キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

キングオブコント2018の感想を書き殴りたい

こんばんは、キタガワです。

 

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[はじめに]


キングオブコント終わりましたね。今回は例年に比べて特にレベルが高かった。同時に、お笑い番組が減ってネタをする機会が極端に少なくなっている中、長尺のしっかりしたコントが観れる良い番組だったと思う。


今回のキングオブコントは、大きな変革がふたつあった。ひとつは『ネタ時間が4分から5分に延びた』こと。


M-1でもR-1でもそうだが、『ネタ時間が短い』ということは以前から言われ続けていた部分である。漫才のライブや単独ライブでは、10分を超えるネタは当たり前。4分の時間設定は普段そのようなコントをやっている人たちにとって、馴染みがないという部分で不利になりがちだった。


今までは一瞬で観客を引き込む『短期決戦』の様相を呈していたと思う(にゃんこスターがいい例です)。しかし今回はネタ時間そのものが延びたことで、前半にしっかりと伏線を張ったり、少しずつ自分たちのペースに持っていくことが可能となった。その代わりにファイナル進出枠も5組から3組に減ってしまったが、いいルール改正だと感じた。


そしてふたつ目の変革は、『決勝進出者シークレット』という点。はっきり言ってこれはクソです。本当に。各芸人のネタ感想に移る前に、ちょっとこれに関しては最初にボロクソに批判させてほしい。


問題なのは『完全シークレット』と発表したにも関わらず全然シークレットではなかった部分。まずはこれを見てほしい。

 

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この画像はとある番組の途中で流された、キングオブコントのCMの一部分だ。一見誰が誰だか分からないように感じるが、実はよーく見ると分かる。体型、キャラクター性、メガネの有無、コンビがトリオか……。目の肥えたお笑いファンなら、何組かは分かるはずなのだ。

 

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準決勝に進んだのはこの32組。ここからシルエットの情報を読み取っていくと…。

 

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決勝予想はこうなるわけだ。で、見事その通りになったのである。


なんだこの茶番。もう怒り心頭ですわ。事前に出場者が分かっていれば、もっと一喜一憂出来たはずである。決勝進出者のSNSをフォローしたり、事前にネタを観てみたり……。


おそらく今回のシークレット、いろんな意味合いがあると思う。まず審査員の色眼鏡をなくすため。審査中、三村がかつて言っていた。「見たことあるコントだから」と。要は「ああ、こいつこんなネタやるんだ」と一度でも理解してしまうと、2回目以降は新鮮な見方が出来なくなる。それを避けようというのだ。まあそれはわかる。


だが一番は、番組自体の知名度を上げる策略なのだ。どうも『決勝前特別番組』と称して昼頃から延々何時間にも渡って決勝進出者予想をしていたらしいし、Twitterでは『決勝に進むコンビを予想したら◯◯プレゼント!』みたいな企画をしてトレンドに食い込もうとしていた。数字を稼ぐのに必死か。


頼むから、やるならちゃんとやってくれ。次回は継続するのは分からないが、そこはしっかりしてくれ。はい、この話題終わり。


さて、ここからはネタの感想に移りたいと思う。やたらと長いので、コーヒーブレイクの片手間に見る感じで適当に読んでください。

 


やさしいズ

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爆弾を仕掛けた男と鈍感なチャラ男清掃員のコント。着眼点は面白かったのだが、結果的に最下位になってしまった。


このコント、清掃員の的を外したボケで笑わせる設計になっているのだが、その後の爆弾魔のツッコミが絶叫系なので笑いがピタリと止まる感覚があった。あとは少し清掃員の声が聞き取りづらかったかなとも。現代語バリバリの口調なので、一度でも「ん?今何言った?」と疑問に思ってしまうと、一気に冷めてしまう。


後は1番手であったことも原因だと考える。そもそもキングオブコントやM-1といったサーキット戦では、会場が温まっていない1番手は総じて不利である。しかも今回は『事前に誰が出るか知らされていない』、『番組開始からネタまでの所要時間が短い』といった点から、観客と審査員共に『今からネタを観る状態』になりきれていなかった印象を受けた。


審査員である三村マサカズも言っていた通り「会場が暖まってきた5番手くらいで見たかった」というのが本音か。

 

マヂカルラブリー

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やり尽くされたループものだが、『傘泥棒』という設定は秀逸。「(ループするとこ)こんなとこじゃなくない!?」のセリフでの大爆発は素晴らしかった。


