぼ不可能な状況であると同時に、全身にはしる痛みや体力の低下と闘っている。ライブを行うこと自体彼に良い影響を与えるはずがないということは、オナニーマシーンも、そしてイノマー自身も重々分かっているはずである。


そんな状況下で行われたのが『ティッシュタイム・フェスティバル』。オナニーマシーンが定期的に開催しているライブのひとつだ。今回は初めて『大感謝祭』と銘打たれ、過去最大規模のキャパである豊洲PITで開催される今回のライブを盛り上げるのは、銀杏BOYZ、ガガガSP、サンボマスター、氣志團という共にパンクシーンを盛り上げた盟友たち。間違いなく今回のライブは歴史に残るものであるし、きっとイノマーも心にも、美しい思い出として残ることだろう。


時刻は14時。宮中三殿では天皇即位の儀が行われている真っ只中だが、この豊洲PITだけは話が別。前説の時点で「オナニー!」のコール&レスポンスが繰り広げられ、厳かな雰囲気は一切感じられない。


前説も終わらない中、上半身裸にアコースティックギターを装着した峯田(Vo.Gt)とサポートメンバーがステージに降り立った。かくして爆音とノイズにまみれた一夜の幕は上がったのだった。

 

 

銀杏BOYZ 14:35~15:15

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瞬間、耳をつんざくような爆音が轟く。楽器の音量が極めて高いのはもちろんのこと、多種多様なノイズが過激さを増大させていた。それは言うなれば音の暴力。僕自身様々なライブに参加してきた自負はあるが、間違いなく人生で一番の爆音であった。


増幅し続ける爆音の中歌う峯田は『歌う』というよりはがなるように歌い上げ、早くも声はガラガラだ。


今回のライブで純粋に銀杏BOYZとしてリリースされた楽曲は『ぽあだむ』とラストに演奏された新曲のみで、それ以外は2003年に解散した銀杏BOYZの前身バンド、GOING STEADYのナンバーからというまさかのセットリストだった。


こうした特殊なセットリストとなった背景には、やはり、長年行動を共にしてきたイノマーの存在が大きいのだろう。しかしながらそうしたセンチメンタルな一面は一切見せることなく、鬼気迫るパフォーマンスで会場を温めていく。

 


若者たち/銀杏BOYZ


中でも圧巻だったのは3曲目に披露された『若者たち』。峯田は絶唱しながらステージを駆けずり回り、客席に突入。聴力的に間違いなく悪影響を及ぼすほどの爆音と、日常生活ではまず耳にしない洪水のようなノイズが渾然一体となり、ぐちゃぐちゃのカオス空間を形成していた。ちなみに、この時の時刻は未だ14時過ぎ。1曲1曲の凄まじいカロリーに翻弄されながら、濃厚な時が過ぎていった。


『ぽあだむ』のアドバイは峯田以外のバンドメンバーが去り、ステージには峯田一人に。今までまともなMCは一切行ってこなかった峯田が、おもむろに語り始める。


「本当のこと言うと、僕は今日オナマシの出演がなくなるんじゃないかって思ってました。イノマーさんが事切れて、僕らだけっていう。それでもいいかなって思ってました。でも何とか持ってくれたようでございます」


「癌がステージ4で、内蔵も舌も全部なくなって。それでも全裸でライブするっていう、そういう一人の男の生き様みたいなものを、これから観れるんじゃないかと思います」


そう語って披露されたのは『アーメン ザーメン メリーチェイン』と題された新曲。アコースティックギターの力強くストロークで恋愛模様を描く様は、かつての『光』や『人間』を彷彿させる。しかしこの場所で歌われた『アーメン ザーメン メリーチェイン』はタイトルにもある通り、『ティッシュタイム・フェスティバル』で演奏することに大きな意義があるようにも思え、感動的に響いた。


