いよいよ最後。トップ5の発表です!
それではどうぞ!
5位
Pacific Daydream/Weezer
ブラックアルバムはいずこ……?
アメリカの4人組バンド、ウィーザーのアルバムも、これで通算11枚目。重鎮レベルの佇まいだ。
話は変わるが、ボーカルのリヴァースには、渾身の一作が出来たとき、あるいは日常生活で何らかの変化があったとき、アルバムタイトルを総じて「Weezer」にする悪いクセがある。
それらはアルバムの色に例えて『グリーンアルバム』や『ブルーアルバム』などと呼ばれるわけだが、今回のアルバムも、実はギリギリまで『Weezer』……つまり『ブラックアルバム』となる予定だったらしい。なんでだよ。
で、結局タイトルを変えたので、来年の上旬に改めて『ブラックアルバム』を出すらしい。なんでだよ。
閑話休題。
個人的には前作の『ホワイトアルバム』の出来が恐ろしく良かったため、「これはハードル上がるべ」と思っていたのだが、さすがウィーザー。完全に越えてきた。
今回のアルバムは、全体的にゆったりとしたペースで進んでいく。『グリーンアルバム』などの疾走感を期待して聴くと、拍子抜けするかもしれない。
だがその分、スルメ曲の宝庫となっている。
リード曲はYouTubeで確認する限り、『Mexican Fender』ということになるのだろうか。
〈彼女はちょうど1万歩目くらいで ボーイフレンドと出掛けてた(和訳)〉
〈ああ 彼女は俺を愛してる 彼女は俺を愛してる 彼女は俺を愛していない(和訳)〉
ピュアなチェリーボーイの空想がつらつらと並べられる。『泣き虫ロック』とも称されたソングライティングは、未だ健在だ。
特別なことは何もしていない。普段通りのウィーザー。1992年の頃からの抜群なメロディーセンスが、随所にちりばめられている。
正直、ウィーザーに関しては何枚もアルバムを買ってきたが、飽きがきている部分が多少あった。
そりゃそうだ。11枚目。ついに11枚目なのだ。1枚10曲としても、ざっと110曲もある計算になる。
もちろん似たような楽曲もあったわけで、『レッドアルバム』あたりからは、熱烈なファンからも「いい。いいけど、もうちょっと何かがほしい……」という意見も聞かれた。
で、このアルバムである。上がりに上がったハードルを軽々と飛び越えてくれる杞憂なバンドだ。
車のBGMにするも良し。夜、布団で目を瞑りながら聴くも良し。最高の一枚。
4位
コレカラー/コレサワ
これまでのコレサワと、これからのコレサワ。
大阪府出身、イメージキャラクターであるれ子ちゃん(髪に乗っかってるやつ)以外、正体が謎に包まれているコレサワ、遂にメジャーへ。
CDジャケットには、インディーズからメジャーという明るい未来へ、思い出を全部背負って意気揚々と向かうコレサワが描かれている。タイトルは『コレカラー』。
良い意味で何も変わっていない。当たり前のように引き続き恋愛ソングを書き、ポップを貫いてメジャーに行くのだろう。
誰もが口ずさめるメロディーと、核心を抉る歌詞は健在。特に歌詞は、いつも以上に過激で、オブラートに包む気配さえない。
〈付き合う前にキスもアレも 君の夢もちゃんと教えてね 好きなものが一緒よりは 嫌いなものが一緒の方がいいな("あたしを彼女にしたいなら")〉
〈女子にだけやってくる 特別な憂鬱にだって負けないんだから("女子諸君")〉
〈「全ての元カレに捧げます。聴いてください。シンガーソングライター!」("SSW")〉
酸いも甘いも全力で歌にするコレサワ。上記以外にも、妹への信頼と感謝を歌った『お姉ちゃんにだけ部屋があったことまだ恨んでるのかな』、メジャー後の進む道を明確に示した『これから』など、心にグッとくる歌詞のオンパレード。これらを時に明るく、時にじっくりと聴かせる手法は、さすがと言うしかない。
ツアーは全箇所ソールドアウト。ゆるキャラを集めて、謎の新バンドも結成したコレサワ。メジャーという舞台でどんな景色を見せてくれるのか、期待が高まる。
3位
全知全能/ポルカドットスティングレイ
ルール無用の大型新人、どこまでも飛べ!
