キタガワのブログ

島根県在住。極力誰とも関わりませんので悪しからず。目標は音楽ライターであり、ブロガーではありません。

サカナクションのニューアルバム『834.194』の発売延期は正義なのか?

こんばんは、キタガワです。

 

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サカナクションの7枚目となるニューアルバム『834.194』。来月4月24日に発売が迫る中、先日公式サイトから急遽発売延期のアナウンスがあった。そして今この発売延期は、ネット上で物議を醸しているという。


SCHOOL OF ROCKの番組内で山口はリスナーに向け、次のようなメッセージを発した。

「一言でいうと、歌詞に妥協できず、このアルバムを完成するにはもう少しだけ時間が必要となり、延期させていただくことになりました。メンバーにもすごく怒られました。アルバムを待ってくれていた皆さまにまず、お詫びをしたいと思います」

 

「とことんやり続けてしまって、僕の体調的な面、精神的な面でも(限界を迎えてしてまっていて)、猶予をいただきました」

 

「ただ、時間が増えた分、より完成度の高いものにしていきます。もう間もなく完成するので、これ以上の延期はございません」


ここからは発売延期について、少し語らせてもらいたい。


大前提としてサカナクション(というか山口)は、ひとつの作品にかける思いがあまりにも強いことで知られている。それこそ今回のようなリリース延期は度々あった。


例に挙げると初の映画主題歌となった『新宝島』の制作や、アルバム『DocumentaLy』に収録した『エンドレス』の冒頭の歌詞のみを何ヶ月間も考えた事案であろうか。言っては悪いが、発売延期の措置はファンにとって、さほど大きな問題ではないのだ。

 


サカナクション - エンドレス(MUSIC VIDEO) -BEST ALBUM「魚図鑑」(3/28release)-


ではなぜ『834.194』の発売延期は、これほどまでに物議を醸しているのか。それは今回のリリース自体が、今までの状況とは意味合いが異なるからである。

 

異を唱える人が多い理由は、おそらくサカナクションが開催する予定のツアー『SAKANAQUARIUM 2019 “834.194” 6.1ch Sound Around Arena Session』の存在が大きい。4月~6月まで行われるこのツアーは、世間一般でいう『アルバムリリースツアー』の様相を呈している。もちろん全国ツアーは軒並みソールドアウトしており、かなりの参加者がいると予想する。


更には今回のツアーは、全会場にサラウンドシステムを導入するという画期的なもの。ライブ会場は通常、ステージの前方と後方で音の聴こえ方に大きな差が生じる。しかし今回のツアーでは、会場を囲い混むようにスピーカーを設置。要するにステージ前方とステージ後方がほぼ同じ最高の音質で聴こえるという、採算度外視の立体音響ライブだ。


そう。今回のニューアルバム延期の一報でもって、ライブのセットリストの大半を担っているであろう『834.194』の楽曲を、観客側が事前に予習することはほぼ不可能となった。


もっと言えば大迫力の爆音で楽しめる最高のライブのはずが、そのほとんどが知らない曲で埋め尽くされる事実を突き付けられた形となったのだ。そりゃ炎上するのも頷けるという話である。


さて、ここからは僕の個人的な意見を述べたいと思う。


結論を書いてしまうと、僕自身の素直な意見は「全然大丈夫です」である。アーティスト側の不祥事やレコード会社との揉め事が発端ならまだしも、「より良いものにしたい」と決めた末の延期なら平気。むしろこの程度でグチグチ文句を垂れ流している人は「本当にファンなの?」と疑ってしまうレベルであるとも思う。


それこそ昔からのファンは今回の決定には寛容で、僕と同様の意見を持つ人が多いと推測する。それはボーカル・山口一郎がいかに音楽にストイックな人間であるかを、にわかであるファン以上に知っているからだ。


ファン心理としては「時間がかかっても納得のいく作品を作り上げてほしい」と思うだろうし、今までの発売延期を鑑みれば「これほどの発売延期をしたアルバムが最高傑作でない訳がない」と、期待に胸を膨らませて待っているのではなかろうか。


しかし逆に一般的な音楽好きな人たちからすれば、今回の発売延期に「ふざけんなサカナクション!」と憤る人も多いだろうなーと思うのも事実である。アルバム購入に合わせて予定を立てている人、複数人のライブチケットを買い「俺が買うからみんなにCD-Rに焼いて渡すよ」と決めていた人……。そういった人たちのことを考えれば、一概に『発売延期は正義』と一蹴できない気もする。


だが考えてみてほしい。もしサカナクションが妥協した内容のアルバムを発売したら、世間はどう思うだろう。作品に注いだ情熱が少なければ、それは確実に聴き手に伝わる。ブランドは地に落ち、今後の期待値も低くなる。中には「サカナクションはオワコンだ」と反旗を翻す人もいるかもしれない。そんなサカナクション、見たくない。


だからこそ今回の発売延期は、間違いなく彼らにとっての正義なのだ。ミュージシャン自身が「延期したい」と言っていることが全てで、それに対してとやかく言うのはお門違い。


僕らはただ、最高のアルバムが完成されるのを待つしかない。公式ツイッターの更新に刮目しながら、ツアーで『834.194』の片鱗に触れながら、ひたすらその時を待つ。それこそが今僕らに出来る最良の応援である。