前回の記事に引き続き、今記事ではサマソニ大阪の2日目をレポート!この日の個人的な特徴はと言えば『洋楽フェスにも関わらず、観たアーティストが邦楽オンリー』という点。これは前編にも記した通り、コロナ禍でチケットを持っていたのに結局行かなかったアーティストが多かった、というのが最も大きい理由。それこそPerfumeやずとまよはファンクラブで取ったチケットを何度も破棄した(コロナ感染拡大のため)経験があったので、このチャンスは見逃せないと思ったのだ。Two Door Cinema Clubやブラー、Wet Legもめちゃくちゃ観たかったが、今回は我慢……。
ライブではお馴染みのキラーチューンはさておいて、セットリストの過半数を占めたのはニューアルバム『沈香学』から。そのうち新鮮味溢れる楽曲として位置していたのは“綺羅キラー feat. Mori Calliope”で、フィーチャリング相手の不在を自身のラップパートに置き換え、更には自己紹介がてらのオリジナルパートに変化させていたのは驚きであり、ライブ的にも力量を感じさせる代物に。
ここからはオーシャンステージへ移動し、セカオワことSEKAI NO OWARIを選択。思えばデビュー当初からセカオワはポップシーンの最前線を走り続けていて、何度もチケットを取ろうと思っても取れない状況が続いていたモンスターバンド。当然この日は最前列付近にはファンクラブ的ファン、後方には彼らの音楽を愛するミーハー含むファンが密集し、終わった瞬間にはブワーっとハケていった(つまり遠く離れたこのステージに、多くの人がセカオワのためだけに集まっていた)のが印象的だった。
猛ダッシュで会場に向かうと、ちょうど“Count Five or Six”が鳴らされている瞬間だった。小山田圭吾(Vo.G)、堀江博久(G.Key)、大野由美子(B.Syn)、あらきゆうこ(Dr)らの音楽は基本的に、MVを背後に投影させながら演奏するものだが、特筆すべきはそのサウンドが完全にリンクしていること。上に載せた“I Hate Hate”のMVで例えると分かりやすいけれど、彼らはポタッとインクが落ちた瞬間に一斉にドカンと音を鳴らす……というのを、本当に1秒の隙もなく叩き込んでいくのだ。これはライブというよりは完全に演奏技術の極みというべき衝撃で、次第に「俺は今なにを観ているんだ……?」とトリップする感覚にもなる。加えてこの日のコーネリアスは音が異常にデカく、体感的には同ステージの岡崎体育やずとまよの1.5倍くらいの音圧が出ていたように思った。
【Cornelius@サマソニ大阪 セットリスト】 Mic Check 火花 変わる消える Audio Architecture Another View Point Count Five or Six I Hate Hate Gum いつか/どこか Cue(Yellow Magic Orchestraカバー) 環境と心理(METAFIVEセルフカバー) あなたがいるなら
Fear, and Loating in Las Vegas MOUNTAIN STAGE 11:00〜
シャトルバスを降りて猛ダッシュで向かったのは、マウンテンステージ。お目当てはもちろん、日本が誇るカオスロックバンド・Fear, and Loating in Las Vegas(以下ベガス)だ。まだ午前中で目も覚めきっていない時間帯、真裏ではポップに魅せるももクロとゆったり系のtonunの音楽が鳴っている。しかしながら今からでも高カロリーの音楽を求めている人は一定数いるようで、客席にはかなりの人が。中にはタンクトップ姿で準備万端な人までいる。
なお今回の選曲に関しては、新曲はほぼ撤廃。更には“Rave-up Tonight”や“Return to Zero”といった鉄板曲も演奏されず、代わりにこれまで様々なフェスで培われてきた無敵セットリストを凝縮して見せる、ある意味では数年前の彼らにカムバックした流れだったのは驚いた。この数日前に行っていたロッキンのライブとはセトリを大幅に変えていた事実からも、彼ら自身が自分たちの音楽に自信を持ち続けているのだろうなと。
アニメ主題歌の“Chase the Light!”と“Let Me Hear”を終え、続く“Crossover”では早くもSoとMinamiがステージに突入!もみくちゃにされながら観客の腕を支えにして叫びまくる2人を観れば、ファンならずとも虜になったはず。他にも流れが一気に加速した“Just Awake”では認知度の高さも相まって大きな合唱が巻き起こるなど、思わず「ロックバンドの良さってこれだよなあ」とじんわり来たりして。
最後の楽曲は初期曲“Love at First Sight”。どこか懐かしいディスコサウンドに乗せてSoは「飛べ飛べ飛べ飛べー!」と焚き付け、Taikiに至っては尻をモニターに大映しにしたりとやりたい放題。最後には改めてライブへの思いを叫びつつ、灼熱の30分は幕を閉じたのだった。おそらく長年のファンでさえもここまでキラーチューン連発のベガスは初だったろうけれど、初見の観客には大いに刺さったようで、終演後にはあちこちで称賛の声を耳にした。さすがだ。
【Fear, and Loating in Las Vegas@サマソニ大阪 セットリスト】 Acceleration Chase the Light! Let Me Hear Crossover Just Awake Party Boys Love at First Sight
ステージに野村陽一郎(G)、Kota Hashimoto(B)、elley YHEL(Cho)、藤本藍(Key)、神宮司治(Dr)らサポートメンバーが顔を揃える中、肩先からをバッサリカットした涼しげなmiletが登場。オープナーに選ばれたのはまさかの『鬼滅の刃』主題歌の“コイコガレ”。milet史上最もアッパーな楽曲を、初っ端に持ってくる予想外な展開である。miletは体を前後左右に動かしながらのボーカリスト然としたパフォーマンスで、視覚的な「これ凄い……」感を体現、フィーチャリング相手であるMAN WITH A MISSIONパートは録音だったものの、フェスならではの開幕には心底驚いた。