『テレキャスター・ストライプ』で音楽通の度肝を抜き、一気に若手最有力候補に躍り出たポルカの初フルアルバム。
全知全能というアルバムタイトルからも分かる通り、ポップ、パンク、カントリーなど、幅広いジャンルを網羅した作品に仕上がっている。
ジャケットには、『レム』のPVと同様、ドライヤー……もとい光線銃を携えた雫(Vo.Gt)が描かれている(なお、裏面には本人が登場している)。
発売してすぐにアップルミュージック内において、言わずと知れた怪物エド・シーランを破って1位を獲得したことも、記憶に新しい。
ゲームクリエイターとしての顔も持つボーカルの雫嬢に関しては、LOVE PSYCHEDELICOよろしく英詞を多様したり、ラップをしたりと、曲ごとにその色を変えていく。歌い方に関しても巻き舌だったり気だるげだったりと、やりたい放題。
中でも秀逸なのは、現在ライブの定番曲となりつつある『顔も覚えてない』。
『私だって覚えてないこともある 正直すごい気まずい』としながら、『お前もお前でなんか言え 怖いから』と壮絶なディスを撒き散らす。
そして曲の途中で挟まれるのは、まさかのコント。クスリと笑える出来になっているので、肝心の内容は、ぜひ実際に聴いてみてほしい。
とあるインタビューにて、雫は「ジャンルに縛られる気はさらさらない」と語っていた。というより、雫自身がポップス、ロックなどのジャンル分けを極端に嫌っている印象を受けた。
全国ツアーのチケットは数秒で全箇所ソールドアウトと、勢いが止まらないポルカ。全ての楽曲で違う表情を見せる、ビックリ箱のような最高のアルバムをありがとう。これからも多くの引き出しでリスナーを翻弄し続けてもらいたい。
ポルカドットスティングレイ「テレキャスター・ストライプ」MV
2位
Kids In Love/Kygo
ゆったり聴かせるEDMがあってもいいじゃない。カイゴだもの。
今、EDMシーンがアツい。
ゼッドやアヴィーチー、カルヴィン・ハリスをリーダー格として、邦洋問わず、EDMを取り入れる音楽が次第に増えてきたように思う。
EDM全般、いや、それ以前に『暴れられる音楽』は、もはや音楽の必修科目といっても過言ではない。BPM(速さ)を上げ、機械音をギャンギャン鳴らし、音を重ねていけば、誰もがヘドバンするヒットソングの出来上がりだ。簡単な調理法で誰もが満足。最高の店で大繁盛間違いなし!
……という現状に待ったをかけたのがこの男、カイゴである。
というか、実はカイゴ自身がEDMの火付け役でもあるのだが、彼の存在は常にシーンで浮いていた。前作『Cloud Nine』は予想を遥かに超える売り上げを記録し、リード曲『Firestone』のPVは4億7000万回(!)も再生されるなど、自他共に認める立役者となった。
だがEDM業界……特にライブシーンにとっては異端者であった。『EDMで暴れたい』という参加者にとってはバラードに聴こえるだろうし。歌うわけでもバンドの生の質感もない、KygoひとりでのDJスタイルを貫く手法というのは、バラードで泣かしにかかるのも容易ではない。本当に難しい立ち位置に、今なお置かれている状況だ。
で、今回の『Kids In Love』である。
このアルバムからは、上記の問題について「んなもんどうでもいいんだよ」という決意表明がありありと示されている。
相変わらずBPMは遅めであり、じっくりと聴かせるアルバムに仕上がっている。
ワン・リパブリックやセリーナ・ゴメスといった怪物級のメンツに歌わせるのはカイゴらしいと言えるが、個人的に「やられた!」と思ったのは『Stargazing』、『It Ain't Me』におけるサビである。
サビに一番盛り上がる、口ずさみやすいメロディーを入れるのは全世界共通なのだが、なんだこれは。
キャッチーなメロディーをあえて何度も何度も編集し、意図的にぶつ切りにしている。その結果、誰も口ずさめない謎のサビが出来上がった。
例えばこの2曲は、いろんな解釈ができる。ヘドバンもできる、ゆったり聴ける、泣ける。
いろいろなシーンに適応した、だが決して何物にも染まらない。独特の『Kygoスタイル』がついに確立したのではないか。
変な言い方をしてしまえば、今作『Kids In Love』で、Kygoの立ち位置はより複雑なものとなったに違いない。だがその分、ありふれた音楽に飽き飽きしている僕たちに、新たな刺激を今後も与えてくれるという期待をせずにはいられない。
Kygo - Stargazing ft. Justin Jesso
Kygo, Selena Gomez - It Ain't Me
1位
真っ白なものは汚したくなる/欅坂46
しがらみどもよ、まとめてかかってこい!
