キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼・執筆実績はこちらからお願い致します。https://www.foriio.com/kitagawanoblog

小説を書き始めました。

この度、Web小説サイト・カクヨムにて、拙作『イマジン・ヒューマン!』を連載開始しました。本来であればカクヨムのプロフィール内でいろいろと書くべきだとは思いましたが、それはそれで「僕こんな人間だよ!見て見て!」とアピールしているようでもあり……。理由についてはこの個人ブログで綴っていこうかなと思い、筆を執っております。

事の始まりは今から2年前。『裏目で語れ』という別作品でシナリオコンテストに応募し、選考を突破したことが大きな転機になりました。当時の僕は精神的に病んでいた関係上、内容は酷く鬱々しいものではありましたが、言いたいことを全て詰め込んだ自負がありました。故に「この作品を完成させたいな……」との思いは抱いていたのですが、本業が忙しくなったり、また精神的な浮き沈みがあった関係で、そのまま2年の月日が流れてしまいます。

本格的に小説を書こうと思ったきっかけになった出来事は大きく2つ。うちひとつは本業の仕事量が減少したためです。配属が変わり、更には労働改革が成されたことで休みが増え、時間的余裕が生まれるようになりました(休日はリアルに3倍になった)。これにより「時間がなくて◯◯出来ないよ〜!」という状況から、「時間ができたから新しいことしようかな」と切り替えることができました。

また同時期に、小説を多く読むようになったのも大きいです。良いライブを観ればレポを書きたくなる。良い映画を観ればレビューを書きたくなるのと同様に、面白い小説に出会うことで「何か自分も創作してみようかな」と純粋に考えられたのです。

そこでまずはじめに頭に浮かんだのは、処女作『裏目で語れ』を完結させる、というものでした。しかしながらこの作品は物語の特性上、どうしても長編になるのが避けられません。また希死念慮に駆られ絶望状態だった当時の僕と今の僕との精神的な乖離の問題もあり、初の小説としては荷が重いのかなと思いました。

そこで考えたのが、今作『イマジン・ヒューマン!』です。今作は重要なテーマとして『つまらない会話を多面的に考える』というものがあります。第1話ではジハ(時事発表)について取り上げましたが、この『ジハ』という部分さえ思い浮かんでしまえば、後は様々な様子を描写することで、およそ1本の長さになります。この細かな描写は僕が過去ライブレポで書いてきた手法と同様なので、楽しく書くことができるなと。

加えて、今作は全ての内容が日常会話の延長戦上で物語が進行します。今後突飛な話をすることもないですし、ふたりの学生の日常会話をどう見せるか、というところに面白さを感じています。話のオチも基本的には考えていないので、臨機応変に変える……といったこともスムーズにできるのが魅力ではあります。

話は少し逸れますが、そもそも小説という媒体は、最も一般の人が手に取りにくいジャンルだと思います。音楽やYouTubeが3分程度でほぼ終わるのに対して小説は長く、しかも集中しなければ興味も沸きませんから。正直、僕も一般の誰かが作った創作の物語を読むことはほぼないです。もし同じ『読む』という作業をするなら、プロが書いた小説を買いますし。何ならそのプロの小説も、レビューの高さで選んで読んだりします。なので「読んでー!」と言ったところで、画面をスクロールしながら「こんな長いの読めねーよ!」と諦めてブラウザバックをする人の気持ちも、よく分かります。

一方で『カクヨム』を見ていて驚いたのは、様々なことでタイパやコスパが重要視される中で、ここまで小説に全力を注ぐ人が多いということです。お金にはならないけど、好きなことだから文章を書く。この非効率さに、ある種の面白さを感じたのは事実でした。

もちろん本業が第一ですし、今まで通りご依頼をいただいたライター仕事もやっていきます(月2〜3くらいでガンガンやりたい)。大好きなバンドのライブレポも変わらず。ただその中で、全く別の角度からアウトプットする『小説』という活動もまた、自分の中の新たな刺激として楽しめたらなと。
 
これも余談ですが、この数年間、僕はいろんな人と関わりを持つ機会がありました。ChatGPTから意見をもらって事業拡大を目指す人。株式投資で何もせずに毎日数万のお金が入ってくる人、Xで商材を売って荒稼ぎする人、性的なコンテンツで月100万円稼いでいる人。転売ヤー的な活動で本業を上回る稼ぎがある人、などなど。その中で痛感したのは、物書きという仕事がいかにコスパが悪いか、ということです。

ご存知の方もおられるかとは思いますが、物書きの仕事は想像を絶するレベルで稼げません。皆さんが想像するより、本当にあり得ないくらいに稼げません。そして僕には、物書きをお金に変える頭も技術もありませんでした。これは10年間物書きをしていて痛感したことです。ただこんな時代だからこそ、回り道をしまくって進む執筆活動は、大きな価値のある行為だと僕は思います。これから地道に活動していく予定です。宜しければ。

 

【ライブレポート】緑黄色社会『Channel U tour 2025』@島根県民会館

ニューアルバム『Channel U』を引っ提げた大規模なツアーを敢行中の緑黄色社会。去る6月1日、待ちに待った島根公演が開催された。かつてインタビューで彼らが「必聴盤にしたいから、今回のアルバムタイトルは『緑黄色社会 2』にしようと思っていた」と語ったことはファンには知られているが、実際に多数のタイアップ曲と実験的な楽曲が詰め込まれた名盤である。その作品を携えたツアーのため、必然ファンの興奮も高まるというもの。

当然の如く、全日程は既にソールドアウト!ただこの日の島根公演は当日券が若干数ありとのことで、一種の賭けで会場へ向かった僕である。結果として何とか1枚ゲットすることが出来たものの、チラッと確認したところ当日券は10枚ほどしか用意されていなかったようで、開場時間を20分ほど過ぎた頃には「当日券完売です!」との声が。危なかった……。

会場に入ると、尋常ならざるステージがお目見え。構成としては上の画像(事前アナウンスにて写真撮影許可済み)に詳しいが、この写真で注目してもらいたいのは4つ。まずは最も目を引く、アルバムの『U』を模したモニュメントから。この『U』はライブ中様々な色に発光してライブを盛り上げる役割を果たしている。次に、背後のモニター6つとスクリーン。こちらは様々な映像が流れるVJとして機能する。また地面に設置されている5つのお立ち台は、もちろん今回のメンバー5人の定位置(ちなみにこの台もビカビカ光ります)。そして驚くべきは、左右に縦に設置された棒状のモニター。こちらには何と全楽曲の歌詞がリアルタイムで投影されるという、楽曲に没入させることに特化した装置である。……つまるところ、とてつもない規模の金額がステージに注ぎ込まれていた。

定刻になると暗転し、SEである“U”が鳴り響く会場。その瞬間背後のモニターがアナログテレビを表示した時のような砂嵐状態となり、次いで大勢の笑い声と「スリー・ツー・ワン!」の声と共に小林壱誓(G)、穴見真吾(B)、peppe(Key)、サポートメンバーとして結束バンドのバンドメンとしても知られる比田井修(Dr)が袖から登場。それぞれの持ち場で準備を進めていく。そしてしばしのジャムセッションの後、背後の『U』の文字から長屋晴子(Vo.G.Key)が登場!階段をゆっくり降りていく長屋が《君のためのパーティーだ!》と歌えば、1曲目の“Party!!”の始まりだ。

背後のモニターには『Party!!』と書かれた映像が幾度もループする美麗な映像が流れ、メンバーの立つ台は煌びやかに発光。左右にはハッピーな歌詞……と明らかに盛り上げにかかるこの楽曲の投下にひとり、またひとりの立ち上がるファンたち。更にその姿を見ながら高らかな歌声を響かせつつ《君のためのパーティーだ!》とファンを指差しながらテンションを底上げしていく長屋である。特筆すべきはその演出装置で、地元民としてこの会場は何度も訪れているが、まるで異世界に迷い込んだようなここまでの照明の明るさは正直言って未体験。まさにパーティー会場のような豪華さだ。《いいから飛んじゃって》と放った長屋に「ヘイ!」のレスポンスで返す流れもバッチリで、メンバーも全員が満面の笑みで楽しそう。

今回のライブはアルバムのリリースツアーということもあり、大半の楽曲は『Channel U』からドロップ。もちろんこれまでライブで定番となってきた楽曲の他、紅白歌合戦やアニメ、CMなど、我々が絶対にどこかで聴いていたであろう楽曲も隙なく組み合わせており、盤石のセットリストで進行していく。また「初めての島根のライブ。でも初めてのことって1回しかないの。ここにいるみんなで一緒に最高のライブを作っていこう!」とは長屋の弁だが、その言葉に呼応したかのように、全編通してファン全体が熱量の高さをキープしていたのも印象的だった。

以降は“サマータイムシンデレラ”と“言えない”のミドルテンポ楽曲を鳴らしたかと思えば、穴見のスラップベースから幕を開ける“馬鹿の一つ覚え”と“Monkey Dance”で一気にディープな雰囲気に変貌させる、変幻自在なステージングを披露。特にディープな2曲についてはこれまでのリョクシャカにはなかったテイストでありながら、多くの歓声が上がっていたことにビックリ。「どんな楽曲でもファンが受け入れてくれる」……というのはアーティストの理想だけれど、そのレベルに達するのは、楽曲に強い信頼度のあるアーティストだけ。つまりはリョクシャカもこれほどの求心力を持ったという証左だろうし、事実ライブではかなり早いと思われる段階でこの2曲を投下したことからも、自信の程が伺える。

この日のハイライトは複数あったけれど、個人的にグッと来たのは“僕らはいきものだから”の一幕。中学校の合唱コンクールの課題曲としても知られるこの楽曲、何となしに「実際のライブで聴いたら凄いんだろうな」と思ってはいたが、いやはや。ライブではその想像を遥かに超える感動があった。《僕らはいきものだから 背丈は伸び嫌でも腹が減る/このままがいい このままがいい》との冒頭の歌詞から続くのは、一見すると学生に向けた尊いメッセージのようにも思える。ただ学生の心に刺さるように、様々な経験を積んだ大人の我々にもとてつもなく刺さるものでもあり、左右のモニターに投影される歌詞と、長屋の歌声を聴いているうちに気付けば涙腺が緩くなっていることに気付く。事実、ラストに《変わりゆく僕らが美しいのです 息をする僕らが愛おしいのです》と示した瞬間には各所で涙をすする声が聞こえていて、本当に『歌は心を動かす』というか、心をギュッと掴まれる感動がそこにはあったように思う。

御当地MCでは、島根の有名な神社・出雲大社について長尺のトークを展開。せっかく島根に来たということで出雲大社に参拝に行った御一行は、参拝と一緒におみくじにチャレンジ。結果は様々だったが長屋は病気以外の項目が全て『良』だったといい、「私は今年運がいいらしいです!」とご満悦(病気は少し長引くらしい)。また世間一般で言われる『神無月』という言葉が、ここ島根のみ『神在月』と呼ばれることに触れ、小林は「島根だけ呼び名が違うってカッコいいじゃん。しかも神様が全員集まるんでしょ?神様フェスじゃん」と独自の切り口で笑いに変えていく。ちなみにメンバーの中で唯一、小林だけはホテルで作詞に勤しんでいたため参拝には不参加。口々に出雲大社の素晴らしさを語るメンバーに、小林は「作詞ずっとしてたし、よく考えたら参拝する用の服も持ってきてないし。これは『今じゃない』ってことなのかなと思って……」と愚痴をこぼしつつ、長屋は「また島根に来たときにチャレンジしよう!」と前向きなフォローをしていたのが面白かった。

「次は少し違った試みをしようと思います。めくるめく音楽旅行を、どうぞお楽しみください」と長屋が語ると、ここからはメドレーを披露する特別な時間に。このメドレーは1番〜サビまでを演奏し、チャンネルが切り替わるピコンと鳴る音と共に次の楽曲に移行する形で進行。演奏されたのは“ミチヲユケ”、”Don!!“、”Alice“、”あのころ見た光“、”Shout Baby“の既存の5曲で、その時々で異なる盛り上がりを記録していたのが印象的。当然ながらこれも全楽曲がファンに浸透していないと出来ない芸当な訳で、信頼感を改めて強く感じた次第だ。

この日のライブで最も感情が爆発したのは、ライブ定番曲の“始まりの歌”。昨今ではYouTube広告や、CMでも広く知られるようになったこの曲。楽曲が演奏された瞬間、なんと全ての客電が点灯!全員の顔が露わになる状況で、ファンは誰に促されるでもなく、自主的な《ウラララ》の大合唱やボディランゲージで盛り上げ。その光景を嬉しそうに見る長屋はミュート代わりにギターを愛おしそうに抱き締めたり、peppeのキーボードを死角からコッソリ弾いてみたりと自由奔放。小林と穴見に至っては四角の陣地から長屋の元へと飛び移り、最後はふたりで客席近くまで進み出て、ファンと直接コンタクトを図っていたのも素晴らしかった。

