キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

チケットの不正転売禁止法が可決。今後のライブ市場はどうなる?

こんばんは、キタガワです。

 

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2018年12月8日、『不正転売規制法』なる法律が会議で可決された。違反者には1年以下の懲役、または100万円以下の罰金刑だ。ちなみに施行は2019年6月から。


ある種野放しになっていたダフ屋や転売ヤーに対し、今後は厳しい措置が取られることとなる。


さて、今回の記事で取り上げることは、主に3つ。『今までと何が変わるのか』という重要部分と、『この法律の問題点』。そして『これからの市場はどうなるのか』という予想である。


なお書き進めるにあたっては、日頃音楽についての文章を書いている特性上、ライブのチケットに焦点を当てながら行っていこうと思う。


それではどうぞ。

 

 

変わること①……転売ヤーを取り締まれる

この法律の最も重要な点はこれだ。転売ヤーとはざっくり説明するならば『チケットを高額で売りつける人』を指す。下のいかにも『ヤベえことやってます』という雰囲気の人がそれだ。

 

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特にアイドルのライブなどで散見されるのだが、倍率が高いライブにおいては、チケットが一瞬にしてソールドアウトしてしまうことがある。転売ヤーはそれを予測し、事前に不特定多数の人間を使って『買い占め』を行う。


何十人もの転売ヤーが一斉に買い占めるため、必然的に転売ヤーの手元には多数のチケットが渡ることになり、逆に本来のファンは、チケットが手に入らない人で溢れ返ってしまう。


もちろんファンはライブに行きたい。しかしそれにはチケットが必要だ。諦めきれないファンは思う。「どんな手段を使ってもチケットを取りたい」と。たとえどれだけ高くても。


……そんなファンの思いを悪用するのがダフ屋。ダフ屋は、その大量に入手したチケットを2倍、3倍、10倍まで値段を吊り上げて販売する。僕は以前、嵐のチケットが50万円で売られているのを見たことがある。


「そんな高いものが売れるの?」とお思いのあなた。答えはひとつ。売れるのだ。結果的にダフ屋は儲かり、ファンはライブに行けることになる。


いわばWin-Winの関係。だからこそダフ屋は無くならない。元手はたかだかチケット数枚分で、しかもそれが何十万、何百万になって戻ってくるのだから。こんな楽な商売はない。試しに『ジャニーズ チケット』でググってみたらいい。ありえない値段のチケットが大量に出品されているはずだ。


……さて、前置きが長くなってしまった。今回の法律ではそんな転売ヤー共を、まとめて取り締まることができるのだ。


今までは黙認されてきたが、法律が可決された今、今までのように簡単にはいくまい。高値で売っていることがバレた瞬間に逮捕されるのだから、そりゃ慎重にもなる。今後転売ヤーは確実に減少するだろう。


ちなみに上記ではネット上での転売についてのみ述べたが、今後はライブ会場での転売も禁止となる。ライブ会場周辺で「チケット売りまーす!」と叫んでいる人がたまにいるが、そんな人たちも次からはお縄。気を付けてほしい。

 

変わること②……転売ヤーから買うのも禁止

これはデカい。もちろん高値で売る方が100%悪いが、購入した一般人でも逮捕されるのである。怖い。


こうなると転売ヤーは消滅するしかないので、いいやり方だと思う。日本でこれほど強引な内容が可決されたのは驚いたが。


とにかく、これで高額転売は間違いなく減ることだろう。次はこの法律の問題点を挙げていきたい。

 

問題点①……転売の線引きが確立されていない

『転売ヤー撲滅』というのは分かる。だが、どこまでが転売なのだろうか。組織が絡んでいたら転売なのか、ホームページ上で販売したら転売なのか。


一番怖いのは『個人間での転売』も法律違反の可能性がある点。


今では当たり前のように行われている、ツイッターでのチケット譲渡のやり取り。皆さんも一度は見たことがあると思う。「F外から失礼します!チケットまだありますか?」「はい!詳しくはDMで!」みたいなやつ。


もしかしてあれも取り締まるのか?