おじさんがループを自覚し始めたときは大笑いしてしまった。コンパクトにまとめていて、かつ起承転結がはっきりしていたので、まるでひとつの舞台のようだった。


今回の年のキングオブコントでなければ上位3組に残れたであろうコントであったが、審査員の平均的の高さからもわかる通り、今年は例年以上にレベルが高かった。他の実力者に埋もれる形で散っていった。残念。


ともかく漫才だけではないことをはっきり明示したコントだった。これにはさすがの上沼恵美子もニンマリだろう。

 

ハナコ

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犬と人間のコント。まず犬役の人が似合いすぎ。似合う人が犬役をするというただそれだけを核としてコントが進行していくのだが、分かりやすい設定が受け、見事上位3組に名を連ねた。


ドッグフードを食べた際の『何か分かんないけど食べちゃう』は犬役の人が似合いすぎていることもあり、頭にスッと入ってきて素直に笑えた。


ハナコがここまで受けた理由を考えてみると、『どのコンビよりも早く場の空気を掴んだ』ことが大きいと思う。例えばやさしいズの今回のコントなどは単独講演だと受けるだろうが、所見の人は独特の間や雰囲気に着いていきづらいところがある。それと比べると、ハナコは一気に場をハナコ色に染めることが出来た。この点が勝敗を分けたのでは。

 

さらば青春の光

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今年でなんと6回目の決勝進出。しかし今年はラストイヤーと決めていたという。


鼓舞する人のコント。散々やる気を底上げしておいてからの「先生、あとはお願いします」で掴みはバッチリ。そこからはさらば青春の光おなじみの、森田をイジる形で進行していく。


連発されたピラミッドのくだりも3回目にはスフィンクスを取り入れたり、教室に入るまでにもうひとイジりかますなど、本来ならば何度もやって飽きられそうな部分さえも笑いに昇華していた。


何といっても今年がラストイヤー。ぜひとも2本目が観たかったのだが、ハナコと僅か1点差で上位に入れず、敗退となった。ラストイヤーと明言していたが、ここまで完成度の高いコントを量産し、毎年決勝に駒を進めていた実力者を失うのは惜しい。願わくば来年度も参加してもらいたいところ。無理かな……。

 

だーりんず

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居酒屋で奢りたい先輩のコント。前回のキングオブコントでは結果が振るわなかったので心配していたが、蓋を開けてみれば良質なコントだった。安心した。


爆笑までは行かなくとも、じわじわと自分たちのペースに持っていくタイプ。審査員の中ではさまぁ~ずのふたりがずば抜けて高い点数を付けていたにも関わらず、松本は最低点であったことから、好き嫌いがはっきり分かれるコントであったのは間違いない。


個人的には前半までは面白かったのだが、奢られること前提で店員が舟盛りを頼ませたり、他の席の支払いをさせたりする場面を見て、若干嫌悪感を抱いてしまった。「ああ、俺の嫌いなタイプだわこの人」と一瞬でも思ってしまったために、その後はあまり笑えなかった。人それぞれだとは思うが。

 

チョコレートプラネット

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犯人と人質のコント。見た瞬間「SAWかよ!」と思ってしまった。


チョコプラのコントは長田が自作する小道具が肝になっていることが多いが、今回も同様。しかも今回は映像+加工ボイスという、普段よりも手間のかかったコントに仕上がった。当たり前だがIKKOさんは出てこなかった。


例年キングオブコントではロッチの試着室のコントやにゃんこスターの縄跳びのコント、かまいたちの人質のコントに代表されるように、いわば『分かりきった流れをあえて連発する』という方法が点を稼ぎやすい風潮がある。今回もそれに則った形であろう。


説明をする→大声で叫ぶ流れは面白い。だがこのコントにはふたつほどデメリットがある。ひとつは『流れが単調なこと』。ひとつは『だんだんうるさく感じるようになること』である。チョコプラは、このふたつのデメリットを気付かせないようにかなり努力していたように見えた。


単調な部分は「群馬!」、「鈴木!」で笑いに変え、うるさく感じ始めたころに画面から出て、実際に顔を出していたのだ。うまいやり方だと思ったし、それが結実した結果があの最高得点なのだろう。

 

GAG

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居酒屋でのコント。GAG少年楽団から改名し、GAGになった。彼らもだーりんずと同じく、かつて決勝で苦渋を舐めたトリオである。