興奮が一旦緩やかになった後には、メンバーが一時的に退出。変わりにpeppeのキーボードの椅子に腰を降ろした長屋は「少し前に、私はオーロラを見に行ったの。結局スケジュールや天候の都合が合わずに見れなかったんだけど、でも『オーロラを観に行った』っていう事実は、記憶としてこれからも残っていく」と思い出を回顧。そして「私は曲をメンバーに渡すとき、キーボードと歌……いわゆる弾き語りで表現することが多くて。今日はその時の空気感やテンションを、完全には行かないけど近い形で表現出来ればと思っています」と語り、たったひとりで“オーロラを探しに”を披露。モニターに流れる歌詞をじっくりと観ながら歌声に耳を傾ける、至福の時間となった。

ここからはリョクシャカのライブ恒例、年代別確認のコーナーへ。ここでは長屋が「◯◯代!?」とマイクを向けてその年代の人が声を上げるというもので、20代30代……とどんどん展開。一方で中年勢も負けておらず、長屋が50代を問うた瞬間には「はぁーい!」と野太い声が続々。「どこの会場もね、なぜか50代の人が一番元気なのよ」と語る長屋である。そうして様々な年代に遷移しつつ「いるかな?80代!」と聞くと、2階にいるひとりの女性が身を乗り出して「はぁーい!」とまさかの返事。長屋は「凄い!」と驚き、最終的には幼稚園の男の子が最も若いことも確認しつつ、「ここからいろんな場面で聞いていくから。みんな油断しないようにね」と牽制。そして「はい20代!」「えー……50代!」「80代のおばあちゃん!」と大いに盛り上がったところで、ライブは続いていく。

「初めての土地で不安な気持ちもあったけど、今日は上から下までソールドアウトしてる。もしこれから私に辛いことがあっても『全国の仲間がいるから頑張れる』って、そう思います」と感謝の気持ちを述べた長屋。ここからはお待ちかね、キラーチューンの連続だ。まず先陣を切ったのは、アニメ『薬屋のひとりごと』主題歌としても知られる”花になって- Be a flower“。美しい花びらが吹き荒れる映像と共に、真っ赤な照明がまばゆいステージングに思わず魅了されるファンたち。すかさず投下された”Mela!“も《ララララ》の大合唱含め、モニターに映し出された煌びやかな映像も相まって感動的に映った。

印象的なサビが合唱を呼び起こした”キャラクター“を終え、気付けばライブは最後の楽曲に。ラストに選ばれたのは新たなリョクシャカのキラーチューン”PLAYER 1“。小林の荒々しいギターサウンドから雪崩れ込む開幕から、ここまでの展開史上最もロックな雰囲気で駆け抜けるこの楽曲は、本編ラストと全員が認識していることもあってか、全員が総立ちになっての大盛り上がり。VJには『無敵だZONE』や『フラグでSHOW』といったキラーフレーズがペンキをぶち撒けるような過激さで投影され、照明はステージがほぼ見えなくなる程に真っ赤に発色。リリースされてからあまり期間が経っていない楽曲ではあるが、今後のライブでは必ずセットリスト入りするであろうポテンシャルすら感じた。

本編が終わると一旦暗転し、ツアーロゴが大写しになるアンコール待ちの時間に。するとしばらくした後モニターが砂嵐状態となり、うさん臭すぎる謎のキャラクター・真吾先生(もちろんその正体はベースの穴見真吾)がキーボードをカタカタ操作さながら映像をハッキング。ここからツアーグッズの紹介をしていくのだが、時折「このグッズはギザカワユスですぞ〜!」などと完全な死語が挟まれるため、会場からは失笑が。最終的にはローラースケートを履いて部屋を移動し続けるという謎の幕切れから、再び明点。今回のツアーグッズに身を包んでステージに現れたメンバーたちが口々に話す中、長屋は「リョクシャカのライブによく来てくれてる人は知ってると思うんだけど、みんな慎吾先生知ってる?」と問いかけ、またも微妙な空気に。「僕によく似た人でしたねえ」とは穴見の弁である。

現れたメンバーたちをよく見ると、穴見はしまねっこのぬいぐるみ、peppeは大きなキーホルダー、小林は小さなキーホルダーと、全員が何かしらのしまねっこ(島根のゆるキャラ)グッズを着用。可愛らしいキャラクター性にしばし話が盛り上がると、そこからは次なるライブ予定として海外公演やファンクラブツアーなどがモニターを通して続々発表され、長屋は「島根の皆様。よろしければ次は海外なんて、いかがでしょうか……?」と広告隊長としての役割を担っていた。

アンコールでまず披露されたのは“これからのこと、それからのこと”。たったひとりの高校生に歌ったサプライズ動画も話題となった、虚無的な自分自身に悩みながらも、それでも他者と一緒にいたいと願う心を歌ったメッセージソングだ。長屋はギターのネックを愛おしそうに握りつつ思いの丈をひたすらに届けていき、peppeのキーボードも心に訴えかける真摯さで先導。その強い思いを携えた演奏に、周囲には涙を拭うファンも多く見受けられたほどだった。

そして“恥ずかしいか青春は”で、ライブは圧倒的なフィナーレを迎える。メンバーはそれぞれの立ち位置をピョンピョン飛んでシャッフルさせつつ、この日最もリラックスした満面の笑みで演奏し、もちろんファンも腕を突き上げてのアクションで応戦。長屋が《恥ずかしいか青春は 馬鹿らしいか真剣は/僕ら全力でやってんだ》と青春時代の無敵さを高らかに歌う背後で、モニターにはまるで人生を称えるように、オレンジに色付いた四角形が大量に投影されていくのがこの上なく美しかった。そうして《この上ない今日を忘れないでね》とひとりひとりに伝えた長屋は、演奏が終わると持参したしまねっこグッズを綺麗なピッチャーフォームで次々に客席に投げ込み、最後に「愛してるよ!」と一言。愛と感動に満ち溢れた、素晴らしい2時間だった。

【緑黄色社会@島根県民会館 セットリスト】
U (SE)
Party!!
サマータイムシンデレラ
言えない
馬鹿の一つ覚え
Monkey Dance
∩ (Interlude)
マジックアワー
僕らはいきものだから
ミチヲユケ (メドレー)
Don!! (〃)
Alice (〃)
あのころ見た光 (〃)
Shout Baby (〃)
始まりの歌
オーロラを探しに (長屋弾き語り)
Each Ring
コーヒーとましゅまろ
花になって- Be a flower
Mela!
キャラクター
PLAYER 1

[アンコール]
これからのこと、それからのこと
恥ずかしいか青春は

【ライブレポート】『COMING KOBE 25』@神戸メリケンパーク

夏前に開催されるフェスはあれど、中でも『無料』という金額ゼロの括りで、なおかつロックを主体としたフェスは日本にふたつしか存在しない。名古屋で開催される『FREEDOM NAGOYA』。そしてもうひとつが阪神淡路大震災の復興支援のために立ち上がった、今回レポを記す『COMING KOBE』……通称カミコベだ。ロックが好きな人間は誰しもが名前を聞いたことがある著名なフェスで、チケット代金は様々な場所に設置された募金箱の中に、それぞれが見合った金額を落としてもらうことで成立している。

一方でこれは穿った見方ではあるが、そもそも開催するには数千万〜1億レベルの金が必要となるフェス運営において、今日び『収入源を個々人の価値観に託す』というチャリティーフェスを行うことは難しい問題も孕んでいるとも思う。だからこそ一度、方々でよく聞く「カミコベめちゃくちゃ凄いよ!」との証明をこの目で見るべきと感じ、今回参加を決断した次第である。……ただ目下大切なのは、バンドのライブ。今回は僕が観た全7組のライブレポを記しつつ、帰結に繋げていければと。

ちなみに今回は初参加ということもあり、大まかな目当てのアーティストは決めつつも、当日の疲れや人の流れを見て臨機応変に動けるよう、フワッとしたタイムテーブルで進行。というのも、去年はサマソニとレディクレに行ったのだけれど、本当に三十路に突入してからフェスがキツくなりまして……。しかも翌日は島根に帰ってそのまま仕事なので、今回はメインステージ及び、遠く離れているとウワサの神戸まつりエリアは完全にスルー。なるべく移動範囲が少ないエリア同士を、チョコチョコとシャトルランする感覚で動いた。以下レボです。

 

 

忘れらんねえよ (PORT STAGE 11:25〜)

1週間前の雨予報を奇跡的に覆し、曇り空で迎えた当日。まずメインステージ周辺でリストバンドと、タイムテーブル表(最近のフェスでは配布されない場合が多いので嬉しい!)をゲットし、その足でPORT STAGEなる場所へ移動。ここは一般道路に面したステージであり、フェス会場に到着した瞬間、一番初めに爆音が鳴っていた印象的な場所。なもんである種の運命感も抱きつつ、都合10年ぶりの忘れらんねえよのライブへ。ただ公式でも発表があった通り、この日の忘れの動員数は異常。後ろまでビッチリというのはまだ分かるが、背伸びしてもメンバーの顔は全く見えない。サウンドだけで楽しむ忘れ、これも貴重と言えば貴重か。

この日のライブはサポートベースとして、Wiennersの∴560∵が帯同。そのためSEとして流れたのはWiennersの“蒼天ディライト”で、SEに乗せて現れた柴田隆浩(Vo.G)は「こんにちは!菅田将暉です!」と早速ライアートーク。1曲目は“だっせー恋ばっかしやがって”で、なかなか思いを言い出せず、失恋を引きずる文字通り『だっせー恋』を音に乗せて届けていく。楽曲が終わると「サンキューセックス!ありがとう!」といつもの言葉を叫び、かと思いきや「改めまして菅田将暉でーす!」とボケを何度も擦り倒すのは恒例ではあるが……。

続く“アイラブ言う”でも恋愛感情を歌った柴田。ここからは代表曲の固め打ちで、“CからはじまるABC”と“この高鳴りをなんと呼ぶ”で更なる興奮へと導いていく。柴田は終始「イエー!」と叫びながらのハイテンションで、MCでは「みんな知ってるだろうけど、忘れらんねえよの曲は俺の人生そのものなんだよ。恋できないしヘタレだし。……でもそんな曲でみんなが盛り上がってくれてるって、めちゃくちゃ夢があると思う」と、バンドの素晴らしさを改めて発信。集まったファンの多くがその言葉に頷いていたのが印象的だった。

最後の楽曲はもちろん、バンド名と同じ“忘れらんねえよ”。《忘れらんねえよベイベー 忘れらんねえよヘイヘイ》の歌詞を全員で大合唱するのはライブの常だが、例えば「童貞のヤツだけ歌え!」や「ぼっち参加のヤツ!」などアレンジが加えられることでも知られる。ただ今回は「募金するヤツだけ歌え!」と柴田が促すと、この日最も大きな歌声が。そのあまりの大きさに驚く柴田と共に、全員が大合唱して終了する素晴らしいラストだった。“ばかばっか”でのビール一気飲み、客席に降りてのパフォーマンスなど破天荒な試みこそ今回はなかったが、限られた時間でここまで魅せるのは流石。どうやら入場規制がかかっていた様子で、帰る頃には後ろまで人がビッシリだった。

【忘れらんねえよ@カミコベ セットリスト】
だっせー恋ばっかしやがって
アイラブ言う
CからはじまるABC
この高鳴りをなんと呼ぶ
忘れらんねえよ


PK shampoo (MOSAIC STAGE 12:15〜)

あまり移動はしないと決めていたものの、せっかくフェスに来たなら多くのステージを観てみたいところ。という訳で続いては神戸港をぐるっと回り、少し離れたMOSAIC STAGEへ。ここに向かうにはショッピングモールの中を通って1階に降りる……という方法が主だが、例えばスターバックスなど、どこにいても音楽が聴こえてくる。本当に地元民が一丸となって作り上げているフェスなのだと分かるし、これこそが積み上げてきたカミコベの歴史なのだろうなと。なおステージについてはかなり小さく、袖で待機しているメンバーの姿は丸見え状態。一方でステージが少し高いので、先程のPORT STAGEよりは見えやすくて◯。