今回の銀杏BOYZのライブは普段通りの熱量と喧騒にまみれていながらも、長尺のMCはなしで集中力を研ぎ澄ませていたのが印象的だった。これらは言いたいことを言いまくり、CD音源丸無視で事故破壊的なライブを行うかつての銀杏BOYZのライブとは一線を画すものだ。彼の心情を伺い知ることはできないが、きっと様々な思いを抱えてこの舞台に立っていたはずだ。


最後に一言「ありがとうございました。銀杏BOYZでした」と語ってステージを降りた峯田は満足そうでもあり、込み上げる感情を圧し殺しているようでもあった。


【銀杏BOYZ@豊洲PIT セトリ】
星に願いを
東京少年
若者たち
駆け抜けて性春
愛しておくれ
BABY BABY
ぽあだむ
アーメン ザーメン メリー チェイン (新曲)

 

ガガガSP 15:50~16:30

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2番手は神戸のゴキブリ、日本最古の青春パンクバンドの異名でも知られるガガガSP。おもむろにステージに現れ、マイクを握り締めたコザック前田(Vo)が語り始める。


「ある人が言っておりました。パンクとは青春であると。青春には楽しいことや辛いこと、全部詰まってると。そう書いてくれたのがイノマーさんです。その思いを持ちながら、僕らは22年間やってきました」と語ってスタートしたのは、ガガガSP屈指のキラーチューン『線香花火』だ。

 


ガガガSP「線香花火」

 

「銀杏BOYZとサンボマスターに挟まれてて休憩時間かと思っていた」とMCで語っていた前田だが、気付けばダイバーが続出し、大合唱に次ぐ大合唱という大盛りあがり。そんな盛り上がりに火をくべるべく、セットリストはベスト版の再現のような磐石のセットリストで進行。


『青春時代』では口に含んだ水を霧状に吹き出したり、ペットボトルを投げ込んだり、果ては客席に飛び込みもみくちゃにされながら歌うという、エンターテインメント性抜群のパフォーマンスで魅了。楽曲と楽曲の合間には歌詞のフレーズを繰り返し、次曲を予感させつつ移行するそれはまさにライブバンドであり、パンクロックシーンの第一線で活動を続けるガガガSPの泥臭さと心意気を感じさせてくれた。


中盤以降もバラードチックな展開は一切なし。猪突猛進型の男臭いパンクロックで完全燃焼を図る。


「イノマーさんも頑張ってる。皆さんも何かから始めましょう。明日からではなく、今日から!」と前田が叫んで雪崩れ込んだラストナンバーは『明日からではなく』。終了間際、アカペラで熱唱した「もったいないとか、無駄な事だとか、僕は思わない。決して思わない」の一幕は、年相応の重さを孕んだ一言として響き渡った。


中盤のMCで「今、我々はこれほどの人の前で演奏することはほとんどありません。だから本当は新しい曲をやったりとかすると思うんです。でも今日はそういう日じゃないですよね」と前田が語っていたが、確かに珍しく新曲を一切披露しないフェス向けのセットリストだった。そこには確かに新鮮さはなかったかもしれない。だが多少は結成当初から一貫して青春パンクを訴えてきたガガガSPにとっては、これこそが最も盛り上がるというのもまた事実で、汗だくの観客を観てもそれは明らかだった。


この日、ひたすらに愚直に泥臭く観客の心を掴んだのは、間違いなくガガガSPだった。


【ガガガSP@豊洲PIT セトリ】
線香花火
晩秋
青春時代
忘れられない日々
国道二号線
つなひき帝国
明日からではなく

 

サンボマスター 17:05~17:45

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サンボマスターのライブでは始めに山口(Vo.Gt)が叫ぶ突発的な一言がその日のキーワードとして進行していくことが多いのだが、この日は「童貞!童貞!」とティッシュタイム・フェスティバルならではのコールで会場を掌握。


まずはこの日ならではの『オナニーマシーンのテーマ』で会場を温めると、そこからはフルスロットル。ガガガSPのコザック前田を呼び込んだ『さよならベイビー』や「イノマーとあなたの、そのぬくもりだけに用がありました」と語って雪崩れ込んだ『そのぬくもりに用がある』、イノマーの名前を絶叫して涙腺を緩ませた『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』など、今回はとりわけイノマーに対して強いメッセージを送っていたのが印象的だった。


