キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

ロックバンドの楽器を破壊するPV7選

こんばんは、キタガワです。


読者の方々にとって楽器とは、どのような存在だろうか。おそらく触ることすらない大半の人は、「いや、別に……」と答えると思う。


しかしミュージシャンやバンドマンにとって、楽器とは何よりも大切にするべき宝物である。値段が高いのはもちろんだが、長い間使い続けていると愛着が湧いてくるものだ。現にメンバーの楽器管理のずさんさが原因で脱退させるケースもよく聞くし、イギリスを代表するバンドであるoasisに関しては、弟が兄の楽器を破壊したことにより、解散に至っている。総じて楽器を粗末にするなんて言語道断というのが、バンドマンの総意である。

さて。事前にタイトルを見て察した人は多いだろうが、今回は『楽器を破壊するPV』に焦点を当てて紹介したいと思う。何よりも大切な楽器を、ひとつのPVのために破壊する。それには彼らなりの考えがあるのだろう。多分……。

 

 

andymori

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ロック界に水星の如く現れたバンド。つんのめりながら進むメロディと海外のエッセンスを詰め込んだ歌詞は、ファンのみならずミュージシャンにも大きな影響を与えたとされ、2014年に解散して以降も、未だに根強い人気を誇っている。


加えて、解散直前にボーカルが自殺を図り大怪我を負う、解散ライブ中に武道館ライブの宣言をするなど、話題に事欠かないバンドでもあった。現在は別バンドAL(アル)として活動している。


ここで紹介するのは、彼らの代表曲である『everything is my guitar』。ドラムの異様な手数の多さや、息継ぎを無視したスリリングな楽曲だ。


一発撮りで、かつ事前のシナリオも一切ない。若かりし頃の彼らの衝動をぶち撒けるようなPVに仕上がっている。開始10秒でドラムは崩壊。終盤にはスネアを放り投げたり所狭しと走り回るなど、やりたい放題である。果ては男同士でキス。若者よ、これがロックだ。


ちなみにこの楽曲、僕はライブで聴いたことがある。この時点で異常なスピードにも関わらず、何とライブではさらに1.5倍のスピードとなり、僅か1分少々で終わったのが印象的だった。

 


andymori "everything is my guitar"

 

パノラマパナマタウン

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オルタナティブロックの最終兵器、パノパナ。


以下の『フカンショウ』は「ほっといてくれ!」の歌詞が耳にこびりつく、ライブでは確実にセットリストに入れるほどの人気曲。


こちらもandymoriと同様、一発撮りかつ事前打ち合わせなし。パイ投げやスプレー、ケチャップを体にかける等、予想を超える過激っぷりにボーカル岩渕が少しキレているのが最高。最後にはスイッチが入ったのか、各自がぐっちゃぐちゃに暴れ回っている。これを初めて見たとき、体の内側から興奮がゾワゾワと押し寄せてくるのを感じた。


パノパナはライブもこんなイメージである。客席に乗り込んで歌ったり、思いの丈を吐き出すようなMCを行ったりと、心を震わせるパフォーマンスをいくつも見せてくれる。興味を持った方はぜひライブへ。

 


パノラマパナマタウン「フカンショウ」Music Video

 

Droog

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大分県出身の若きパンクバンド。浜崎あゆみ等が所属するavexに移籍し、その後は精力的にライブ活動を行っていた。しかし2018年に無期限活動休止を発表し、現在も休止状態が続いている。


『LOVE SONG』は初めて恋愛に焦点を当てた意欲作であり、当時はDroogにとって異色の楽曲であった。妖艶なボーカルとギャリギャリのギターが炸裂するパンクサウンドに震える。PVでドラムのスネアに穴を開けるという鬼畜の所業は、ドラマーにとっては号泣ものである。やめたげて。


個人的な話で恐縮だが、以前ライブに参加した際、客席に飛び込んできたボーカルカタヤマ氏に「お前も歌え!」と言われ、いきなりマイクを渡されて歌ったことがある(マジです)。その後はギターも客席に乗り込み、肩車しながら歌っていた。


だからこそ彼らが活動休止したとき、とても悲しかったのを覚えている。街中で流れる着色料だらけのJ-POPもいいが、たまにはこんな曲も聴きたくなるのだ。

 


Droog / LOVE SONG

 