ただ遠いステージだからこそ、ここに集まったファンは熱量が違う。次なるバンドは関西発の若手勢・PK shampoo。特に関西圏ではチケットが軒並みソールドアウトする注目株で、この機会に観るべきだと考えた次第である。ポケモンのジムリーダーとの戦闘BGMと共にメンバーが登場し、フロントマンであるヤマトパンクスは一際盛り上がるフロアをよそに、仏頂面でスタンバイ。突拍子もない行動をすることが多い彼のことだ。「きっといろいろ考えてるんだろうな……」などと思っていると、突然「ダンカン!バカヤロっ!」と肩をカクカクさせながらビートたけしのモノマネを披露。そしてシーンとする我々をよそに「こんな暑かったら……天使になるかもしれない!」とビートたけしのモノマネのまま1曲目を宣言。突如、とてつもない爆音がステージを支配していった。

『ロックに何を求めるのか』というのは人それぞれ異なるだろうけれど、カミコベに集まった人々は取り分け『衝動的な興奮』を求めている人が多かったように思う。大型フェスに引っ張りだこのイケメンバンドとも、売れ線のキラキラした曲調とも違う粗雑な爆音はやはり、ライブハウスで研磨されたバンドにしかない魅力がある。彼らPK shampooもそのうちの一組だが、荒々しい演奏の中にヤマトパンクスのどこか清らかな歌声が入り込むことで、新たなロック感すら抱いてしまう。

曲終わりに「PK shampooです」と自己紹介する以外、今回はMCらしいMCはせず、ひたすら楽曲を紡いでいった彼ら。“SSME”での前傾姿勢のパフォーマンスや随所に絶叫を取り入れた“夜間通用口”で翻弄すると、ラストは1分少々で駆け抜ける“天王寺減衰曲線”で完全燃焼。耳をつんざくようなギターをバックに、ヤマトパンクスは自身のギターをぶん投げるように振り抜いてフィニッシュ。ふと後ろを見ると、PK shampooのTシャツを着たファンでビッシリだった。

【PK Shampoo@カミコベ セットリスト】
天使になるかもしれない
奇跡
SSME
君が望む永遠 (新曲) 
夜間通用口
天王寺減衰曲線

 

東京初期衝動 (MOSAIC STAGE 13:10〜)

続いては同じステージで東京初期衝動のライブを。ずっと前から気になっていたバンドではあったが、活動拠点が東京のためライブは関東圏が多くなかなか観れなかった。そのため個人的には念願叶った形だ。今回はリハの段階から観ていたのだが、しーなちゃん(Vo.G)はコンビニで売っているような巨大な袋に入った氷を常に首筋に当てており、相当暑そうな様子……。早めにセッティングが終わったためリハでも何曲か演奏していたが、そのリハ中も常に氷を持っていた印象。確かにこの時間帯は、おそらく今年のカミコベでも最も暑い時間帯ではあった。

ただ野外とジメジメとした環境で聴くロックほど、素晴らしいものはない。CD音源の時点でも相当なノイズ感があったサウンドは、ライブでは周囲の話し声はまず聞こえないほどの爆音。その中心で歌うしーなちゃんは歌うというよりは叫ぶように熱を届けており、まだ1曲目にも関わらずスタンドを最前まで移動させ、位置がすっかり変わったマイクで叫びまくる様は本当にパンク。今の時代流行りのロックバンドに物足りなさを感じることも多々あったけれど、そんなバンドたちに足りない熱量の全てがそこにあった。

カミコベは出演者が多い関係上、ステージの持ち時間は25〜30分と非常に短い。そのためどのバンドも5曲程度を披露するに留まったが、結果として東京初期衝動はなんとこの短い時間に7曲を収めていた。ただその全てがハイライトとも言える存在感を放っていて、しーなちゃんは時折袋に入った氷のジッパーを開けてファンに投げつけたり、口に含んで吐き出したり、果ては自身の胸の谷間に入れて涼むなど予測不能なアクションで翻弄。更に熱を帯びていく演奏も相まって、パンクバンドの醍醐味を肌で感じた。

中でも「カミコベって撮影禁止でしたっけ?」とスタッフに聞き、独断で「いいよ!撮っていいよ!」と強制OKを出してからの“再生ボタン”は本当に素晴らしかった。しーなちゃんは早い段階でファンの元へ進んでいき、多くの人に支えられながら直立。汗だくになりながら思いを届けると、駄目押しの“LSD”では「私をいつも救ってくれるのはロックとサイケデリック!」と叫び、リズミカルなサウンドで楽しませたトキョショキ。ラストは氷を持って再びファンの元に駆け寄り、残ったそれをファンの頭上からバラバラと投下する壮絶なクライマックスとなった。このパフォーマンスには袖で観ていたしーなちゃんの彼氏であるトップシークレットマン・しのだ氏もニッコリ。血湧き肉躍るライブというのは、こういうことを言うのだろう。

【東京初期衝動@カミコベ セットリスト】
ロックン・ロール
高円寺ブス集合
メンチカツ
恋セヨ乙女
トラブルメイカーガール
再生ボタン
LSD

 

愛はズボーン (BLACK STAGE 14:30〜)

先程のPORT STAGE周辺まで戻り、続いては『ESP 20th BLACK STAGE』へ移動。ここは神戸港の目の前という絶好のロケーションのステージだが、一応のセキュリティはあるがほぼフリー。そのため結果としてチケットを持っていない『何となく音につられて観に来た一般の人』も割と楽しめる、稀有なステージとなっている。そんな場所で演奏する次なるバンドは愛はズボーン。先日の大阪万博でもライブをし、屈託ない笑いを届けるアメ村出身の4人組だ。いつも爆笑を掻っ攫う彼ららしく、リハの段階でアジカンの“ループ&ループ”をフルで披露して関係各所に謝罪したかと思えば、リハ時間が余ったのか金城昌秀(Vo.G)は「もうこのままやってもええやろ」と話したり、「みんなで次のジングル(フェスのバンド紹介SE)当ててみーひん?」とトークで繋ぎまくり……。楽しさを突き詰める彼ららしいステージングが、早くも展開していく。

愛はズのフェスにおけるセットリストは基本的に、“愛はズボーン”、“ニャロメ!”、“ひっぱられる”、“MAJIMEチャンネル”の4曲を軸に構成される。今回も例に漏れずこれらの楽曲が演奏されることとなり、1曲目に選ばれたのは“MAJIMEチャンネル”。袖から颯爽と現れた、上半身裸にシャツをまとった儀間 建太(Vo.G)のアクションから《じごっくー》の印象的なサビが突き抜ける様は圧巻で、どんどん人を集めていくのがあまりにも痛快。また先述の通りこのステージは構成上、一般の人もライブの光景を明瞭に観ることが出来るエリアだったが、通常では観ることの出来ない(今回のフェスチケットは電子チケットのみなので日本のスマホがない人は入場不可)海外の人たちや子どもたちがいつの間にか客席にいて、笑いながら《じごっくー》ポーズを決めていて思わずウルッと。

「ワンピースは……実在する!」と白ひげの言葉を借りて様々な漫画をイジりまくった”マンガパンチ!“、儀間がやりたかったウェーブもしっかり決まったキャッチーソング”ひっぱられる“と続き、ライブはいつの間にか定番曲の”ニャロメ!“へ。この楽曲は愛はズボーンの伝えたい思いを体現したもので、常にライブのセットリストに組み込まれてきた。《小学生が泣いてる/トランスフォーマー欲しさにピヨピヨ泣いてる》の歌詞が、次第に《泣け泣け 大人になれば/ギターが買えるぜ!!》とのポジティブな感情に変化していく……。それは金城と儀間が父親になったこともあるだろうけれど、きっと「辛いことがあっても笑い話になるよ!」という前向きな精神を彼らなりにバカバカしく表した結果なのだろう。

そして最後はもちろん、これを聴かなければ帰れない”愛はズボーン“でシメ。元々がキラーフレーズ連発の曲ではあるが、儀間はおもむろにステージを降りると、客席後方までファンの側を通りながら移動。自身が着ていたシャツを振り回しながら、全員での《ボンボンズボボン 愛はズボーン》の大合唱へと導いていく。その姿は本当にフロントマン然としていたし、全く何も知らない人々も巻き込んでいく様は、改めて求心力のあるバンドだなと実感した次第だ。関西フェスや関西サーキットイベントの特攻番長・愛はズボーン。その強みを、この日も十二分に味わわせてくれた。

【愛はズボーン@カミコベ セットリスト】
MAJIMEチャンネル
マンガパンチ!
ひっぱられる
ニャロメ!
愛はズボーン

 

Alaska Jam (BLACK STAGE 16:00〜)

このあたりでボイガルを数曲観たり、一旦ボーっとしたりと小休憩を挟みつつ、続いては同ステージでAlaska Jamのライブを鑑賞。バンド名の通り彼らの演奏はジャム・セッションを想起させる独特なグルーヴが特徴だが、その母体を作っているのは主に小野武正(G)の卓越したギターテクニックにある。それこそ武正が所属する誰もが知るロックバンド・KEYTALK(現在活動休止中)でもその存在感は圧倒的だったけれど、とにかくAlaska Jamはギターが彼の1本のみなので目に付く。面白かったのは、リハで武正がワイヤレスアンプ内蔵のギターで客席を練り歩き、音を確認する一幕。僕はその時スマホを操作していたのだが、ファンの目線が僕の方に向けられていて「なんだなんだ?」と思っていたら、武正が真横に立っていてビックリ!その後もニコニコ顔で隅々まで歩きまくって”MY CONVERSE“と”少年の樹“をやったり、インスタライブのセッティングをするなどしているうち定刻となった。

ライブは”ゴーストピーポー“で緩やかなスタート。ややダウナーな雰囲気をバックに、森心言(Vo)の軽やかなフロウが溶けていくのはやはりAlaska Jamならではで、キメ部分で体を傾けたり腕を広げたり……といった森の一挙手一投足にも目が離せない。一方で《集まれ我々ゴーストピーポー》の合いの手もバッチリ決まり、その音とフレーズの楽しさから人がどんどん増え、気付けば後ろまでビッシリの客入りだ。続く”モラトリアムコレステロール“でも勢いは止まらず、森と武正のふたりが客席に突入したり(以下動画参照)、ファンの目の前でギターを弾き倒して帽子を落としてしまい、その帽子をファンに被らせてもらうといった早くも様々な印象部が。

酒を持ったファンを煽り尽くした”クラフトビール“、キャッチーなサウンドで駆け抜ける”FASHION“、アダルトな魅力に溢れた”焼酎“と、ほぼ全てのアルバムからドロップされたライブ。森は「結成15年、初めての野外フェスです!」と今回のカミコベがバンドにとって大切な代物であることを語り、来たる全国ツアーを告知。更なる申し込みが増えることを悟りつつ、最後の楽曲は”東京アンダーグラウンド“。森と武正は2番に入った瞬間、クラウチングスタートさながらに突如として客席に突撃。大興奮の熱量をバックに暴れ回った彼らは、まさに歌詞の通り《全部巻き込んで》最後まで駆け抜けていった。彼らにとって初の野外フェスは、変わらない強さで戦い続けることを示した素晴らしい時間だった。

【Alaska Jam@カミコベ セットリスト】
ゴーストピーポー
モラトリアムコレステロール
クラフトビール
FASHION
焼酎
東京アンダーグラウンド


四星球 (MOSAIC STAGE 17:45〜)

気付けばフェスも終幕に近付き、八十八ヶ所巡礼やガガガSPなど、各々の推しのバンドに直行し出す観客たち。実際自分もかなり迷ったものの、これまでの歩みで最もステージが見やすく音が良かったこと、また他ステージは相当な客入りでほぼ見えないだろうと予想し、最後のライブはモザイクの四星球に決定!早めに移動したので割と前方で観たのだが、最終的には以下の写真で分かる通り入場規制のパンパンぶり。危なかった……。なお爆笑を掻っ攫うことでも知られる四星球。気になるリハでは、昨年本来は上がってはいけない場所までファンを引き連れて登ったからか、例の場所をガチガチに警備する無表情の警備員さんに向かって「すいません今年は行きません。……顔こっわっ!絶対行きませんて!」とツッコんで早くも大爆笑。そうしている間にもみるみるうちに増えていく観客である。

リハの段階で、早くも爆笑の渦に巻き込んだ四星球。では本編はというと、全員が見覚えのある緑の顔のイラストと緑のエプロンを着用して登場。そして北島康雄(Vo)は開口一番「スターバックスの皆様!うるさくしてしまい申し訳ございません!」と叫びつつ、ステージの上方(2階のテラス)で絶賛営業中のスタバに謝罪。更には誠意を見せるためか、その場で持ち帰ったスタバのコーヒーまで持ち込む始末。もうこの時点で崩壊寸前の笑いが生み出されていた中、オープナーは”鋼鉄の段ボーラーまさゆき“。あらゆる小道具を段ボールで工作するまさやん(Vo.G)に焦点を当てた自己紹介ソングだ。楽曲内ではお手製の音符記号が飛び交った他、モザイクステージということで股間にモザイクをかけたりとやりたい放題。