後のMCで山口が語っていたが、サンボマスターは数十年前、当時雑誌編集者であったイノマーに才能を見出だされた稀有なバンドだ。今でこそお茶の間に広く名前が知れ渡った彼らにとって、長く苦しい下積み時代を生き抜く糧となった人物こそが、イノマーその人なのだ。

 


サンボマスター / 輝きだして走ってく MUSIC VIDEO


「どこに出しても恥ずかしくないライブじゃねえ!どこに出しても恥ずかしいライブをするんだよ!どこに出しても恥ずかしいライブ、出来る人ー!」と焚き付けたり、「さっきから泣いてる人がいるんだよ。こんな43歳のオッサン観て泣いてんじゃねえぞ!」と絶叫した後、笑顔になったファンを観ながら「笑った!笑った!笑ったー!」と屈託のない笑顔を浮かべる山口。彼らのライブを観るたびに思うことだが、彼らのライブではCD音源だけでは絶対に伝わらない『リアルさ』がある。


全国ツアーも全ソールドアウト。各地のフェスでも入場規制を連発し、ライブシーンで近年何度目かのブレイクを果たしているサンボマスター。追い続けているファンは、きっとそうしたライブに心震わされた人たちなのだろう。よくよく考えると、何度もライブを観ていながら、それでも泣けるバンドというのは稀有な存在なのではなかろうか。


【サンボマスター@豊洲PIT セトリ】
オナニーマシーンのテーマ(オナマシカバー)
さよならベイビー(withコザック前田)
夜汽車でやってきたアイツ
そのぬくもりに用がある
世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
できっこないを やらなくちゃ
輝きだして走ってく

 

氣志團 18:20~19:00

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続いては氣志團。この日集まったバンドの中では唯一パンクという媒体を介さず、大衆に受け入れられた氣志團。そのためどうなることかとワクワクしながら観ていたのだが、いやはや、恐れ入った。まさか彼らのライブがここまで笑いに満ち溢れたものとなるとは、全く思っていなかった。

 


氣志團 - One Night Carnival


彼らのハイライトは間違いなく、十分以上に及んだ『One Night Carnival』における一連の流れだろう。


綾小路翔(Vo)が「One Night Carnivalが時代遅れだと?んなこと分かってんだよ!みんな『この後の歌詞何だっけ……』ってなってたこと。歌ってたのがサンボマスターの半分以下だったこと……」と自虐トークを展開すると、「皆さん、氣志團は生まれ変わりました!」と語り、今まで黒い幕で覆い隠されていた背後のスクリーンがゆっくりと開く。


そうして演奏されたのは『O.N.C. 2019』と題された新曲……。もとい、DA PUMPの代表曲『U.S.A.』をオマージュした抱腹絶倒のナンバーであった。

 


FNS歌謡祭 氣志團×「U.S.A」


背後のスクリーンには本家『U.S.A.』のMVと似た映像が流れ(文字の出し方や明るさもそっくりそのまま)、『U.S.A.!』は『ワン・ナイト・カーニバル!』「C'mon Baby America」は「C'mon One Night Carnival」や「俺んとここないか?」に変化させ、ダンスもほぼ完コピで全く別物のOne Night Carnivalを繰り広げる。


これだけでは終わらない。続いては次世代型のOne Night Carnivalとも言える『One Night Carnival 2020』へ移行。こちらは一見One Night Carnivalのエッセンスを残してはいたものの、曲が進むにつれ完全なる星野源の『恋』のオマージュであることがわかる。特にあの一世を風靡したダンスに関してはミスマッチっぷりに、惜しみ無い拍手が送られた。


