キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

ただのいちにち。(4月某日)

「夜は適当にお願いねー!」母はそう言って出ていった。…母は今から何しに行くんだっけ。覚えていない。

僕は最近買った『ゴッドオブウォー』をぼんやりとやりながら、合間にスマホを弄る。……気付けばそんな無為な時間を過ごして3時間以上も経っていたようで、時計の針は15時を刺していた。

「飯でも買いに行くか……」

おもむろにパジャマを着替える。一度全裸になり、昨日脱ぎ散らかしてそのままだった服を手に取った。全裸に長袖のTシャツとジーンズを羽織っただけの形。コーディネートもクソもない。ポケットには2つ折りにした千円札をねじ込んだ。

別に知り合いに会うわけでもなし、見てくれに気を遣うだけ無駄というものだ。顔も洗わず、髭も剃らない適当な格好で外に出る。スマホは家に置いてきた。

僕の曇天な心情とは裏腹に、外は大晴れだった。絶好の運動日和のようで、子供たちがワイワイやっている。そんな声すら煩わしくて、僕は音楽のボリュームを上げた。

しばらく歩くと、コンビニが見えてきた。まるで僕を誘うかのようなそれに、素直に従う。

雑誌を立ち読みし、店内を回る。だが、目ぼしいものは見付からなかった。そしてふと、少し離れた場所にスーパーがあった事を思い出した。もうここには用はないのだが、何も買わずに出るのも癪に触るので、缶ビールを1本買った。

しばらく歩き、近くの公園に腰を下ろす。公園と呼ぶには陳腐な作りで、遊具も人通りもほとんどないそこで、取り敢えず買った缶ビールを開けて流し込んだ。

何の気なしにポケットを探ると、昨日偶然会った学生時代の同級生に貰ったままの煙草があった。「ウチ、今から浮気してくっから!じゃね!」……。そう言って去った彼女は、あの後どうなったのだろう。夫と子供に知れたら離婚ものだろうが……。

煙草をふかしながら回想する。まあ、僕には関係のない事なのだけど。

缶ビールが空になった頃には、不思議とスーパーに行く気分ではなくなっていた。ノープランでぶらぶらしようか。僕は缶ビールをゴミ箱にシュートし、進路を変更して歩いた。

「イラッチャマセー!」

20分後、僕は定食屋にいた。その定食屋は中国人御用達の店らしく、店内は中国語が飛び交っていた。

何も決めていなかったので、取り敢えず目についた定食を頼む。なんちゃら肉定食。……名前は覚えていないが。

いつもの癖でポケットに手をやると、スマホを持ってきていない事に気付く。仕方ないので、店内に置いてあった『名探偵コナン』を読んで時間を潰す。甲冑を着たお爺さんが殺人を犯す回だ。この頃のコナンは特に怖かったなと思いながら、定食を待つ。

定食を速攻で食べ終わり店を出る。目の前には別のスーパー。取り敢えず入店する。

手持ちは残り300円。ビールとじゃがりこを買おうとするも、どう足掻いても所持金をオーバーする計算だ。ビールを発泡酒に変更し、何とか突破することに成功する。

店を出るや否や発泡酒を開ける。最高の帰り道。鬱々しかった気持ちも、今や晴れやかだ。

帰宅すると、2階に上がる。半分ほど残っている発泡酒を飲みながら、ゴッドオブウォーの続きをやる。……嗚呼、明日はバイトか。いきたくねえなあ。

ふとゲーム画面を見ると、クレイトスが息子に激怒しているシーンだった。「どんな時でも気を緩めるな」と彼は言った。

僕は「ほんとそうだぞ」と思った。