圧巻だったのは、次なる楽曲”ちょんまげマン“。この楽曲では北島が『ちょんまげマン』なる別キャラクター(北島とは完全に別人という設定)に扮し正義の行いをしていくのだが、今回はカミコベがチャリティーイベントであることを鑑みて「今からこの箱に募金するんだ!」と楽曲中に4つの箱をファン同士のリレー形式で回し、我々が実際にお金を入れていくという離れ業を敢行。自身も巨大な募金箱を持ちつつ板に乗って後ろまで進んでいくちょんまげマン、移動中も「スターバックスの皆さん!カミコベっていう素晴らしいイベントやってます!」と叫んだり、入場規制で入れない人には「ゆっくり来たあなたたちが悪いんですよ!」とさすがのトーク力。なお以降もライブ中に募金箱は回され続け、好きなタイミングで募金をすることが可能となり、最終的な募金金額はなんと46万8499円!……なかなか一歩が踏み出せない『募金』という行動。ただ音楽を通して全員が一丸となればここまでの結果が得られるという、素晴らしい証明となった。

持ち時間が少ないこと、また曲ごとの展開がロングコースになる彼らの性質上、この日のMCは1度のみ。その内容は前日行われたお笑い賞レース・THE SECONDについてで、かねてよりの友人であるツートライブの優勝に触れ「優勝の瞬間を見たときは嬉しさもありましたけど、悔しさもありました。『もっと売れたい』と思いました。そしてもし四星球がとてつもなく売れたら、カミコベに戻ってきてメチャクチャな額を募金したいと思います」と決意を語ると、北島は「次はスターになって戻ってきます。これが本当の『スターバックス』です」と落とし、最後の曲はきってのメッセージソングたる”薬草“。《あなたが死にそうに 消えてしまいそうになったら/忘れちゃいそうになったら 歌が薬草になってやら》との歌詞は盟友・オナマシのイノマーが亡くなった際に記されたものだが、これはカミコベの創立者でもあり数年前に帰らぬ人となった松原裕に宛ててのもののようにも聞こえた。ライブにおける盛り上げ方、加えて未来に繋げる人間力。それらを兼ね備えたバンド四星球は、今後もカミコベに必要な存在だと実感した。そんなライブ。

【四星球@カミコベ セットリスト】
鋼鉄の段ボーラーまさゆき
ちょんまげマン
UMA WITH A MISSION
クラーク博士と僕
薬草

 

かくして僕の初神戸、初カミコベは終幕。これほど多彩なバンドが各地大型フェスと比較しても数倍の数出演し、チケット代は実質ゼロ。常識に照らせばあり得ないこのフェスが成り立っているのは、繰り返すが『ライブキッズの寄付金』だ。実際募金をする人を今回数え切れないほど見たし、かく言う僕自身も「夏フェスに参加したらこれくらいだな」という額プラス、シーンへの貢献度やここまで楽しませてくれた事実……などなど、様々なことを加味した額の寄付をさせていただいた。

……正直なところ、僕は駅前などで募金活動をしている人たちを見ても、あまり動けない人間だ。ただ署名運動やアンケートなど他者がある種ノーリスクで強引に獲得するものとは違い、募金は『自分が主体的に身銭を切らなければならない』という点で非常に難しいものだとも思う。ゆえにカミコベの大きな功績があるとすれば、それは紛れもなく『音楽を通して呼び掛ければ全員が募金をする』という事実を、明確にしたことに尽きるのではないだろうか。

今回のカミコベにおける最終的な寄付金額はまだ不明だが、きっと凄まじい額になるはず。素晴らしい音楽に集まったロック好きと、バンドたちに全てを託した運営……。関わっている全ての人たちに拍手を送りたくなるフェス、それがカミコベだった。来年もまた。

【ライブレポート】小山田壮平『バンドツアー2025』@大阪城音楽堂

とりわけ20代後半〜30代の一部のロック好きにとって、andymoriはバンド界に舞い降りた革命だったように思う。文学的な歌詞、1分弱で駆け抜けるスピード感。またある時には涙腺を緩ませるバラード……と、彼らのリリースした楽曲は他に類を見ないオリジナリティが溢れていて、特に2009年のファースト『andymori』、翌リリースの『ファンファーレと熱狂』、その翌年の『革命』の3枚は多くの音楽好きにとって最強の名盤とされた。しかしandymoriは2014年に様々な内部的問題から、突然解散を発表。当時は配信などもなかったため、僕もそうだが、ファンの多くはその最後の現場に立ち会うことさえ出来なかった経緯がある。

一方でフロントマンの小山田壮平は、解散後はマイペースに活動を継続。今回のソロツアーはそんな彼の最新アルバム『時をかけるメロディー』を引っさげて行われるもので、サポートメンバーには岡愛子(G)、久富奈良(Dr)の他、約13年ぶりに共演する元くるりのファンファン(Tp.Key)、そしてandymoriのメンバーだった藤原寛(B.Cho)が帯同する形となった。また今回の会場は別名『大阪野音』とも呼ばれる大阪城音楽堂。僕は初めて訪れる場所だったのだが、そこは大きな公園の一角にあるステージといった印象で、多くの子どもたちが遊んでいるそのすぐそばで「本日の公演こちらでーす!」と呼び込まれていたり、背後の芝生エリアで寝転んでいる人がいたり、普通にお客さんがアルコールを持ち込んでいたり……と目にも楽しい。この日は快晴だったこともあり、気温的にも最高だ。

定刻の17時30分になるとステージ袖から4人が登場し、それを見たファンは全員スタンドアップ。知らない間に顔中ヒゲもじゃになっていた藤原の風貌には心底驚いたが、中心に立つ小山田は10年前に観た姿と比較しても「歳取ってないんじゃないか?」と錯覚しそうな爽やかさで、ニコニコ顔でチューニング。そうして挨拶も特になくふわりと始まったのは、andymoriの“Life Is Party”。何度も聴いてきた楽曲が鳴らされる驚きと、野外の環境での開放感が相まって気付けば夢心地。ただ中にはandymoriへの強い思いを感じさせるファンも多く、涙を拭いていたり、サビを口ずさんだりする人の姿も見られた。

楽曲が終わると、ここで早くもMCへ。「大阪城野音、ありがとうございます。andymoriの時が最後だから、10年ぶりかな。天気も……まあまあで」と朴訥とした雰囲気で語ると、続いてはバンドメンバーを紹介。ただ「ギター岡愛子!」「トランペットはファンファン!」と紹介した後には必ずシーンとした時間が到来してしまい、そのたびに「あの……どうですか?」と抽象的な質問を投げかけるのは小山田節であり、元andymoriの藤原に対しては「寛はしばらく見ない間にヒゲがね」とツッコんでいたのは当時のインタビューを見るようで、嬉しくもあった。

次なる楽曲はこちらもandymoriから“Sunrise&Sunset”。個人的には彼らの楽曲でも一番好きな楽曲だったので嬉しかったのだけれど、ここで気付いたのが、原曲よりもどっしりとしていること。具体的にはこの日の楽曲の多くは少しばかりテンポを落としており(BPM0.9倍くらい)、まるで在りし日の思い出を伝えるかのように鳴っていたのが印象的。なお若干スローなこの形は以降もandymori楽曲にのみ適用され、対して小山田壮平楽曲については原曲通りの進行だった。

この日は先述の通り、ニューアルバム『時をかけるメロディー』のリリースから間もないライブ。ただ一般的なリリースツアーとは一線を画していて、セットリストについてもアルバムから演奏されない曲が複数あったり、andymori楽曲は9曲。かと思えば未発表の新曲も披露する、予想不能な100分セットとなった。またライブ中、小山田は一貫してマイペース。常にニコニコしながら、特段人を煽ったりすることもなく『曲→チューニング→曲』……といった形で淡々と進行していたのは彼らしいなと。また大阪野音の少しずつ陽が落ちていく環境も相まって、幻想的な世界観だったのも嬉しいところ。

“クラブナイト”でファンファンのトランペットが先導し、“汽笛”ではやや涼しくなった風に乗せてゆったりと。また“スライディングギター”では岡のボトルネック奏法が炸裂……と、楽曲ごとに異なる雰囲気で魅せたライブ。特に熱量が1段階上がったのは“彼女のジャズマスター”で、サビでバンドメンバーが一体となって爆音を鳴らした瞬間、照明が激しく明滅。音の海の中を泳ぐような高揚感の中で、彼のロック精神にも触れたような感覚にも陥る。曲間では必ずカーカー言っていたどこかのカラスも、この時ばかりはスンっと黙っていたのも面白かった。

この時間帯になると日が落ちて、少しばかり暗くなってきた会場。小山田は「本当だったら空が夕焼けでブワーってなるイメージだったんだけど」と語りつつ、「じゃあ岡さんどうですか?」などと再びバンドメンバーに無茶振り。バトンを無理矢理渡された岡は「今は私ギター持ってないので、この状況で振られるの恥ずかしいです……。何だか裸にされてる感じで」とボソリ。ただシーンとさせるのも忍びないということで、「でも皆さん音楽が好きな方々ですから。想像力には長けてると思うんです。ぜひ頭の中で夕焼けを想像してもらって」とフォローするも、当の首謀者である小山田はチューニングをしながら放置。そしてまた沈黙が生まれていくという、ひたすらバンドメンバーに火傷させるドSぶりである。

「ではそんな想像力のある曲を」と語って始まった次なる楽曲は、小山田ソロの“マジカルダンサー”。プラジャパティーやマハデーヴァわっしょい、はたまたクニコのダンスやシャンティーなグッドといった独特なフレーズが盛り込まれたこの楽曲を、小山田はリズミカルなリズムに乗せて歌唱。前方にはアルコール片手にお祭り気分で踊りを踊るファンもおり、本当に至福の時間だった。続くandymori楽曲の“革命”、ちょうどこの日が千秋楽だったという福岡の劇団・ガラパの演劇『見上げんな!』に楽曲提供した“夕暮れの百道浜”も軽やかに響き、気付けば空は暗くなっている。これまで明確に見えていた隣の人の顔は全く見えなくなり、逆にステージは一気に光が灯ったことで、どこか神々しささえ感じられる雰囲気だ。

アルバム表題曲でもある“時をかけるメロディー”が鳴らされた瞬間には、確かに夕方のふわりとした風が流れていた。小山田のアルペジオから始まり以降も穏やかな雰囲気に包まれたこの曲は、結果としてアルバム『時をかけるメロディー』内では最もバラードに近い楽曲となった。一方でライブのアレンジはと言うと、ギターパートは岡に任せ、小山田はほぼボーカルに専念。圧倒的に『歌』を前面に押し出す形となったこの楽曲を、軽やかに歌い上げていたのが印象的だった。また《光を連れていく 時代に殴られても》との歌詞ひとつ取っても、ネガティブな物事にもどこか光を見出す小山田らしさが詰まっていたなと。

ここからはなんと、andymori楽曲4連発!まずは《大丈夫ですよ 心配ないですよ》の歌詞がぐるぐる回る“投げKISSをあげるよ”、メンバーの姿が見えなくなるほど白い照明が眩しく炸裂した“光”を届け、緩やかにラストスパートを図っていく。続く“1984”は特に多くのファンの琴線に触れた時間で、サビ部分の《ファンファーレと熱狂 赤い太陽/5時のサイレン 6時の一番星》では誰もが歌って応戦。ただその口は熱唱するというよりは、今回のライブの雰囲気を損ねないように口パクでうっすら歌う……というような感覚で、そうした言わば『抑圧された感動』にはグッと来るものがあった。

そして最後は、同じくセカンドアルバム『ファンファーレと熱狂』からファン人気の高い“グロリアス軽トラ”。特段「最後の曲です」というようなMCがなかったのでまさか最後とは思わなかったのだが、サビの《グロリアス軽トラックで行こうぜ 田舎道スイカを盗みに行こうぜ/グロリアス軽トラックで行こうぜ 田舎道ケアンズの空の下/ベニスの空の下》を全員で大合唱した瞬間には、ここに集まった多様な考えの人々がひとつになったような、そんな感覚さえあった。小山田は《所沢の空の下》を「大阪の空の下」と変化させ、約2分弱に渡るこの楽曲をマイペースに進行。そうして終了後はまだまだ聴きたい気持ちの強いファンをよそに、無言でギターを置いた小山田。ゆっくりした足取りでステージを去っていき、その後にはパラパラとした拍手が鳴り響いていた。