その後も「ゴールデンボンバーに『俺たちの影響受けてる?』聞いたらって全然違った。Gacktさんだった」と自虐トークをかつてライブ中に全裸になり書類送検された銀杏BOYZの峯田を槍玉に挙げながら「俺ら(DJ OZMA)はボディースーツ着てただけだから……」と自虐トークを繰り広げ、果ては天皇即位の儀に合わせて「天皇即位。テンション即死。みたいな」とギャグを突っ込んでおきながら「あっ、みんなこういうのでは笑わないのね」と流石のトークスキルを見せ付け、爆笑の渦に。


それでいてラストはしっかりと率直なメッセージソング『今日から俺たちは!!』と『鉄のハート』で締める氣志團の男気を見た。


氣志團は『One Night Carnival』の大ブレイクによって注目を集めたバンドだ。しかしその後は精力的に活動してはいたものの爆発的な売り上げには恵まれておらず、MCで綾小路が言っていたように、所謂『一発屋』のレッテルを貼られることもあった。


それを踏まえて、今回のライブである。過去の出来事を見事にネタに昇華し、大爆笑をかっさらった彼らにしかできない最高のライブがそこにあった。彼らが一瞬のブレイクだけで消えることなく、現在も音楽シーンで第一線を走り続けていることには、確固とした理由があったのだと改めて実感した40分間だった。


【氣志團@豊洲PITセトリ】
砂の丘~Shadow on the Hill~
Let's Dance
俺たちには土曜日しかない
One Night Carnival
O.N.C. 2019~U.S.A.ver~
One Night Carnival 2020~恋ver~
今日から俺たちは!!
鉄のハート

 

オナニーマシーン 19:30~20:00

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長かったフェスもいよいよ大詰め。盟友たちのバトンを受け取りラストを飾るのは、オナニーマシーンだ。


オノチン(Vo.Gt)が異様なスピードでステージを走り回り、ガンガン(Dr)がリズミカルなドラムを叩き始める。そんな中登場したイノマーの風貌は、かつての彼を知っている身としてはあまりにも衝撃的なものだった。


車椅子に乗せられて所定の位置に着いたイノマーは骸骨のように痩せ細り、胸にはぼっこりと転移した癌が浮き出ている。右目には眼帯、傍には酸素呼吸器が準備されており、ゆっくり、本当にゆっくりとライブに向けての準備を整えていた。自身の担当楽器であるベースを肩にかけるのも辛そうで、スタッフがその都度アシスト。その光景を観た観客の気持ちは同じだったろう。「これは本当に歌えるのだろうか」という緊張感が会場を支配し、沈黙の時間が訪れる。


しかしそんな状況を払拭するかのように、オノチンはイノマーに向けて「絞ってきたねえー!」と笑いを誘い、会場に乾いた笑いが広がっていく。おそらくはオノチンも、ライブ前にこうした反応になるのは大方理解していたのだろう。「ハハハ……」と自嘲気味に笑ったオノチンだったが、そこからはギターのチューニングに集中。ふとステージの端に目を向けると、スタッフや今回出演したバンドメンバーが固唾を飲んで見守っていた。


言葉を発する上で無くてはならない舌が無くなってしまっているため当然ではあるが、言葉はほとんど聞き取れない。性格には舌を動かさなくても発音できるような断片的な言葉だけは聞き取れるため、ニュアンスは理解できるのだが、話の全貌を知ろうとするのは難しい。しかしながら真剣に耳を傾け、必死にイノマーの言葉を読み取ろうとするファンの姿には、グッときてしまった。


ガンガンのカウントからスタートした1曲目は、女性の秘部を高らかに歌い上げる『チンチンマンマン』。

 


オナニーマシーン - チンチンマンマン


モニターには卑猥な言葉の数々で織り成された歌詞が流され、その勢いは全盛期そのままと言っていいほど。イノマーは文字の全てを発音することは出来なかったものの、モニターに投影された歌詞を観ながら聴けばしっかりと理解できるものだった。時折体力の低下により歌えなくなったり、休憩時間を設けて楽曲自体が長尺になったりしながらも、1曲1曲を着実に消化していくその姿には、バンドマン然とした格好良さすら感じるほどだった。