そうなると、一般人が犯罪者になる確率は格段に上がる。ツイッターアカウントから連絡先を調べられ、突如警察から電話がきた、なんてことにもなりかねない。


『○○は犯罪で○○はセーフ』と明記されていない以上、現段階では『警察が「こいつダフ屋だ!」と思ったら犯罪』なのだ。

 

問題点②……グレーゾーンの事案

上記で述べたように現段階の転売の定義は酷く曖昧で、黒か白かグレーかという区別が付きにくいものである。


ひとつ例を出そう。


友人が「このチケット、行けなくなったから買ってよ」と言ってきたとする。そこであなたは「わかった。でもお前に悪いから、少し上乗せして買うよ」となった場合。


これは転売なのだろうか。


『正規の価格を超えて購入する』ことが転売なのだとしたら、これも転売と言えるのではないか?最悪、ふたりとも逮捕されるのでは?


もしも譲り受けた側が交番に駆け込み、「高く買えって言われたんです」と嘘の証言をしたらどうなる?譲り渡した側は即逮捕なのか?


……といったことが何一つ明言されていない以上、いわばザル状態。おそらくだが『グレーゾーン』の譲渡が繰り返され、結局は根本的解決にならないような気もするのだ。


長々と書いてしまった。次は今後のライブの予想について。

 

予想①……本人確認がめんどくさくなる

これは間違いないだろう。今でも『チケット+本人確認書類=OK』となっているライブが多いのだが、これが当たり前になると予想する。


最近の宇多田ヒカルのライブでは『会員サイトで会員登録したあと、自分の顔写真をアップロードする』という、かなり異常な本人確認が話題になったが、それも当たり前になるかもしれない。


チケット1枚だけでは入場不可になる時代も、すぐそこまで来ている。

 

予想②……紙チケット→スマチケに

サカナクションやマキシマムザホルモンなどが導入している方法で、紙のチケットは撤廃し、専用アプリを介して入場するやり方。

 

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チケット代金を払うと紙チケットが渡されるというのが従来の手続きだが、このやり方は代金を払った後、公演1週間前くらいにメールで通知が届く。そしてアプリを開き、チケットをダウンロード。当日はその画面を係員に見せて入場する、というもの。


チケットのダウンロードには会員登録が必要だし、スマホにチケットが来るため転売もない。これもほぼ間違いなく、ポピュラーなものになると予想。

 

予想③……リセールの導入

ここまで読んで「じゃあライブ行けなくなったらどうすんだよ」と思った方もいると思う。そんなあなたにリセールだ。


これは行けなくなったチケットを、他の人に譲り渡すシステム。もちろんチケット代金は戻ってくる。重要なのは、『アーティストサイドを介して行われる』という点。


公式サイトや会員サイトでリセールが行われるため、公平にチケットが渡るし、値段が上がることもない。そしてダフ屋が介入する隙もない。


ちなみにこれも現在では当たり前になりつつあるシステムである。

 

終わりに

さて、いかがだっただろうか。


僕個人の意見だが、今回可決された法律『高額転売規制法』は根本的解決にはなっていないと思う。


この法律が広まることで『転売は悪』という認識が与えられるのは良いことだ。しかしそれでも転売する人はいるし、買う人もいる。


何年間も映画泥棒が必死に「映画のアップロードやダウンロードは犯罪!」と言っているにも関わらず、YouTubeへの無断転載やPCへのダウンロードが減らないのは、そういうことだ。おそらくダフ屋は無くならないし、法律で全て取り締まることも不可能である。


でもとりあえず、この法律の可決には感謝したい。そして法律が一過性のものではなく、日本中にじんわりと広まっていくことを、僕は願うぱかりだ。そして2019年の6月には、全国民に頭の片隅にでも『転売=悪』という考えが染み付いていれば、それで万々歳かと。


長くなってしまったが、この辺で終わりたいと思う。


一息に書いてしまったので、分かりづらい表現が多く含まれていると思うが、その点に関しては寛大な心でお許し願いたい。

 

それでは。

 

 

 

 

 

 

 


あの……。

 

 

それはそうとして……。

 

 

菅田将暉のチケットが欲しいんですけど、誰か譲ってくれませんかね……?