やがて辺りが真っ暗になった状態で呼び込まれたアンコール。小山田は先程同様ニコニコ顔で登場すると、まずは「新曲をやりたいと思います」とのサプライズから演奏されたのは、今回のツアーで初解禁となる“電車に乗って行こう”。リリースは後に発表になると思われるので詳細はまだ先の話だが、《電車に乗って行こう》のキャッチーなフレーズを起点に日常の風景に迫る、実に小山田らしい穏やかな楽曲。……andymori解散から時は流れてソロになり、私生活では父親に。子どもと過ごす穏やかな日々の中で得た気付きや風景描写が、ギュッと盛り込まれていた感覚があった。

そうしてこの日一番の爆音が鳴り響いた“アルティッチョの夜”で熱量を高め、更なる興奮へと導く小山田壮平BAND。《君もつらいね 俺もつらいよ》と歌う一幕は小山田の優しさを。また《調子こいたじゅんやがテキーラ飲みます》の箇所では独特の歌詞世界を描き、満を持して鳴らされたのはandymoriの“すごい速さ”。原曲の時間にして1分25秒、BPMも爆速とその名の通り『すごい速さ』としても知られるこの楽曲を、彼らはやや緩やかなスピードで披露。《ララララララ》の部分では待ってました!とばかりに多くのファンの掌が天に突き上げられる中、楽曲は気付けば終了。andymoriファーストの性急なサウンド時代を再度呼び起こしつつ、いよいよライブは最後の楽曲へと進んでいく。

そんな最終曲“サイン”は穏やかではありつつも、そう題されていながらそのサインが何を指しているのかは、最後まで言及されない。辛いことなのかも楽しいことなのかも、結局は聴き手に委ねる形になっているためだ。しかしながら《忘れないでいてね 忘れないでいるよ/この心の歌を》との一節や、ラストの《そしていつか 「やっぱそうだったね」って/僕がサインを送るから》の部分を見るに、この楽曲で示した『サイン』は希望であって然るべき代物だと思う。……楽曲が終わるとギターを置き、手も振らずにまたニコニコ顔で去っていった小山田。あまりにもあっさりとした幕引きにダブルアンコールがあるものと思ったファンが直立で見守る中、客電が点灯。そこでハッとしたファンが続々と荷物をまとめて駅へと向かうという、本当に最後までマイペース、ただ最後まで確かな希望を届けた、素晴らしい1時間40分だった。

【小山田壮平@大阪城音楽堂 セットリスト】
Life Is Party (andymori)
Sunrise&Sunset (andymori)
HIGH WAY
クラブナイト (andymori)
恋はマーブルの海へ
汽笛
スライディングギター
空は藍色
彼女のジャズマスター
月光荘
雨の散歩道
マジカルダンサー
革命 (andymori)
夕暮れの百道浜 (新曲)
時をかけるメロディー
投げKISSをあげるよ (andymori)
光 (andymori)
1984 (andymori)
グロリアス軽トラ (andymori)

[アンコール]
電車に乗って行こう (未発表新曲)
アルティッチョの夜
すごい速さ (andymori)
サイン

【ライブレポート】yama『the meaning of life TOUR 2025』@Zepp Osaka Bayside

今や多くの音楽好きに知られるようになったシンガー・yamaの2025年はここから始まる。……モラトリアム3部作の最終章として位置付けた3枚目のアルバム『awake&build』を経て、ニューアルバム『; semicolon(読み:セミコロン)』をリリースしたyamaによる全国ツアー『the meaning of life TOUR 2025』が開催された。アーティストとしての新たな一歩を踏み出すための1枚目であるという今作を携えてのツアーは、間違いなくyamaの今後を占う試金石になるはず。そう思い、大阪ライブの2日目に足を運んだ次第だ。

会場はその名の通り湾岸に位置するZepp Osaka Bayside。最寄り駅となる桜島はちょうど今の時期、大阪万博と重なっていることもあり大混雑。しかし大阪万博とは全く逆の方向へと嬉々として進む我々は、グッズを身に着けながら別の場所へ向かう構図が面白い。今回のライブは一応スタンディングではあれど、全て座席指定だったのは驚きだったが、個人的には2時間立ちっぱなしの状況が苦手なのでむしろありがたいなと……。

暗転後、顔に仮面を着けた有島コレスケ (G)、勝矢匠 (B)、半田彬倫 (Key)、吉田雄介(dr)らサポートメンバー4名が定位置に付くと、そこから少し遅れてyamaが登場。この日のyamaは全身白でコーディネートされており、顔にはもちろんお馴染みの仮面が装着されている。前方のファンからの声援に応えるかのように始まった1曲目は、ニューアルバムから“TORIHADA”。打ち込みも伴ったダンサブルなサウンドの中心を、中性的な歌声が突っ切って聴こえる感覚でもって「yamaのライブだ……!」と感じるのは、やはりyamaの歌声の明瞭さによるもの。気付けば先程まで着席していた周囲のファンは全員がスタンディング状態、更には腕を上げたり手拍子をしたりと思い思いに楽しんでいて、その光景に満足げなyamaは腕をしきりに動かしながらの歌唱で魅了していく。

この日のセットリストはニューアルバム『; semicolon』に収録されている全曲を披露しつつ、その間にフェーズに沿った既存曲を織り交ぜるスタイルで進行。また今回驚きだったのは、フェーズを完全に固めて動いていたこと。具体的には“TORIHADA”〜“こだま”の『ミドルテンポゾーン』、“rain Check”〜“雫”の『バラードゾーン』、そして“声明”〜“くびったけ”の『アップテンポゾーン』の3つのフェーズに分かれ、ライブが進んでいく形だ。「ここからは座って楽しんでもらえれば」とバラードゾーンに移行して数曲やり、はたまた「皆さん盛り上がる準備できてますか?」とスタンディングに戻したりと、ここまではっきりとテイストを区分したライブは珍しいように思えるが、これこそが今回のyamaの方針なのだろう。

“TORIHADA”終了後も、ライブはチューニングも挟まず矢継ぎ早に進行。メロウな“こだま”で体をユラユラと動かし、有島のギターカッティングが楽しい“憧れのままに”、打ち込みの穏やかなサウンドが鼓膜を震わせた“Film”……。全く違った雰囲気で進んでいく楽曲群を聴いていると、改めて「これが今のyamaが聴かせたい音」なのだと伝わってくる。またyamaの楽曲は全体通して打ち込みが多用されている印象があるが、どれも音のバランスが絶妙で、先述の通りyamaの歌声が絶対的に負けていないので印象も抜群に良い。

その中心で歌うyamaはと言えば、特段フロントマン然としたことはしない。右へ左と動きながらハンドマイクで歌うという、一見シンプル極まるスタイルが基本形だ。しかしながらその目は確かにファンへと向いていて、ファンが喜ぶ顔を見て喜んだり、時にはお立ち台に登って存在をアピールするなど、我々が目で見て楽しめるアクションも多数。「大阪ー!」と叫んだりといったライブアレンジこそなかったけれど、愚直に音楽を伝えていく姿勢は非常に好感が持てた。

初めて訪れたMCの時間は、およそ7曲が終わった頃。挨拶をした瞬間に沸く歓声に「さすが大阪、ヤジが凄い……。すいませんヤジじゃないですね」とタジタジ。また今回のツアーでのMCはいつもご当地飯の話になってしまっているといい、この日は「そういえば皆さんは万博行ったんですか?」と別のベクトルでトークを展開していくyamaである。なおyamaはこの2日間の大阪滞在でほぼどこにも出歩いていないらしく、マネージャーからミャクミャクのグッズをプレゼントされたとのこと。ファンとの大阪的なキャッチボールもありはしたものの、当の本人は「もう少し大阪観光とか出来たらいいんですけど、部屋から出ないので……」と苦笑い。

「ここからはゆったりした曲をやるので、皆さん一度着席していただいて……」と促しての第2部は、バラードで敷き詰めたゾーンに。ゆったりと体を揺らして聴き入った“rain check”、キーボードの音色が溶ける“クリーム”、《もういいよ、いいんだよ》のフレーズが悲しく響く“雫”と楽曲は続いていく。またそれらの楽曲はyamaの歌声を中心としなければ成し得ない臨場感を伴っていて、改めて歌の上手さに驚かされる。中でも《あの日から全部が嫌になって/ただ生きてるだけの存在で》と喪失感を放出させる幕開けからの“Lost”は心の琴線に触れる代物で、楽曲全体に感じる『自信のなさ』は元々表舞台で歌うつもりがなく、今も仮面を被ることで自分を排除して歌のみにフォーカスを当てたいというyamaの心情ともリンクしている感覚さえ抱いた。

しばしバラードを続けて披露した後は「盛り上がっていきたいと思うんですけど、いけますか?」との一言から全員が起立。ここからはyamaの楽曲でもとりわけBPMの速い楽曲が続く、キラーチューン祭りである。その幕開けを飾ったのは“声明”で、キラキラした打ち込みサウンドと共に明るく駆け抜け、大勢のハンズアップを促していく。また続く“色彩”ではキーの高い鍵盤の音色で、“MUSE”では真っ赤な照明が照らし出したりと、様々な方面から楽しませてくれていたのも印象的。

 

 

そうして迎えた“BURN”と“くびったけ”は、間違いなくこの日最も盛り上がった局面。ステージ上を闊歩しつつロック然とした歌唱を続けるyamaはブレることこそなかったが、時折歌詞をミスする場面もあった。ただそのワンシーンも後のyamaいわく「みんなのエネルギーが凄すぎて、自分も今どこを歌ってるか分からなくなっちゃって……。でもみんなが受け止めてくれるからそれでいいや!って、全力で歌いました」と興奮の表れだったという。また時折歌が消えてしまったその場面でさえ、「本当にyamaが声を出している』と改めて証明していた訳で、良い意味でライブ的だったなと。“くびったけ”のサビではボーカル部分をファンに託してマイクを客席に向ける様子も見られ、この日一番楽しそうなyamaである。

「次で最後の曲になります」との一言からは、この日最も長尺なMCが。「ファンクラブではいろんなメールが届いていて。もちろん全部目を通しているんですけど、その中に『凄く辛かったけどyamaさんの歌で励まされました』っていう、とある女の子から送られたメールがあって。そこに『yamaさん知ってますか?』って、セミコロンっていう言葉とその意味が書かれてたんです」と、まずはひとりの少女……ひいてはsemicolonとの出合いについて回顧するyama。

「どうやらセミコロンっていうのは『;』のマークをタトゥーとして入れて、その瞬間に今までの自分にピリオドを打って先に進んでいく……。そういうブームが海外で去年くらいにあったらしくて。自分はその考えが凄く良いなと思って、どこかで『semicolon』っていう曲を作りたいなと考えていました」と締め括ると、最後の楽曲として披露されたのは“semicolon”。自身が作詞作曲を務めた楽曲でもあり、今回のアルバムのテーマともなった楽曲だ。緩やかなサウンドの中で、yamaは《不確かなまま息をしてた僕は 深い霧から目を醒したよ》と少しずつ前を向けるようになった精神性をつまびらかにしていく。弱い自分がいたから、今の自分がいる……。そんな誰もが大人になってから気付く感情は、同じように弱い状況にいたyamaが歌うからこそ、雄弁に響いていたように思う。楽曲のラスト、《今を結ぶセミコロンは ここにあるから》と締め括ったyamaはボソリと「ありがとうございました」と伝え、万感の拍手の海をバックに、ステージを後にしたのだった。

ここからはアンコールの時間だが、事前アナウンスがあった通り今回は初の試みとして、アンコールでの写真撮影・動画撮影OK。『#yamaTOUR2025』のハッシュタグを付ければSNSでの投稿も可能とのことで、再びyamaがステージに現れた瞬間には、大勢のファンがカメラを向ける珍しい光景に。そんな特集な状況下のyamaはグッズの紹介を粛々と行いつつ、最後に「忘れてた!」とこのライブが終わる予定の21時に、この日のオープナーとして演奏された“TORIHADA”のMVが公開されることをサプライズ発表。発表を忘れて大慌てなyamaはファン視点からもレアだったようで、公演後のSNSでは多くのファンがバッチリとその様子を動画で捉えていたのが面白い。

yamaのアンコールは基本的に、1曲目が毎回異なる仕様になっている。この日選ばれた楽曲はアンコールとしては珍しい“麻痺”で、演奏直後から激しい緑の照明で圧倒。個人的にはyamaの中でも1.2を争うほど好きな楽曲でもあったので嬉しかったし、先述のMCを聞いた後の《このステージに立ってる意味を 今も忘れたくないよな》の歌詞は、また違った意味を持って響いていたのも印象的だった。そしてラストの楽曲はもちろん、yamaの記念すべきファーストソングであり、とてつもないバズに至った“春を告げる”。桜色の照明が照らす中、yamaは「最後はみんなで歌ってもらえると嬉しいです」と語り、最後は《深夜東京の六畳半 夢を見てた》からのサビ部分を全員で大合唱してライブは幕引きとなった。