観客のサポートも涙腺を緩ませる。イノマーは気丈に振る舞ってはいるものの明らかに辛そうで、言葉に詰まる部分や酸素を吸いに持ち場を離れることも何度かあったのだが、その都度観客が歌ってカバーしたり、イノマーの休憩中は「オイ!オイ!」のコールで熱量を下げないようサポートしたりと、何とか成功させようと尽力していたのが印象的だった。


今回のライブは、決してオナニーマシーンのものだけではない。彼らに救われてきたバンドマンたちの。フェスの運営に携わってきたスタッフの。応援するファンの。この場に集まった人々の全ての思いが詰まったライブなのだ。


その後は8000円もするDVDが絶賛発売中であることや、オナニーマシーンの楽曲の一番人気を決める初のファン投票で『あのコがチンポを食べてる』が1位になってしまったことなどを語りつつ、ラストは『オナニーマシーンのテーマ』で完全燃焼を図る。


ガンガンによる延々続くタイトなドラムソロに乗せてオノチンは客席に突入し、隅々まで渡り歩きながらティッシュの束を投げていく(イノマーいわく全て“使用済み”とのこと)。気付けば頭上からも送風機を使って大量のティッシュが降り注ぎ、それを観ながらイノマーは「癌、伝染してやる!」とご満悦。ティッシュをばらまくために客席に突入するのは元より、何度かイノマーの体調を考えてのことだろう。CD音源とは比べ物にならないほど長尺なものとなった『オナニーマシーンのテーマ』の後半はイノマーとオノチンが完全にパンツ一丁になり、オノチンに至ってはパンツも脱いで風のように去っていった。


アンコールはこの日の出演者全員での『I LOVE オナニー』、この2度目(サンボマスターのカバーを含めると3度目)となる『オナニーマシーンのテーマ』だ。峯田や前田、山口、綾小路翔といったロック界を代表するボーカリストたちがマイクを交代で回しながら「オナニー!」と絶叫する一幕はこのフェスでなければ起こらなかった奇跡であり、同時にこの場で音楽を楽しむことができて良かったとも思えた瞬間だった。


始まる前はどうなることかと思っていたが、結果としてオナニーマシーンのライブは、まるで全盛期を彷彿とさせる盛り上がりに満ちたライブ。最後に出演者全員が横一列に並んで腕を高く挙げたイノマーは、満面の笑顔だった。


【オナニーマシーン@豊洲PIT セトリ】
チンチンマンマン
あのコがチンポを食べてる
恋のABC
オナニーマシーンのテーマ

[アンコール]
I LOVE オナニー
オナニーマシーンのテーマ


初の大規模開催となったティッシュタイム・フェスティバル。開催前にはイノマーの癌の転移といった懸念事項はあったものの、最終的には爆音と笑顔に溢れた最高のライブ空間となった。終演後、散り散りになったティッシュが地面にぶちまけられた異様な光景は、このフェスの大成功を物語っているかのようだった。


会場から出ると、でかでかと『オナニーマシーン』と書かれたティッシュペーパーと、とあるフライヤーが渡された。そこにはライブ2日前の10月20日にイノマーが記した、赤裸々な思いが綴られていた。


「ぶっちゃけ立ってるのがやっと。ベースが重い。右目は見えないし、先日、喉にチューブを入れる手術をしたため、基本、声は出なくなってしまった……。それなのにステージに立つ。正解がどうなのかはわからない。でも、立つ。やりたくね……(笑)。でも、やるんだ。がんなのに」


そう。前述したように、イノマーはステージ4の癌に侵されている身である。にも関わらず全身全霊のパフォーマンスを魅せ、屈託のない笑顔で大勢の人々を笑わせていた。こんなバンドマン、世界広しと言えどもイノマーくらいではなかろうか。彼を慕って集った仲間たちと、長らく愛し続けたファンたちと。彼は最後までやりきったのだ。


オナニーマシーンと出演者の方々に、心からの感謝を伝えたい。一生忘れられない、最高のフェスだった。

 

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