The 抱きしめるズ

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10年以上の活動歴を誇るパンクバンドであるが、2018年をもってボーカルが脱退。現在はギターのみの担当であった篠崎がボーカルを兼任する形で活動中。


この場で紹介する『I wanna be your boyfriend』は、THE 抱きしめるズの真骨頂である恋愛について描きながらも、失恋した悲しみも表した表裏一体の楽曲。


PVの内容は言わずもがなだが、泥を塗りたくられているため、もう確実に楽器は使えない。今回取り上げたPVの中では、最も楽器を破壊するものであることは明白。協力してくれた農家さんはディレクターに「楽器持って飛び込みますんで!」と言われ、どんな顔をしたのだろうか。


前述したように絶対楽器は壊れているのだけれど、最後には自分から泥をバシャバシャかけているのを見ると、まんざらでもない様子。楽しそうで何より。

 


THE 抱きしめるズ / I wanna be your boyfriend

 

Avril Lavigne

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あの世界的なシンガーソングライターであるアヴリル・ラヴィーンにも、楽器を破壊するPVがある。しかもファーストアルバムの曲。


タイトルは『Sk8er Boi』。日本版の読みは『スケーター・ボーイ』で間違いないそうだが、いかんせん謎の8の存在が邪魔。韓国や中国では、表記が極めて面倒くさい楽曲だという。


PV内でやっていることは、ただのテロリストかクーデターのそれである。このPVだけでどれほどの金が消し飛んだのか想像してしまうほど、スケールが段違い。ヘリ飛んでるし。


このアッパーかつロックな楽曲は未だにAvril Lavigneの一番人気の楽曲であるらしく、年齢を重ねた今でもセットリストに必ず入れているほど。いつかライブで聴いてみたいものである。

 


Avril Lavigne - Sk8er Boi (Official Music Video)

 

amazarashi

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アニメーションが多いamazarashiのPVだが、その中でも数少ない実写のPVとなっているのが、『つじつま合わせに生まれた僕等』だ。


この楽曲は歌詞中にもある通り、雨をテーマに進行する。加えてamazarashiというバンド名の由来となった『雨曝しの辛い日々』にスポットを当てた結果、PVでは大雨降りしきる、メッセージ性の強いものとなっている。


なぜこのPVを今回の括りに入れたかと言うと、楽器は水分を多量に与えると壊れるからである。サビ部分の雨が顕著だが、あれほどの雨をぶつけたらギターは明らかに錆びるか、音が歪む状態となるだろう。


本人も「過酷な撮影だった」と語っている通り、演者にもギターにも大きなダメージを与えたに違いない。ちなみに水浸しになった本は絶対にもう読めない。

 


amazarashi 誦読『つじつま合わせに生まれた僕等 (2017)』 Music Video

 

ASIAN KUNG-FU GENERATION

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こちらはアジカンの楽曲の中でも最も古いとされている『遥か彼方』から。


amazarashiと同様にスプリンクラーを使い、全方位に雨を降らす方式なのだが、このPVの問題点は楽器が複数あること。


ギター1本ならいざ知らず、ドラムもベースも水浸し。そしてよく見るとギターアンプといった機材も鎮座している。これではえげつない水の量でもって、確実に壊れてしまうだろう。


被害額はamazarashi以上。「当時はとにかく尖っていた」と語る後藤(Vo.Gt)だが、まさかPVまで尖らせるとは思うまい。撮影当時の楽器の価格は今以上だったはずなので、撮影準備はてんやわんやだったのではなかろうか。

 


ASIAN KUNG-FU GENERATION 『遥か彼方』

 

 

さて、いかがだっただろうか。


今までも『エロいアーティスト写真』『女性パンクバンド』など、音楽の別の側面を見せつける記事を執筆してきたが、今回の選考は一番難航した。


というのも、『壊れる』という概念をどこに置くかが定まっていなかったためだ。ギターを放り投げたら『壊れた』なのか、地面にグシャっと置いたら『壊れる』なのか……。この時点で15個ほどのPVがあったのだが、「こりゃ間違いなく壊れる」というものを集めた結果、今回の7つになった。しかし逆に言えばそういったPV自体が少ないということでもある。結果的にはたった7つしか見付けられなかったのが心残り。


今回の記事で気になったアーティストがいたら、ぜひ動画を観てほしい。そして良ければCDを買うかレンタルしてほしい。


それでは。