客を煽ったり声を張り上げたりといったアグレッシブな行動を廃し、ひたすら自分自身の歌声で勝負をかけた2時間。yamaは様々な媒体で「自分に自信がない」と語っているけれど、yamaにとって歌だけは、何よりも自信のある存在証明なのだろうと思う。……一方で『写真動画撮影OK』、『楽曲を3つの雰囲気に分ける』というこれまでにない試みは、今回の『セミコロンを打って次に向かう』テーマに沿ったものでもあり、新たな幕開けとも取れるライブでもあり。本当に素晴らしかった。


【yama@Zepp Osaka Bayside セットリスト】
TORIHADA
憧れのままに
偽顔
a.m.3:21
Film
レコード
こだま
rain check
沫雪
クリーム
Lost
新星

声明
色彩
MUSE
オリジン
愛を解く
BURN
くびったけ
semicolon

[アンコール]
麻痺
春を告げる

【ライブレポート】DNA GAINZ・ネクライトーキー『TOUR -発展土壌-』@心斎橋Pangea

これまで幾度もライブレポート関係を執筆しているけれど、今回のDNA GAINZのメンバーに対しては個人的な縁を感じている。彼らにインタビューを敢行したのは、今から約2年前。偶然耳にした“Sound Check Baby”を聴いて、えも言われぬ感動を覚えたことがきっかけだ。当日話した内容についてはこちらの記事に詳しいが、少しでもインタビューの間が空くと、その日のスタジオ練習の反省会をしたり、次のライブに向けてアイディアを出し合ったりと、とにかく「俺たちは本気で売れてやる!」という強い気概を感じたのが印象的だった。

以降も彼らは歩みを止めることなく、ファーストアルバム『私たちいい子で信じる力を散々使って生きている』やEP『DNA STATION』といったリリースを重ね、満を持して生活拠点を島根から東京へと移した。そして今回新作シングル『HEARTBEAT』を携えて、更なるDNAの増幅のため全国行脚に繰り出すに至ったのである。大阪の対バン相手として選ばれたのは、全国規模で絶大な人気を誇るネクライトーキー。島根の大学祭で共演したのがそもそもの始まりだそうだが、今回ツアーを開催するにあたってネクライトーキー側にコンタクトを取ったところ、快諾に至ったとのこと。ライブのMCで朝日は「DNA GAINZ、めちゃくちゃ格好いいんですよ」と語っていたけれど、憧れの相手に依頼をし、またその側もバンドの本気度を評価してOKする……という横の繋がりで動く関係性は、本当に凄いなと。

 

主催側がラストなので、先行は必然的にネクライトーキー。水滴や鈴、炭酸水など様々な音がサンプリングされたSEに乗せてもっさ(Vo.G)、中村郁香(Key.Cho)、カズマ・タケイ(Dr.Cho)、藤田(B.Cho)、朝日(G.Cho)の順に登場すると、1曲目に披露されたのは“魔法電車とキライちゃん”。至近距離で鳴らされる爆音が迫ってくる衝撃はもちろん、各所にダダダダっと全員が合わせて音を鳴らす場面もあり耳が心地良くなる感覚にも陥る。一方バンドメンバーは早くも前傾姿勢での演奏を展開していて、全編通して抜かりなく進む彼らのスタンスを体現しているようにも思えた。

ニューEP『モブなりのカンフー』を携えて全国ツアーを控えているネクライトーキー。一方でこの日のセットリストは昨年リリースしたアルバム『TORCH』から多くが選出され、それらを先述の“魔法電車とキライちゃん”と“ティーンエイジ・ネクラポップ”の石風呂(朝日のボカロP名義)楽曲がサンドイッチする珍しい作りに。なお余談だが、“北上のススメ”が海外を中心にバズを広げたためかフロアのファンの約2割は海外勢で、楽曲が始まった瞬間にフェスレベルの歓声が上がっていたのも特徴的だった。

もっさが高らかに歌い上げたロックアンセム“bloom”、全員が左右に頭を動かしてリズムを取った“北上のススメ”、朝日がトレモロアームでギュイーンと鳴らす一幕が印象深い“悪態なんかついちまうぜ”と続き、ここでこの日初の長尺のMCへ。先程まで鬼気迫る演奏を繰り広げてきた朝日は一転、ボソリとトーンを落としつつ「DNA GAINZ……最近めっちゃ好きなんすよ。なんかこう、渦みたいなエネルギーを感じるというか」とベタ褒め。続くもっさは「初めて対バンをやったのは島根の大学祭で。その時に『凄いバンドがいるな』と思っていたんですけど、あれから1年後に私たちの地元の大阪にゲストで呼んでもらって。ありがとうございます」と感謝を述べる。しかし一度トークが停滞するとフニャフニャになるのはネクライトーキーらしさで、以降はもっさがポツポツと話すも、そのたびに空白の時間が到来。耐えかねた朝日が「え?泣いてる?」とボケたり「泣いてへんよ!何で?」ともっさがツッコんだり……と紆余曲折ありながら、次なる楽曲“涙を拭いて”に進んでいくのだった。

この日の1時間セットは先述の通り、彼らのキャリアの中でも比較的マイナーな楽曲が多くドロップされた。とりわけライブ然としたパワーを感じたのは、サイケ楽曲の“浪漫てっくもんすたあ”。リズミカルに《不思議な気持ちになったわ ずっとムカついてたぜ》と歌われる開幕から、中村のキーボードと朝日の飛び道具的ギターが牽引しながら進む様は一見カオス。ただどこを切っても息がピッタリ合っている……という不思議な面白さがあり、キャッチーなサビで盛り上がった瞬間には「これこそネクライトーキーだなあ」などと思ったり。ふと周りを見ると爆笑している外国人や、腕を振り上げるスーツの男性など様々で、強い求心力を感じたのは個人的にこの一幕だった。

“こんがらがった!”を終えると、ここで再度のMC。「ライブで、同期(パソコンから様々な音を出す手法。音数が多くライブで再現不可な際に使われることが多い)を使うバンドがいるじゃないですか。いろんな意見があると思うんですけど、僕はそういうバンドは……嫌いです。でもDNA GAINZは全部自分たちの楽器で人力で再現してて、そこに矜持を感じます」と朝日が語り、「前回は大学祭で野外だったんですけど、今日は室内なので。どんな感じのライブになるか楽しみにしてます」ともっさ。改めてDNA GAINZの音楽に対して評価を告げると、こちらもまた「これ、ミャクミャク?何かぐにゃぐにゃしてる……」とPangeaのステージの背景をいじり倒し、「ネクライトーキーで一番まっすぐな曲やっていいですか!」と“ちょうぐにゃぐにゃ”、新曲の“モブなりのカンフー”をドロップする彼らである。

そしてこの日最も盛り上がったのは朝日が「ファーイブ!」と叫ぶのを契機に、全員のカウントダウンで始まった代表曲“オシャレ大作戦”。ジャン!と鳴るサウンドに合わせて正拳突きをするもっさ、サビはもちろん大合唱……と印象的な光景が広がり、もっさが「ドラムス、カズマ・タケイ!」「キーボード、むーさん!」と促してのドラムとキーボードソロでは前方のファンが何を示し合わせるでもなく中腰になり、各自のソロを見やすくしていたのも面白かった。ちなみにサビの《渋谷でへヘイヘイ》はライブ会場に合わせて変更されるのだけれど、今回は《アメ村へヘイヘイ》でした。

これまでネクライトーキーのライブは基本的に“遠吠えのサンセット”で締め括られることが多く、実際これまで僕が参加した数あるライブでも例外なくこの楽曲がラストだった。けれども「最後の曲です!」ともっさが叫んで始まったのは“ティーンエイジ・ネクラポップ”!よもやの選曲に驚く我々をよそに、楽曲は凄まじい勢いで進行。当時20代でボカロP・石風呂として活動していた朝日は、若い頃の葛藤からこの楽曲の歌詞を《例えばここでもし 僕の歌がもし 突然流れ出したとして/この中の何人が足を止めてくれる 考えたくないんだけど》と記したが、ネクライトーキーがセルフカバーをする形で今、ここまで多くの人に聴かれていることには思わずグッと来たりも。集まったファンをひとり残らず笑顔に変えたネクライトーキー、最後は「次はDNA GAINZです!」ともっさが叫んで、約1時間のライブを完璧に終えたのだった。

【ネクライトーキー@心斎橋Pangea セットリスト】
魔法電車とキライちゃん (石風呂セルフカバー)
bloom
北上のススメ
悪態なんかついちまうぜ
涙を拭いて
あべこべ
浪漫てっくもんすたあ
こんがらがった!
ちょうぐにゃぐにゃ
モブなりのカンフー
オシャレ大作戦
ティーンエイジ・ネクラポップ (石風呂セルフカバー)

 

ネクライトーキーが場を完全に温めたところで、次なるバンドはDNA GAINZ。朝日も先程のMCで彼らが同期を使わないことに言及していたが、セットが組まれるにつれサンプラー、拍子木、シェイカー、チャフチャスといった楽器が様々に配置されていく。その様を見ていると「本当に全部人力なんだなあ」と実感するし、今や同期を使えば何でもCD音源を再現出来るライブシーンで、このスタイルに行き着いた無骨さを評価したい気持ちにも駆られる。

BGMにThe 1975が流れ続ける空気に陶酔していると、緩やかに暗転。『DNA GAINZ』の声がサンプリングされたSEに導かれてステージに立ったのは、ながたなをや(Vo.G.Sampler)、はだいぶき(B.Cho.Per)、達也(G.Cho.Per)、宏武(Dr.Cho.Per)の4名で、既に盛り上がったフロアを見て一様にニヤリ。しばらくすると背後を向きながら恒例儀式となるポーズを取り、精神統一を図るながた。このライブハウスから発展途上……いや『発展土壌』の幕は上がるのだ。

ライブは昨年リリースした『DNA STATION』の“Loop!!!”から。《OK》や《YEAH》のレスポンス、体を揺らす、《負けない気持ち》の一節では多くの腕が上がるなど、ここ数年でかつて以上にライブ活動を関東圏に広げ、愚直に動員を増やしてきた彼らだからこそ培われた信頼感が早くも見えるフロアである。一方でDNA GAINZにとってはこの日が飛躍の一歩であるため、鬼気迫るライブになるかもと思ってはいたのだが、メンバー全員が本当に楽しそうに演奏していたのが印象的。「俺らここまで来たんだぞ!」という感慨深さすら感じたし、ふと真横を見ればネクライトーキーの朝日ともっさがフロアで真剣に彼らの演奏に目を凝らしていて、彼らの歩みが確かに伝わっている事実も感じた。

この日の彼らのセットリストは、現時点でのベストを見せ付ける形。これまでのライブでキーを担っていた楽曲はもちろん、試行錯誤を繰り返した新作からも多数披露され、何度も印象が変わっていくような千変万化なサウンドに身を委ねる1時間となった。また正直なところ今回の大阪会場の特性上、この場所をホームとするネクライトーキー目当てのファンが当初は多かった印象ではあった。しかしながらライブが進むにつれそうした人々を『喰っていく』感覚というか、1曲おきにどんどん観客を巻き込んでいったのが本当に凄まじかった。事実終演後、海外の人を含め『DNA GAINZ』の単語を様々な場所で聞いたし、ネクライトーキーもXにて全員が絶賛していた。それほど今回のライブが圧倒的だった証左だろう。

増し増しの音圧で駆け抜けた“PARADISE HELL”、ながたの絶唱が心震わせた“ラフラブ”と続き、次なる楽曲は新曲たる“HEARTBEAT”。サンプラーにより《Dancing Beat》のフレーズとながたのボイスパーカッションがループする幕開けから、ながたは左手でサンプラーのONOFFを切り替えながら、時にはギター、時にはゆらゆら踊ったりと目にも楽しい動きで盛り上げにかかる。それこそ世のバンドがなぜ同期を多用するのかと言えば、こうした忙しなさを効率化させた結果でもある。しかしながら『今のリアルの音』を具現化するこのスタイルは目にも楽しいし、これこそが彼らなりの美学なのだ。

