キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

YouTuberのスパチャが全面的に許せない、という話

こんばんは、キタガワです。

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今全国的に、YouTubeを観る人々が増えているらしい。


調べてみると、リアルタイムでテレビを観る人は10年前と比べて著しく減少しているそうだ。「テレビは一家に一台」とも言われたかつての日本は、今はどこにもない。そう断言しても良い程に、今の若者はテレビを観ないという。


さて、そんなテレビの代替として今ポピュラーな存在にありつつあるもの、それこそがYouTubeである。


YouTuberのみならず僕らブロガーもそうだが、インターネット上で生計を立てる者にとっては広告収入が最大の生命線である。


あまり知られていない話なのでここで明言させてもらうと、ブロガーは記事内に配置されている広告をクリックされれば、それが収益になる。対してYouTuberは動画を再生した直後、ないしは数分経過した後に表示される広告(スキップできるもの、できないもの含む)が流れた瞬間、収益が発生する。


そう考えると、YouTuberはブロガーと比べて楽に利益を得られるとも言える。ブロガーはいくら記事中に広告を付けようが、それをクリックされなければ話にならない。


しかしYouTuberは、動画を観る際には必ず広告を出すことが可能だ。それがいくらつまらない動画であっても、である。だからこそ現在では文字だけで埋め尽くされたまとめ動画が横行し、検索に無理矢理引っ掻けて利益を貪ろうと躍起になっている。


それこそHIKAKINやはじめしゃちょーといった著名な人物においては、およそ一般人が想像も出来ないほどの金が転がり込んでくることは明白で、普通に働くのが馬鹿らしくなってくるほどである。例えばNHKから国民を守る党の党首である立花孝志氏は、チャンネル登録者数50万人の現在において、ある月の月収が1247万2868円であったと公言している。もしもひと月が30日としても1247万÷30で、単純計算で日当が41万5600円ということになる。僅か3分足らずの動画を毎日投稿するだけでこの収益。アルバイトをすることすら馬鹿らしくなってしまう程の額である。


……話が少し脱線してしまった。さて、そんなYouTuberにもひとつだけ欠点がある。それは「絶対に有名になる必要がある」という点だ。


前述したように、YouTuberは観られなければ意味がない。よって毎日毎回動画が閲覧され、定期的に広告収入を得るには単純に『有名になる』以外にない。極端に言うならば、日本国民が100人中1人くらいは名前を挙げられるような人物にならなければ、YouTuberとして生計を立てることは不可能だった。


そう。不可能“だった”のだ。この間までは。


2017年の1月、YouTube内で“ある機能”が実装されたことにより、YouTuberの収入源確保は大きく変わってしまった。その機能こそが『スーパーチャット』……俗に言う『スパチャ』である。


このスパチャが出来ることはひとつ。いわゆる『投げ銭』だ。


そもそも『投げ銭』とは、主にストリートミュージジャンやストリートパフォーマーに対して使われる用語だ。ストリートでは自分自身がそのパフォーマンスに感銘を受けたり凄いと思ったときには、お金を与えることができる。これが『投げ銭』と呼ばれるシステムである。


もちろんこの『投げ銭』は何円でもいい。百円であろうが千円であろうが、極論を言えば1万円だっていいのだ。自分が心からその人を応援したい、感動した、もしくは頑張ってほしいと思ったのならば、自ずと『今支払える額』というのは無意識的に提示されるからだ。いわば年末年始の初詣や結婚式の御祝儀ようなもので、最低限のマナーさえ守れれば、別に何円でも文句は言われないだろう。


そんな『投げ銭』が、スパチャと名を変えてYouTubeに降臨したわけである。


結論から書いてしまうが、今のYouTube界でこの『スパチャ』という機能は大変便利な収入源として重宝されている。何時間もの生放送を逐一行い、リアルタイムで観ている人から一定の金額を頂戴するこの方法は、有名YouTuberでなくても高収入を一夜にしてゲットできる千載一遇のチャンスでもあるからだ。


何度も書いてしまって恐縮だが、その人らは決して著名な人物ではない。いわゆる一般的な、酷く言うならば『底辺YouTuber』と呼ぶべき人の方が割合として多いだろう。しかしそんな人たちの中には1日で数万円のスパチャを得ているYouTuberもザラで、一般的には名前を知られていなくとも、汗水垂らすサラリーマンよりも遥かに高い収益を、PCの前で生放送(持論)を述べるだけで得ているのである。

 