欅坂46は、はっきり言って異端だ。
現在、数あるアイドルグループの中で、一際彼女たちは輝いている。それは欅坂46の根底に、はっきりとした闇があるからだ。同時に、歴代のアイドルグループとの大きな差でもある。
合計29曲にも及ぶ初のフルアルバムのタイトルは、『真っ白なものは汚したくなる』。そうなのだ。キレイでピカピカなものよりも、多くの経験をしてくすんだものの方が、淡い光を放つものなのだ。
それが『物』であっても、『者』であっても。
このアルバムは、最悪でくだらない世の中に一発喰らわせる、彼女たちにとって最大の武器となった。
〈君らは君らしく生きていく自由があるんだ 初めからそう諦めてしまったら 僕らは何のために生まれたのか?("サイレントマジョリティー")〉
〈最後に大人に逆らったのはいつだろう? 諦めること強要されたあの日だったか("世界には愛しかない")〉
〈大人はわかってくれない 胸が苦しいことさえ そうさ 自分が子供の頃を忘れているんだ("大人は信じてくれない")〉
鬱屈とした社会、人間関係への痛烈なメッセージ。現役の学生でもある彼女らのリアルな声は、心を掴んで離さない。
48グループ特有のキャッチーなメロディーラインはそのままに、彼女らがしっかりと伝えたい部分に関しては、ギターの音を控えめにしているのも特徴。
メンバーのソロ曲もあれば、姉妹グループけやき坂46(通称・ひらがなけやき)の楽曲も収録。1枚のアルバムとは思えない、ボリュームのある内容だ。
これから、僕らの誰にも言えず心にしまい込んだ気持ちは、欅坂46が代弁してくれる。僕は思った。現代社会に欅坂46が登場し、受け入れられているのは必然なのだと。
いかがでしたでしょうか、今回の個人的アルバムランキング。
僕がなぜアルバムの紹介に至ったか、という部分について記して、終わりたいと思います。
僕は音楽に救われてきた、もとい、救われ続けている人間です。テンションを上げるために聴き、辛いときがあったときに聴き……。
例えば今回1位に選ばせていただいたのは、欅坂46というグループなのですが、このグループとの出会いはカラオケでした。
友人が欅坂46の曲を歌っているのを聴き、漠然と「いい曲だなあ」と思いました。カラオケ終了後、YouTubeで観ることのできるオススメの曲を教えてもらい、どんどん欅坂に詳しくなり。
……要は、音楽の入り口はどこでもいいんです。CMでも、カラオケでも、ジャケ買いでも。
今回のブログ、僕としては自己満足で書いてはいますが、一番の理想は読者に「ブログを見て、◯◯という歌手に出会えました」と言っていただけることなんです(今のところそういう話は一切いただいていないので、実際どうか分かりませんが……)。
1つでも、あなたが気になる歌手に出会えたなら。これほど嬉しいことはないです。
(今回のブログは、下書きもせずに一気に書いたものなので、見辛い部分も多いかと思いますが、少しでも何かを感じていただければ)。
それでは、また1年後に書きますね。