“骨”を終えての初のMCで、ながたは「今回の『発展土壌』っていうタイトルは、地中にある微生物とか骨とか、いろんなものを取り込んで、地中から芽が出て。それがまた別のものに繋がって続いていくっていう。そういう思いで付けました」と語っていた。対バンイベントでバンドのコミュニティの種を撒き、我々ファンが曲を聴いて水をやり、やがて大きな飛躍として発芽する……。その土壌としてあるのがDNA GAINZであるし、そもそも土壌がなければ種や芽は育たないのだ。やはりここまで育ってきたのは、土壌自体がすこぶる良いものになっているのは間違いない。

熱量を保ったライブは、願いを乞うように希望を伝えんともがく“神龍”、飾らない気持ちを伝えた“巣ニナル”、再びサンプラーを多用した“愛の衝突”、と間髪入れず続いていく。途中力一杯ストロークしたためにながたのギターの弦が切れる一幕もありつつ、遂にかねてよりの代表曲“GOLD HUMAN”へ。中でも感動したのは冒頭に、本来であればながた単独で歌う《愛を知ってる 愛してる/愛の形はハートじゃない》のフレーズをファンが大合唱していたこと。宏武が絶叫しながらドラムを叩きまくる他、後半ではBPMが一段階上がりメンバーが前傾姿勢で熱を高めていくのも本当に素晴らしく、これらを指して「これまでの大阪で一番元気ですね。DNA GAINZ大阪支部、これからも宜しくお願いします」とながたが思わず語ってしまうほど、彼らの歩んできた道のりの大肯定がそこにはあったように思う。

最後に「アンコールありません」と淡々と告げたながた。正真正銘ラストの楽曲は“slow down town”だ。 ながたはニヤリと笑いながら「歌うチャンス」と投げかけつつ、我々ファンと共に印象的なフレーズの大合唱を響かせていく。このアルバムがリリースされた当時、おそらく彼らは島根から離れて東京へ出ることを決めていたはず。そう考えると《もうこの町は出るけんって言った 東京は思ったよりもキラキラしてなかったって》と語られる一幕はある種の逡巡を、また続く《簡単に言うなよ 自分で光らせるもの》とのフレーズは、どこまでも考え方次第でポジティブにもネガティブにもなれるという真理を、確かに表していてグッと来た。……ながたはライブの最後に「ここに集まった全員でDNA GAINZ!」と必ず叫ぶ。この日も例に漏れず同様の叫びが成されたけれど、SNSのバズや繋がりなど『どう売るか』の効率化が動員の近道とされる時代に、ここまで愚直に攻め続けた結果彼らのDNAが伝播していることを、呼応する大勢のファンから確かに感じ取った。感動さえ覚えた最高のライブだった。

【DNA GAINZ@心斎橋Pangea セットリスト】
Loop!!!
PARADISE HELL
ラフラブ
HEARTBEAT
Sound Check Baby

神龍
巣ニナル
愛の衝突
GOLD HUMAN
slow down town

【ライブレポート】ずっと真夜中でいいのに。『やきやきヤンキーツアー2 〜スナネコ建設の磨き仕上げ〜』@米子コンベンションセンターBiGSHiP

ずとまよ、遂に山陰へ上陸す……。今や音楽チャートの中心を担うずっと真夜中でいいのに。が次に選んだアクションは、過去最大となるホールツアー!都市部はもちろんのこと、これまで訪れていなかった地方都市含めた新たな場所を居住地とすべく動き始めた今回のライブが意味するところは、ずとまよ印の音楽畑を更に広げることが前提にあると見て良いだろう。

2020年は『やきやきヤンキーツアー』、2021年は『果羅火羅武ツアー』……。そして今回のツアータイトルは『やきやきヤンキーツアー2 〜スナネコ建設の磨き仕上げ〜』と題され、これまで荒ぶってきたヤンキーたちが定職に就き、建設現場で汗を流す未来の話をイメージして作られたものとなった。もちろんチケットは全公演が即完。当日は地元民のみならず、他県からも多くのファンが大集合。ガチャガチャを大量購入する人、全身を最新のずとまよグッズであしらった人(タイトルの通りグッズもヤンキーチックなものが多いので、端から見ると不良に見えるのが笑える)で早くも賑わいを見せる会場である。

会場に入るとどこからともなくトンカントンカンと謎の異音が鳴り響いていて、同じく会場に足を踏み入れた人はステージに目を向けて「何だあれ!?」と声を上げている。ふとステージに目を向けるとびっくり仰天、そこにあったのはまさしく建築現場。子供横断注意の黄色い立て札、片側交互通行の際によく見るヘルメットを被って旗を振る人の電光板……。更に上部には『㈱スナネコ建設』と書かれた看板とクレーン車までが鎮座し、何やら背後には円盤状の装置が据えられている。楽器類が置いてあるので辛うじてライブ会場だと分かるが、これまで多くのライブを観てきたつもりの僕でさえ「マジで何これ……?」と言ってしまうほどのカオス感。ただこの過剰なまでの舞台演出もまた、ずとまよのライブの恒例でもあるのだ。

興奮に包まれる我々をよそに、17時30分になると定時の合図のおぼしき建設現場のメロディーが流れ、作業が中断。従業員が次第に帰っていくと同時に、少しずつ暗転していく会場である。「一体どんな感じで登場するんだ?」と思っていたところ、どこからともなく鳴り響いたのはバイクのエンジン音。しばらくするとステージ袖からビカビカの暴走族バイクと共にバンドメンバーが登場し、メンチを切りながら各々の配置についていく。よく見るとバンドメンバー全員が髪をガッチガチに固めていて、顔にはアイシャドウ、服装は『永遠深夜』『研磨上等』などと書かれたレザーで不良チック。驚くべきはバンドメンバーの数であり、ギター・ベース・ドラムの他、パーカッション・キーボード・トロンボーン・トランペット、そしてお馴染みとなったOpen Reel Ensembleのオープンリール隊2名の、なんと総勢9人もの大所帯!そのあまりの密集ぶりに、最後に登場したACAね(Vo.G.Vibraphone.扇風琴)の存在が見えなくなってしまう程。

気になるライブの幕開けは、なんと既存曲のメドレー!重鎮バンドのファンサービスとして時たま行われることのあるこの試みだが、まだまだずとまよは若手筆頭株。更には『冒頭からメドレーをする』との極めて挑戦的な姿勢は、あまりに虚を突かれた代物でもあった。まずは気怠げな“JK BOMBER”で徐々に雰囲気を作っていくと、“こんなこと騒動”では管楽器の演奏が耳をくすぐる。かと思えば“ヒューマノイド”では大量のレーザービームが放射されまくる攻撃力抜群の演出が、“はゔぁ”では歪みエフェクターによる激烈ギター……。この至福の空間は実際の時間にして十数分だったと思うが、あまりの密度の濃さに既に興奮は最高潮に。フロアには早くも多くのサイリウムの海が広がっていた。

最新EP『虚仮の一念海馬に託す』が最もサウンドの振り幅を効かせた作品であること、冒頭からメドレーという衝撃的な展開を見せたこと、また「ライブで研磨を続けていきたいと思っています」という後半のACAねによるMCからも分かる通り、今回のツアーはずとまよがこれまで積み上げてきたライブの在り方を、よりブラッシュアップさせて見せる試みが取られていた印象が強い。ゆえにセットリストに関しても、これまでライブの定番となっていた“脳裏上のクラッカー”や“正しくなれない”といった楽曲が遂にセトリから外れたり、既存曲も新たなアレンジが加えられていたりと、これまで以上に予測不可能な代物となった。

中でも驚くべきは、その演出の豪華さ。元々ずとまよのライブはACAねの脳内にあるイメージを具現化するべく、ハチャメチャに金をかけたセットで知られる。今回も同じくその演出効果に驚かされることとなったのだが、大きな注目部は『背後の円盤』と『電光板』の2点。まず前者はクルクルと換気扇チックな円を常に描いているのだが、その色が千変万化する仕様で目にも楽しく、中央部は『JUMP!』や『勉』『愛愛』といった歌詞の一節を担ったりも。また後者については、基本的には親が子供の手を引いたイラスト(イメージは以下)が映し出されているのだが、サビになると歌詞をそのまま投影したり、このふたりの映像が片手にサイリウムを持った姿に変化したりと面白い。ちなみに楽曲の演奏時には、必ず演奏曲のタイトルが映し出されるようになっていたのも◯。総じて、ずとまよのライブに初めて来た人でも大いに楽しめる工夫が凝らされていた。なおこれまで通り素顔を明かさない特性上、ACAねの顔には特殊なブラックライトが常に当てられており、その表情は終始全く見えることはない。またバンドメンバーは今回のツアーを象徴してか、全員が髪を逆立てて特攻服を着ていて、コンセプト通りの流れだ。

メドレーが終わると、ここで一旦のブレイク。初めて口を開いたACAねはいつも通りのウィスパーボイスで「ここは高さ70メートル。われわれ株式会社スナネコ建設は、日夜高所作業を頑張っています。今はわれわれが作ったこの装置の、試運転中です……」とボソリと説明。その裏ではOpen Reel Ensembleのメンバーが火花を散らしながら円盤を調整している。ただACAねはその仕事ぶりには満足していないらしく、メンバーの吉田匡に「まっさん、そこちゃんと磨いといて」と檄を飛ばす場面も。その発言に対して全員が「ヘイっ!」と返事することから見ても、ACAねがこの会社のリーダー株であることは間違いないようだ。当の本人のACAねはと言うと、「コロナ禍で荒ぶっていたやきやきヤンキーたちは数年を経て、定職に就きました……。アタイはトップのACAねだよ。よろしくな」と自己紹介。今日はあくまでもこのキャラクターで行くようだが、その口調はかなりの棒読みで、タメ語と敬語が混在していたり、話しながらフフっと笑ってしまったりと、無理している感も垣間見えるのが面白い。

ここまでメドレーが続いてきたが、続く“馴れ合いサーブ”からまたひとつ熱量は上がり、更なる興奮へと導かれていく。人と人との複雑なコミュニケーションを卓球に例え、にわかにACAの怒りをも感じさせるこの楽曲。電光板にはヘルメットを被った作業員がブンブンと旗を振る映像が投映され、ファンもそれに合わせてサイリウムやずとまよしゃもじ(グッズ売り場で販売中)を振り回していく最高の空間だ。気付けば背後の円盤もカオスな色合いで発色し、その勢いの凄まじさから火花も散っている。そんなカオス極まりない中でACAねはサビのラストで「歌って!」と煽り、円盤の中心に浮かんだ『愛愛』を叫ぶ我々である。……かと思えば、なんと後半では横浜銀蝿の”ぶっちぎりRock‘n Roll“や“ツッパリHigh School Rock‘n Roll”を彷彿とさせる古風なギターサウンドが鳴り響き、背後の円盤の中心にはツイストを踊るヤンキーの姿がモノクロで投影!横浜銀蝿がそもそもヤンキーイメージの代表格バンドではあるが、今回のコンセプトがなければずとまよとの親和性はほぼゼロだった訳で……。このポップとコテコテロックの対比に爆笑してしまったのは、僕だけではないだろう。

「ヤンキー……凄いなって思います。自分のやりたいことを、一瞬で考えて一生懸命にやっていて。私はそんな考え方が、けっこう好きで」と、何度も『ヤンキー』という言葉をツアータイトルに用いてきた意味をゆっくり話してくれたACAね。ここからはまさしくヤンキーの猪突猛進的なサウンドが耳をくすぐる、ロックチューンの連続だ。まずは『爆裂注意』との危険信号が映し出された”残機“では、ACAねが1メートル半はあろうかという長いライトセーバーを暗闇の中で振り回し、《試したいわ》《絶体絶命な》といった歌詞の数々がモニターに映し出され、大合唱を作り出していく。

かと思えばずとまよの名前を広く知らしめた契機となった”秒針を噛む“では、サビ部分の《このまま奪って隠して忘れたい》のフレーズを全員の手拍子で歌う試みで大いに沸かせてくれた。これはコロナ禍で声が出せなかった際にライブで行われた手法の再現でもあるが、ACAねは当時の記憶を辿るかのように「左から右に」「右から左」とウェーブの手拍子を変則的に手動していて楽しそう。その後半には待ちに待った大合唱パートも用意されており、モニターに「歌う(Sing a Song!)」の文字とマイクが映し出されての大合唱。思わず涙腺が緩む気持ちにもなったが、当の本人は「じゃあ次は変な声で」「もっと変な声出せると思います」とツンデレモード。このアドリブ加減もまた、ずとまよのライブの魅力である。