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例えば僕が個人的にフォローしていたこのYouTuberのある日の呟きを見てみると、
「1日で20万円もの投げ銭(スパチャ)を頂戴した」としている。詳細は省くが、彼はツイッターのフォロワー数7000人、チャンネル登録者数2万人、日々の動画再生数4000回前後と、決して有名なYouTuberではない。しかしながらこの日の約6時間に及ぶ『雑談垂れ流し動画』たった1本だけで、ここまでの収益を得ているのである。ちなみにこのスパチャの額はリアルタイムの金額でしかなく、もしも別日にこの動画を閲覧した人がいるならば広告収入もプラスで入ってくる計算になるため、最終的な利益は20万ではきかない。おそらくは僕らが想定する以上に、ウハウハな生活を送ることが可能なはずだ。


更に2020年1月8日に配信されたにじさんじ所属のVTuber(バーチャルユーチューバー)御伽原江良の生放送では、約1時間の放送にも関わらず、彼女の「今がスパチャの投げ時だ!投げて!」の声と共にスパチャが降りしきり(これは誇張表現では一切なく、実際に大量の札束に埋もれる様子が映し出されていた)、この日1日の生配信におけるスパチャ総額は400万円以上にのぼったという。


そんな光景を見て僕は思う。「これってどうなの?」と。


そう。この収入源が罷り通ってしまうならば、要するに『有名になれば何でも良い』という考えに他ならないと思うのだ。


例えば悪口を垂れ流すYouTuberがいたとする。動画の内容は著名なYouTuberを大々的にディスったり、今の世の中を真っ向から否定するものばかり。おそらく閲覧者の大半は、嫌悪感を覚えることだろう。


しかし人間には様々なタイプがいる。大半は「嫌だな」と感じるトークであっても、その中の数%は面白がって焚き付ける閲覧者もいるはずなのだ。2ちゃんねるのスレッドや、YouTubeのコメント欄を思い返してほしい。その中にはほぼ確実に、一般論とはかけ離れた語り口で持論を述べる人物がいるはずである。


極論を言うならば、そんな『僅か数%だけ』の人々の思想(ニーズ)に合致した瞬間、スパチャ(収入)は絶対的に入ってくる算段になるわけだ。


「スパチャを貰えれば何でも良い。悪口を書こうが商品をディスろうが、それで金が入ってくるからいいじゃん」と見切りをつけ、そういった『悪い奴ら』を焦点に当てたYouTuberは、間違いなく今後多く出現するだろう。


だがこれは、そもそものYouTuber論とは異なった考え方のはずなのだ。


一昔前のYouTuberが述べた『好きなことで生きていく』というフレーズに象徴されるように、例えば今YouTuber界で頂点に君臨しているHIKAKINやはじめしゃちょーといったYouTuberは、このポリシーに則って動画を投稿し、今の地位を築き上げているはずなのだ。


それに比べてスパチャで収益を得ているYouTuberはどうだろう。果たして自身が行っていることが本当に『自分の好きなこと』だと、はっきり言えるだろうか。人の悪口を言いふらして自己満足に浸る動画が、一定のチャンネル登録者にのみ理解できる会話ばかりを列挙する動画が、本当に『自分の好きなこと』なのだろうか。


純粋で清き閲覧者から見ると、YouTuberとは『確固たるポリシーを持った人物のみが行う収益源』であって然るべきだと思うのだ。よって「金だけ貰えれば何でも良い」という邪な感情で活動するスパチャ目的のYouTuberはズバリ、真面目に奔走するYouTuberを真っ向から否定する低俗なものである。


上記の事柄を踏まえて、僕はスパチャ機能は即刻廃止すべきだと考える。無理矢理閲覧者を増やしてきたYouTuberが出す動画に投げ銭を払う必要などない。本当にYouTuberが力を注ぎ、閲覧者のために頑張ったであろう面白い動画には、そんな機能はなくてもファンや広告収入が付随するはず。否、そうでなくてはおかしいのだ。


……しかしここまで書いてきて何だが、楽に収入源を確保する方法が確立している以上、スパチャ機能が無くなることは絶対的にないのだろうとも思う。先日新元号に変わったが、令和ではそういったスパチャが今以上に普及していくだろう。僕のこうした正義感ぶった考え方は、もう古いのかもしれない。だがこんな凝り固まった考えを抱く人も、僅かながらいるはずなのだ。


もっと言えば、そういった『楽に金が入る』といった名目でYouTuberが知られれば、今後若者はどんどんYouTubeに参入していくはずだ。近い将来『子供のなりたい職業ランキング』のトップをひた走っているのは野球選手でもプログラマーでもなく、YouTuberなのかもしれない。