以降は“Living My Life”や“Hey Song”といった新曲群をドロップ。大半の観客にとってはほぼ初聴きながら、どんな状況でも引き込んでいく様はさすが。特に最前列にいる長年のファンにとっては思うところもあったようで、miletはファンのひとりに「泣かないでー」と語りかけながら、目から人差し指を滑り落とすジェスチャーもする場面も。かと思えば、熱中症と思わしきファンを察知して「なんか!そこ!」と真剣にスタッフにSOSを出したりと、本当に彼女自身が『ファンが応援してくれているからこそ自分がいる』と痛感しているからこそ出来る、無意識的な行動にグッときた。
セットリストはこれまでにリリースした『W.L.』と『BURN THE EMPIRE』の2枚のアルバムが中心。明らかにインディーロックに寄った前者と、少し雰囲気を変えた後者をほぼ交互に演奏する流れは最良だったし、飽きさせない工夫もあって良かった。彼らはあまり話すタイプのバンドでも、楽曲ごとに毛色が違う曲調でもないので、そうした意味でも『音楽でバランスを取る』というのは上手い流れだなと。
そして楽曲を聴いていくうちに思ったのは、彼ら自身がほぼノンジャンルで音楽を好む雑食嗜好ということ。どの楽曲も確かにロックにしろ、ダークだったりモダンだったり、ところどころ振れ幅がある。中でも『BURN THE EMPIRE』からの楽曲はその極みと言って良いもので、若手としてここまで広い視野で音楽に触れるのは末恐ろしいとさえ思った。それこそ、今回のサマソニで日本の音楽に触れることでも、また新たなインスピレーションに繋がるのかもしれない。
翻って、今回のリアムである。既に多くのファンが断言しているように、この日のライブはまさに最強無敵、我々が抱くリアム像を体現した最高のコンディションだった。ライブが始まる前にも関わらず大勢のファンが“Don't Look Back In Anger”を合唱する中、OasisのSEである“Fuckin‘ In The Bushes”が流れると、そこら中で怒号にも似た歓声が上がる。モニターに映し出されたのは我々のよく知るリアムその人で、『ロックンロールスター』『伝説』『神のような』といった超過大評価(ちなみにリアムはこうした大きな発言を頻繁にする)、と共に、往年のライブの様子が投影される。そして『OSAKA JAPAN』『SAT. 19TH AUG』と表示され、袖から本物のリアムが登場した瞬間、既に号泣状態。この瞬間を何年も待っていたんだなあ……。
続いての楽曲は、これまたOasisの最強曲Rock 'N' Roll Star”。これはステージ上にも同じ文字で書かれているものだが、リアムにおける「俺こそがロックンロールスターなのだ」という絶対的な思いを表している楽曲だ。リアムはあの特徴的な歌唱法でひたすら声の爆弾を落としまくり、空いた両手ではマラカスとタンバリンをシャンシャンしている。……逆に言えば彼のライブの見所はこれで完結するのだけれど、たったこれだけのことが、リアムから1秒も視線を外させてくれない魅力になっている。
ちなみに今回のステージにはリアム以外にギター2名、ベース、ドラム、キーボード、コーラス隊2名という大所帯だったが、“C‘mon You Know”からの2曲は予期せぬスペシャルゲストが登場。ステージの袖付近から出てきたドラムに座っていたのは、なんとリアムの実の息子であるジーン・ギャラガー!なお余談だが、この後のMCでリアムは「ジーンの野郎が昨日アルコールを飲み過ぎてよ。前から後ろからマジでヤバかったんだぜ」と暴露していたのは爆笑ポイント。元々英語の訛りが凄いリアム、日本人の我々的には言葉が分からない部分もいくつかあったのだけれど、リアムは「お前らマジで俺の言ってる意味分かってんのか?もっかい言うぞ。あいつが、酒を、飲み過ぎたんだよ。昨日な!」と噛み締めるように語り、ファンを焚き付けるのも最高。あと、ステージ袖にリアム&ノエルの兄であるポール・ギャラガーさんもいた気がするんですが、気のせいですか……?
また、リアムのソロ曲も完全に受け入れられていたことも重要だ。この日披露されたソロ曲は、リアム像を完璧に体現した“Wall Of Glass”、讃美歌のようなコーラスから始まる新境地“More Power”、Oasisファンにはたまらないロックアンセム“C‘mon You Know”と様々だったが、圧倒的な盛り上がりを見せたのは“Once”。リアムが歌えばもうそれでOKというか、全員が歌いまくる環境がソロでも暗黙の了解として伝わっているのは、本当に素晴らしい。それでいてOasis曲の前には「お前らの好きなOasisの曲だぜ」とか、「Oasis好きなやついるか?」と聞いてくるリアムを観ていると、本当に再結成したいんだなとも。個人的に面白かったのは、リアムがでっかく映されたネブワース公演のアナログレコードを掲げるファンに、リアムが「おっ、それ俺じゃねえか。イケメンだよな」みたいなドヤ顔で指差していたシーン。自信過剰の塊のような人だが、これこそがリアムである。
【Liam Gallagher@サマソニ大阪 セットリスト】 Fuckin‘ In The Bushes(SE・oasis) Morning Glory(oasis) Rock 'N' Roll Star(oasis) Wall Of Glass C‘mon You Know Stand By Me(oasis) Roll It Over(oasis) More Power Diamond In The Dark The River Once Wonderwall(oasis) Champagne Supermova(oasis)