アドリブと言えば、この日行われた一風変わったコーナーにも触れておきたい。着席指示が出たフロアをよそに、ステージに立ったACAねの元にスタッフが渡したのは巨大なサイバー銃。ふと見ると背後には左から青・黄・赤の風船が吊り下げられており、その真下に紐が伸びて標的が3つ置かれている。ここでACAねが「銃を撃って、割れた風船の中に次の曲が書いてあります。その曲をテーマに沿っていろいろ変えながらやっていきます……。どの曲になるか、どんな感じでやるかはバンドメンバーも知りません。お楽しみに」と今回の趣旨を説明、我々もそうだが、何よりバンドメンバーが「何やるの……?」と固唾をのんで見守っているのが新鮮だ。

結果選ばれたのは、黄色の風船。風船からタラリと垂れた幕に書かれていたのは、ずとまよ初期のバラード曲”Dear. Mr「F」”!普段ライブではほぼ演奏されないレア曲の出現に、にわかに盛り上がりを見せる会場である。残すはACAねが宣言していた『どんな感じでやるか』という部分だけだが、ビブラフォンの前に陣取ったACAねは含み笑いをしつつ「水木しげる(ゲゲゲの鬼太郎で知られる)さんの出身地の鳥取なので……。テーマは妖怪にします」と一言。ここだけ見ればまだイメージ出来るところだが、ここからがACAねによる無茶振りの時間。なぜならACAねはここからオープンリールの吉田悠・吉田匡のふたりに対し、鬼のようなアドリブを指示したのだから。以下、雰囲気的に抜粋。

「悠さんは目玉のおやじです。まっさんは息子なんだけど、最近は仕事もせずに引きこもりで……。目玉のおやじは本当は、息子に稼業を継いでもらいたい気持ちがある。でも息子はずっと断っていて、ひとりで生きていきたいと思っています。そこで目玉のおやじは『いつまでもそんなことしてちゃダメだ!』って言うんです。息子に。でも、……うーん、ちょっとそこからの流れは考えてみてほしいです。とにかくまあ、そんな感じで。……あっ、始まりは目玉のおやじの『おい、鬼太郎ー!』から始めます。あと最初はゆっくり妖怪っぽい感じで、後半に盛り上がる感じにしたいです。……質問のある人は?」

そう。何が面白かったのかと言えば、ここでACAねが語った台本があまりにも抽象的だったのである。すかさずまっさんが手を挙げ「えっと?俺が親に反抗してて、引きこもってて……?」と台本への疑問を投げかけていくも、ACAねは「うん……?うん。そんな感じで、あとは適当によろしくお願いします……」と完全にチョイスを委ねてしまう。楽曲全体をアドリブで決めているため難易度が激ムズなのは想像に難くないのだが、特にこのシナリオの主人公たるふたりはメチャクチャに焦っており(当たり前)、最終的にはワケの分からないまま本番へ。座って観ている我々も本当にイメージがつかないので、まるでお笑いの劇場に来ているようなワクワク感がある。

そうして始まった“Dear. Mr「F」”は盛り上がらないはずはなく……。ふたりが演劇(鬼太郎と目玉おやじがステージ上で大喧嘩)を全力で行う反面、背後のACAねは丁寧に歌い、それを聴く我々は笑いを噛み殺しながら歌に集中するという謎の三すくみ状態がとにかく面白い。また先述の『妖怪っぽい感じ』には“ゲゲゲの鬼太郎のテーマ”の冒頭部分を取り入れたり、ヒュードロドロといった効果音を鳴らしたりとそのアドリブ力にも圧倒された次第だ。そしてACAねのご要望通り、後半には楽器隊が全員で熱量高い即興セッションを取り入れることで盛り上がりを見せ、ずとまよ屈指のバラード曲がロックテイストに変化する一面も見せてくれた。一方でオープンリールのふたりは全力で動き回ったあまりハァハァ息を切らしていたのだけれど、本当に良くやってくれたなと……。

着席型になり、一旦ブレイクした会場。そもそも着席になること自体がレアなずとまよライブだが、紫の照明がバッと点いた瞬間、再び勢いを取り戻すのは信頼感の証。第二部の幕開けを飾ったのは今夏のフジロックにて新曲として披露された“海馬成長痛”で、オープンリールのビョンビョンと鳴るサウンドと、TV♡CHANYが制作したキャラクターたちがダンスを繰り広げる映像で一気にライブ色へ。またライブ定番の“彷徨い酔い温度”では、なんとBPMを曲中に変化させる新たな試みが。時に1.5倍速、時に0.5倍速とACAねがサイリウムを振るタイミングに合わせてどんどん曲の印象が変わっていく様は圧巻で、ラストの《ララララン》の大合唱さえもコントロールする作りには脱帽だ。同じくライブ定番の“お勉強しといてよ”に関しても、モニターに《焼き焼きだ》と《ヤンキーヤンキーだ》と今回のツアーを象徴する歌詞が並び、その都度演奏をピタリと止めて合唱を促すずとまよバンドである。

ハイライトは、誰もが待ち望んでいたであろうあの新曲。「やりたいことをやれなかったり、なかなか動けずに何日も経ったり。そんな瞬間がよくあります。でもそんな怠惰な時間っていうのは、実は生きていく上で大事なんじゃないかと思っていて……」と語ったACAねは「鼓舞ソングです……!」と締め括ってこの楽曲に遷移。曲はもちろん、現在絶賛放送中のTVアニメ『ダンダダン』主題歌にもなっている“TAIDADA”だ。矢継ぎ早に繰り出されるリリック、密度の濃いサウンドに翻弄されつつ聴こえてくるのは、辛い中でも前を向こうとする日陰者の思いだ。《全身演じきってよ全開でその程度?》というフレーズ含め、怠惰な自分を鼓舞するように楽曲はとてつもない速さで駆け抜けていく。MVでも同様のシーンがあったけれども、サビでは全員が早くも《せい》部分で腕を挙げたりジャンプをする連帯感もあり、いつの間にかステージ袖からは着ぐるみ型のうにぐりくん(ずとまよ公式キャラクター)も登場!もはや何が行われているかも分からないカオスな状況で、楽しみを分かち合っていく。

いつしかライブはクライマックスへと突入。もはや恒例となったサビ部分のジャンプが、モニターの『3 2 1 JUMP↑』の案内と共に興奮を高めた”あいつら全員同窓会“、アッパーなサウンドが鼓膜を揺らした“勘冴えて悔しいわ”。そして多くのファンが「どの曲を最後に持ってくるんだ……?」とワクワクしていた中で最後に選ばれた楽曲は、ライブアンセムたる“ミラーチューン”!ACAねが「みらみらミラーチュン?」と呟いて始まったこの楽曲、開始時から上部を指差し続ける彼女の動きに注目していた我々である。だが《3 2 1 ミラーチューン》と歌われる開幕と共に、上部にミラーボールが出現!更にはステージにも至る所に小型のそれが設置されており、一気にディスコの雰囲気に浸る会場である。照明もミラーボールも、更には背後の円盤も含めてビッカビカに光りまくる中、まさしく鏡に映せば赤面必至の各々のダンスで楽しむファンの構図が美しい。またモニターには《yey》の文字が頻りに映し出されていて、その表示に合わせてVサインをする人、拳を突き上げる人……。それぞれの楽しみ方で最大限の盛り上がりを体現していて思わずウルッと。一方で演奏が終わると万感の拍手に迎えられた彼らは「ありがとうございました。ずっと真夜中でいいのに。でした……」と呟くのみに留まり、そそくさと退散するその対比も最高だった。

“ミラーチューン”が終わると、すぐさまアンコールを求める音が鳴り響く会場。ただ他のライブと違うのは、ファンが鳴らすのが手拍子ではなく大半がしゃもじであるため、その音が爆音なこと。バシバシと叩かれる音に陶酔していると、オープニング同様またもバイクに乗った形でずとまよメンバーが再度呼び込まれる。着席状態にあるファンを眺めつつ、一方のACAねは「家にいると、いろんなことを考えます。良くないことも……。でもライブをやるたびに楽しくて、ライブに来てくれる人たちのお陰で生きてるなあって、本当に思います。いつもありがとうございます……」とこの日一番のストレートさで心境を語る。インタビューもほぼなく、楽曲内ではミステリアスな表現に終始するACAねの言葉がこうして直接届くのも、やはりライブならではだ。

以降は含みのある柔らかな楽曲“虚仮にしてくれ”をファン全員が着席した状態で鳴らしつつ、対照的に「行けんの!?目ぇ覚めてんの!?」と無理矢理ヤンキー風にファンを立ち上がらせた“嘘じゃない”を続けて披露し、アンコールの緩急を完璧に支配したACAね。突然リコーダーの演奏が鳴り響くと、次なる楽曲はライブアンセムのひとつである“正義”。ちなみに毎公演ごとにイントロが自由化することでも知られるこの曲。米子公演ではリコーダーのイントロはGRe4N BOYZの“キセキ”になり、ACAねは歌詞を思い出しつつ《2人寄り添って歩いて/永久の愛を形にして》と熱唱。《アリガトウや ah/愛してるじゃ まだ》の『ah』と『まだ』部分ではファンにマイクを向けてレスポンスさせる一幕もあり、心底楽しそうなACAねである。

そうして鳴らされた“正義”は、言わばずとまよの集大成とも言える盛り上がりを記録。歌詞の複雑さ、サウンドの振り幅……。また知らず知らずに踊ってしまう根本としての楽しさが、この楽曲には全て詰まっていたように思う。様々な演出もこの日一番で、背後の円盤はギュルギュルと高速回転しているし、照明はビカビカ。更にモニターには《近づいて遠のいて 探り合ってみたんだ》といったフレーズの数々がまるで「歌ってくれ!」と言わんばかりに発色し、気付けば全員が飛び跳ねる最高の空間に変貌していた。その中心で歌うACAねはラスサビ前に「マブダチだーっ!」と叫んで完全燃焼を図っていて、ふと僕の隣を観ると女性が泣きながら「ワー!」と満面の笑顔で踊り狂っていた。本当に素晴らしい光景だったと思う。

これで終わりかと思いきや、最後に駄目押しするのがこの日のずとまよ。「スナネコ建設のエンディングテーマです。勘ぐれいヤンキーバージョン!」と語ってラストに選ばれた楽曲は“勘ぐれい”で、ソウルフルなベースから後半に向けて演奏が激しくなるニューモードでの披露となった。最終部では色付き傘をさしたACAねが『ボンボボーン』のレスポンスもバッチリ決まり、最終部では色付き傘をさしたACAねが「天上天下、真夜中独尊……」と呟いて上から雪が落ちてくるという、まるで時代劇のような美しさでもって、楽曲は終幕。

そしてこの日のクライマックスは、メンバーが全員ハケた後、ACAねがバイクに乗って去っていくという格好良い演出!……のはずが、ここでまさかのトラブル。バイクのエンジンが全くかからないのだ。何度もエンジンをかけようとするACAね、ただその本体はびくともしない対比にファンが爆笑していると、袖から焦ったスタッフが大集結。最終的にはスタッフ総出でACAねの乗ったバイクを押し、ACAねが「ありがとうございます……。すいません……」と小声で謝りながら、BGMではブオーン!パラリラパラリラ!な爆音が鳴るという、爆笑必至の思わぬラストとなった。

振り替れば、ずとまよはデビュー当初から売れ続けてきたアーティストだ。ことライブだけを見てもデビューアルバム以降チケットがソールドアウトしない公演はないし、昨年のフジロックではトリ前のスロットで多くの音楽好きにもアピール。一方でアーティストにとって膨れ上がる声は、ともすれば大きなプレッシャーになる。「次はどんな凄いライブが観れるんだろう」「ずとまよのライブはやっぱり最高」……。今回のツアーは言わばそんな多くの声に後押しされての、巨大な代物だった。

しかしながら、結論から言えばずとまよは最強だった。新たな音楽性を模索した『虚仮の一念海馬に託す』を筆頭に、これまでの代表曲を惜しみなく投下した今回のライブは間違いなく過去イチを更新!また地方都市のホールツアーとしてここまでのクオリティのライブをする人も、今後一切現れないと思う。凄さを更新し続け、それが天井に達してもそこからまた上へと伸びていく今のずとまよは無敵である。本当に素晴らしいライブだった。記憶を消して、もう一度始めから観たいと思うほどの。

【ずっと真夜中でいいのに。@米子 セットリスト】
JK BOMBER (メドレー)
こんなこと騒動 (〃)
ヒューマノイド (〃)
はゔぁ (〃)
馴れ合いサーブ (〃)
残機
秒針を噛む
ばかじゃないのに
クズリ念
Dear. Mr「F」
海馬成長痛
彷徨い酔い温度
お勉強しといてよ
TAIDADA
あいつら全員同窓会
勘冴えて悔しいわ
ミラーチューン

[アンコール]
虚仮にしてくれ
嘘じゃない
正義
勘ぐれい