こんばんは、キタガワです。
先日とある本を購入した。それが『芸人貧乏物語』というもの。
出版は講談社。著者は元タレントの松野大介氏。内容はタイトルに偽りなしで、総勢42組の芸人がブレイクまでの下積み時代を語るものである。
アルバイト、家賃滞納、借金……。『人気芸人』に憧れ上京するも芽が出ない。それでもと必死にもがく人間の苦労話を、度重なるインタビューでもって読者に伝える書籍だ。
そして、今回『感想』ではなく『批評』と書いたのには理由がある。それは僕が読了後に何かを得られたのかというと『No』であるからだ。
元々、僕がこの本を買った目的としては『芸人はどんな下積みをしていたのか知りたい』という部分が大きい。
僕が思う苦労人の代表格が『お笑い芸人』という職業であった。M-1グランプリやエンタの神様で陽の目を見た芸人も、多くのアルバイト経験をしていたイメージがある。下手すれば40歳くらいまでアルバイト生活、というのもザラだ。
ギリギリの生活の中、一握りのブレイクを目指して奔走する芸人たち。そしてこの記事を書いている僕自身もアルバイトに明け暮れ、夢を追っている。いわば似通った部分があるのではないかと思ったのだ。
Wikipediaでは分からない、テレビで見るだけでは分からない芸人の裏の苦労を知り、僕自身と照らし合わせて、成功への足掛かりとしようというのが、僕がこの本を購入した目的だった。
で、結果、僕には合わなかった。書かれているのは徹頭徹尾『笑い話』の域を出ない内容であり、アルバイトなどの下積みの苦労話は少なかったからだ。
例えば流れ星のインタビューでは、パチンコ店に入り浸ったり、相方を放り出してキャンパスライフをエンジョイしたといったちゅうえいのクズ話に多くの文字数が割かれており、苦労話というよりは『ただのインタビュー』となっている。中には『芸人時代の』貧乏話でなく『幼少期の』貧乏話を延々語る場面すらある。
バラエティ番組や情報誌で語られるような薄いエピソードばかりで、インタビューも和気あいあい。(笑い)という表記もそこかしこに見られる。さぞ楽しい現場だったのだろうと推測する。
僕としてはテレビでは尺が足りなくて話せないような、涙が滲んでくるような、そんなディープな下積みの話を期待していたのだ。まるで芸人同士のラジオを聞いているような感覚に、僕は目の眩む思いがした。
で、そんな話が42組分もあるわけだ。一応全部読んだが、忍耐力との勝負だった。期待値が高すぎたのかもしれない。
……正直、42組は多すぎた気がする。一組一組のテキスト数も少ないし、聞けば一組あたりのインタビュー時間はわずか40分だったという。半分くらいの芸人数であれば、もっと話を掘り下げることもできたはずだし、実のある話も引き出せたのではと思う。
だがこの本、全くつまらないわけではない。共感を得られるポイントはあるし、人生の教訓とすべき事柄も含まれている。正直僕には合わなかったというだけの話。
読むべき人、それは『芸人マニア』である。日夜劇場に足を運び、『お笑い芸人』のジャンルの動画を動画サイトで漁っているような、コアなファン。そんな人たちには、この本は刺さる。
逆に僕のように本気で人の生き様を知りたい類いの人間には、向いていない。
非常に惜しい本だった。エンターテイメントとして見れば面白いので、今後は深夜の読書タイムの相棒とすることにする。
それでは。