キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

【イベントレポート】最上もが『比治山祭 最上もがトークショー』@比治山大学

こんばんは、キタガワです。

 

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10月20日、広島県・比治山大学の大学祭にて、最上もがのトークイベントが開催された。


始めに断っておくが、僕は最上もがの熱烈なファンではない。せいぜい公式ツイッターをフォローしている程度で、彼女の出演したドラマや演劇は一度も観たことはないし、足しげくライブに足を運んだでんぱ組.incの推しも別の人物(古川未鈴)だった。


では何故今回トークショーへの参加を決めたのか。その理由はひとつ。彼女の生き方に興味があったからだ。


公式で明言されている通り、彼女の心には巨大な闇がある。人気の絶頂にあったでんぱ組.incを脱退した理由も、メディア露出を極端に避けた理由も、全ては心の疲弊が原因だった。今でこそバラエティー番組や雑誌のインタビューに引っ張りだこではあるが、その中でもほぼ必ず「僕は人が苦手なんですよ」「友達がほとんどいなくて」といったワードが聞かれる。


当ブログでも何度か話題に出しているが、僕自身もそうした『人と関われない人間』であり、最上もがに対しては漠然と「似たタイプだな」と感じてしまう部分がある。だからこそインタビューや番組のようなキチキチっとした媒体ではなく、ある種ゆるく進行する今回のトークショーで彼女の生き様や視点、日常について知ることは、何かしら得るものがあるのではないかと思ったのだ。


今回のトークショーでは事前に席が割り振られており、案内に従って着席。結果としては前から2列目という良席だった。男女比はほぼ5:5であり、比較的若い年代の人が多い印象だ。大学祭のワンシーンということもあってか空席もいくつか散見されるものの、あまり気にならない程度だ。


定時を少し過ぎた辺りで、今回の主役である最上もがと、共にイベントを進行するラジオパーソナリティー(深瀬智聖)が登壇。最上は黒を基調としたシックな装いで、後に彼女自身が語った言葉を借りれば『普通の女性』といったイメージで、所謂芸能人オーラのようなものは然程感じなかったのが印象的だった。


今回のトークショーは約1時間。まず最初の数十分間は中心に椅子2脚とテーブルだけが鎮座する、シンプルなフリートークで進んでいく。


でんぱ組.inc卒業を発表したと同時に年齢を公表した最上。そのためまずは結婚や今後の展望といった30歳ならではの話へ。最上は自分ひとりで安らげる環境に何よりの安心感を抱いているらしく、結婚をした瞬間に他者との共同生活を強いられることから「結婚願望は一切ないです」とキッパリ。


現在はタレント業を主としている最上だが、今後やってみたい仕事として「声の仕事ですかね」と語り、その理由は「顔を出さなくて良いから」という最上らしい返答に会場が沸く。しかしながら生まれは東京ではあるもののイントネーションが少しおかしいらしく、何度かチェックが入ることもあるという。だが逆にそうした仕事は新鮮であり、続けていくうちに声の仕事の楽しさに目覚めたと語っていた。ちなみに彼女いわく、ラジオの収録はスッピンで行くそう。


最近はスピードワゴン小沢に勧められたドラゴンクエストのアプリゲーム『ドラクエウォーク』をプレイしているらしいのだが、「小沢さん全然パーティーに誘ってくれないんですよ!」と一言。よくよく話を紐解いていくと、無課金のはずの最上が短時間で相当のレベルになっていたことから、小沢が嫉妬したために誘わないのでは?という結論に。


基本的にはあまり人と目を合わさず、自分から先導して話題を振らない最上。しかしながらゲームの話になると身ぶり手振りを繰り出しながら饒舌になる彼女を見ていると、やはり彼女にとってゲームは大きな存在であり、でんぱ組.inc『W.W.D』で歌われた「ずっとずっと引きこもってネトゲやってた、両手じゃ足りないからファンクションキー足で押してた」という歌詞にあるように、病的なまでのゲーマーであることを証明した形であった。

 


【生きる場所なんてどこにもなかった】でんぱ組.inc「W.W.D」Full ver.