……が、今回はとても良かった。全員個性が強いキャラクターだが、特に昭和風の大袈裟な動きのツッコミが、ピンポイントで人間の笑いの根元にヒットする感覚があった。


点数的にはまあまあな付け方をせざるを得ないだろうが、後引く面白さというか。番組が終わっても彼らのコントが頭の中でグルグル回っていた。


誰も傷付けないハートウォーミングなコントだった。GAGのコント中は、単独講演のような様相だったように思う。雰囲気的にほんわかしてた。

 

わらふぢなるお

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コンビニのコント。妙な言い回しをする新人と、それに苛つく先輩との対比が映える。新人の『空質問』がハマるかどうかで爆発力が大きく変わってくるコントなのだが、笑いがうまく浸透していたように思う。


コントを通しての流れは分かりやすいのだが、「先輩の背中ですか?」や「伊達公子ですか?」→「クルムですか?」など、少し外した形のボケを随所に取り入れており飽きさせない。常に安定した笑いを得ている印象だった。


持ち時間5分に大量のボケとツッコミを入れた今回のコント。尻切れトンボになるかと思いきや、途中で接客の実演を入れることで、最初から最後まで突っ走っていった。この卓越したコント設計が、2位という結果に繋がったのではないだろうか。

 

ロビンフット

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結婚したい息子とそれを反対する父親のコント。R-1決勝の常連であるおぐを有したコンビ。彼の一風変わったネタが好きだったので個人的に期待していたのだが、いやはや、想像を遥かに超えてきた。


相手女性の年齢がどんどん上がっていくのが今回のコントの肝になるのだが、ボケとツッコミのテンポが抜群に良い。数字が多く出てくるため、本来であれば分かりにくかったり頭の中で一瞬計算してしまったりしてテンポが崩されるものだが、彼らはテンポ良く進行することで『笑い』に焦点を当て続けていた。


通常有り得ない「良くわからんかったけど面白かった」という図式が成り立ってしまうのは、彼らの実力だろうと思う。個人的には今大会で最もスッキリ終わったネタだとも感じた。あのズバッと終わるやり方いいなあ。

 

ザ・ギース

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製造行程が観られる超能力を持つ探偵のコント。


お笑いの大会は、毎回一組はトリッキーな構成をするチームが現れるのが恒例となっている。THE MANZAIでのアルコ&ピースのヌリカベのネタや、M-1でのジャルジャルのピンポンネタなどがそれに当たる。


ザ・ギースは、根本からトリッキーなネタ構成に定評のあるコンビである。過去決勝では『卒業証書とアメフト』、『ビフォーアフター』といったあまりにも他とは異質なネタで勝負していた。そしてそのどれもが、しっかりとしたオチを持ってくる。


今回のネタも同様に、製造行程を楽しむくだりと犯人が刑事というオチがうまくマッチしていて面白かった。だが本当に今大会はレベルが高かった。大きなふるいにかけられて落ちてしまった印象。残念。

 

[ファイナルステージ]

ファイナルステージ進出は、点数が高い順にチョコレートプラネット、わらふぢなるお、ハナコ。


『ロッチみたいになるな』というようなことを松本が言っていたが、結果的にはその通りになった。まさかの3位通過だったハナコが優勝を勝ち取ったのである。


これにはかなり驚いたが、ネタの選択が悪かった。チョコプラは長田の作品披露会みたいになっていたし、わらふぢは超能力に時間を使いすぎてテンポがハチャメチャだった。この結果は妥当だろうと思う。


そしてハナコ、ずば抜けて面白かった。


シュールなコントではあったが、最初から最後まで貫き通した。何も考えずに笑える面白さ。やっぱりお笑いの本質ってこういうことだよな、と思った。ハナコは大会初出場で、チョコプラやわらふぢと違って『何をやるか全くわからない』ダークホース的な立ち位置にいたことも、良いように作用したのではないだろうか。


文句なし。だがただひとつ、ハナコと1点差で決勝に行けなかったさらば青春の光の存在を考えると胸が痛む。もし彼らが決勝に行っていればどうなったのだろうと。引退を明言していたし、もうキングオブコントで彼らの姿を見ることはないだろう。惜しい。本当に惜しい。


ともあれ、ハナコおめでとう!今年も最高の番組をありがとうございました。

 

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