その後も一番辛かった仕事として「カメラマンを彼氏に見立ててデートする」、「鏡越しにキスをする」といった事柄を挙げ、「そもそも彼氏いたとしてもこんなの喋らないよ!っていう会話ばっかりで」「仕事やりたての時って拒否権とかないじゃないですか。だから本当にやりたくないです!っていう仕事もやらないといけなくて。あれは本当に無理でしたね」と赤裸々に語る最上は人間味を感じさせてくれ、好感が持てた。


続いては観客参加型の抽選会へ移行。その内容はガラガラを回し、当選した人にはチェキやサイン色紙が当たるというもの。


当選した人はその場で登壇させられ、大勢の観客が見守る中で撮影会等が行われるのだが、これがなかなかに恥ずかしい。ちなみにチェキはほぼ全身が写るタイプのチェキ(普通のチェキは上半身のみが写る)であり、「こんなのアイドル時代にもしたことないよ!」と最上。当選した人の大半は男性。すぐそばに最上がいるというシチュエーションに、全員がガチガチに緊張していたのが面白かった。


最後は質問コーナー。事前に観客が紙に書いて提出していた質問だが、最上がその中から無作為に選んで読み上げ、答えるというシンプルなもの。


気になる質問内容は「ハムスターに名前をつけてほしい」「絶対に付けるアクセサリーは?」「なぜショートヘアーなのか」「オススメの映画は?」「次に来るゲームは?」といったもので、ひとつひとつ丁寧に回答していた。回答は以下の通り。

 

ハムスター→「まんじゅうかだいふくかおはぎ」

アクセサリー→「今は左に1つ、右に3つのピアスを開けているが、特にこだわりはない。ネイルもしてない」

ショート→「でんぱ組.inc時代の頃に同じ髪型をずっとしてると覚えられやすいと言われ、それからは基本的にショート。伸ばした時期もあったが、ウザったく感じてやめた」

映画→「人を殺す系の映画はわりと見る。今はジョーカーが気になっている」

気になるゲーム→「ファイナルファンタジー7」


ラストは「大学生活、楽しんでください。社会人は大変だぞ!」とメッセージを伝え、ステージを後にした。


僕は今回のトークイベントを経て、最上もがのファンになってしまった。


彼女の言葉には嘘がない。というより、偽りの自分を捨てたというのが正しいかもしれない。思えば僕が最上もがの存在を知ったのはでんぱ組.incがきっかけだったのだが、ステージ上の彼女はアグレッシブに動き回り、その歌唱力を生かしてソロパートも多数トライしていた。しかし正直な気持ちとしては無理をしてアイドル活動を行っているようにも思え、痛々しい気持ちというか、「これが本当に最上もががやりたいことなのか?」という疑問が頭に浮かんでいた。


しかし30歳にしてやっと素の自分で仕事が出来るようになった今の彼女は無敵である。今後は更に様々なことにチャレンジし、注目を集める存在となることだろう。


闇が深いと言われる芸能界。芸能人は皆笑顔を貼り付け、心の奥底で思っている『本当の自分』を殺しながらテレビに出演している。例えばAKBグループのように全員が全員同じ笑顔をしているのを見ると、僕個人としてはクローン人間のようにも感じられて仕方がない。


そんな今だからこそ、最上もがのような思考を持つ人物が等身大で活躍を続けることには大きな意味があると思うのだ。彼女の今のスタンスは「求められているなら全力でやる」という従来の思考に加え、「楽しく仕事をする」と達観した気持ちでいる。これが無敵と言わずして何と言おうか。


ともあれ、最上もがの魅力を体現する素晴らしいイベントだった。また機会があれば、彼女のイベントに足を運んでみようと思えるほどには。