キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

映画『僕に、会いたかった』レビュー(ネタバレなし)

こんばんは、キタガワです。


『田舎を舞台にした映画は動員が伸びやすい』という話を聞いたことがある。


理由は単純で、「地元が取り上げられてるなら観に行くか」と思わせられるからである。もっと言えば地元のローカルテレビや地方新聞、更には駅や施設にビラを適当に撒いていれば、そこに暮らしている人々に容易にアピールができる。そうなればそれこそ田舎……特に高齢者が多い県などでは「ちょっとした暇潰しに」と映画館に足を運ぶきっかけを作り出せるのだ。


こうした実情を踏まえて僕の考えを語らせてもらうと、僕はこうした風潮を非常に嫌悪している。なぜなら上記の『田舎を舞台にすれば何でも売れる』という考えでは、圧倒的に通常の映画よりも質が落ちるからだ。


映画を作る以上、その根底には絶対に『面白さ』がなくてはならない。そこをおろそかにしてしまうのは話が違う。要は「作るならちゃんと作れよ!」と思ってしまうのだ。「地元民が観るからパパっと作りました」ではなく、いかに地元民以外にアピールできるか、いかにリピーターを増やせるかが課題になって然るべきで、膨大な愛情を注いでこそ作られるもの、それが映画なのだ。


……とまあ大仰に書いてはしまったが、ここからが本題である。

 

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今回鑑賞した『僕に、会いたかった』は、僕が20年以上に渡って暮らし続けている地元・島根県を舞台にした映画である。


予告編にも記載があるので明言しておくと、タイトルにある『僕に会いたかった』という意味深な言葉は、ズバリ記憶喪失を表している。


主人公は記憶を無くした状態で島根県・隠岐の島町で生きる漁師。記憶を無くしつつも懸命に日々を生きる彼だが、実は家族にはとある秘密があった……といったストーリー。


隠岐の島町に行ったことのある人ならお分かりだろうが、正直に言って何もない辺鄙な場所だ。コンビニもカラオケもほとんどない。あるのは広大な海ばかりという『THE・島根』を体現したような場所、それが隠岐の島町なのだ。


そんな隠岐の島町の魅力をふんだんに詰め込んだ映画、というのは事実ではあるのだが、内容に関しては正直「うーん……」といった感じが否めなかった。


登場人物がそれなりに多く、かつそれぞれのキャラクターにスポットが当たることはまだ良いとしても、その展開が起承転結のうちの『転』あたりで止まるため、消化不良のまま次に進むのが気になった。そのキャラクターたちが主人公の行く末を大きく左右するものならまだしも、特に関わりのないまま続行するため若干テンポに乱れが。


極めつけは(詳しくは書かないが)本編のラスト。ハンドルを急旋回するかの如く突如始まる某所は、明らかなお涙頂戴が透けて見えるようだった。逆に言えばベタな感動ストーリーが好きな人向けの映画と言える。


この映画をオススメするならば『恋愛映画くらいしか観ない人』ということになるのだろう。おそらくは映画を月に何本も観るようなコアな映画ファンにとっては、内容がいささかお粗末か。


地元民を一切傷付けない隠岐の島町PR映画としては100点の出来だとは思う。しかしながら高い料金を支払うひとつの日本の映画として『君の名は。』や『カメラを止めるな!』と同じ土俵に上げて比較して見ると、内容のスタンダードさや撮影自体のチープさが露骨に分かるような、そんな映画だった。

 

ストーリー★★☆☆☆
コメディー★☆☆☆☆
配役★☆☆☆☆
感動★★★☆☆

総合評価★★☆☆☆
(映画.com平均評価・星3.7)

 


TAKAHIROが涙…『僕に、会いたかった』予告編

ロックバンドにおける『推し』の是非を問う

こんばんは、キタガワです。

 

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僕はロックバンドが好きである。ギャリギャリのギター、心臓に響く低音ベース、地響きの如く打ち降ろされるドラム……。最初に初めてロックに触れたのは10年以上前の出来事だが、まるでハンマーで頭をぶっ叩かれたような衝撃があった。


かつてイギリスのパンクバンド、イアン・デューリーが発した「セックス・ドラッグ・ロックンロール」という言葉の通り、最大限のエクスタシーを感じることができる最高の音楽。それこそがロックンロールなのだ。


そんなロックだが、既存の音楽に飽き飽きした知る人ぞ知る音楽であったのは遥か昔。今ではロックは限りなく大衆向けのものとなった。爽やかな楽曲や耳馴染みの良い四つ打ちロックが台頭した昨今は特にだが、ポップスとさほど変わらない位置付けとなっている。


BUMP OF CHICKEN。RADWIMPS。ヤバイTシャツ屋さん。クリープハイプ。Back Number……。数十年前ならいざ知らず、現在の『ロック』はオリコンチャートにも当然のように名を連ね、街中でも頻繁に流れるようになった。


今回はそんな、ロックバンドについての話。


つい先日のことだ。道を歩いていると、進行方向に大量のラババンを鞄につけた女性を見掛けた。上の画像はイメージだが、おおよそ似たような格好である。


おそらく大半の人は「うおスゲえ」と感じるだけでその場を立ち去るだろうが、その女性と同様に足しげくライブに足を運ぶ身であれば、ラババンがどのようなバンドのものかは一目で分かる。


そのラババンに記載されていたのは、僕が好んで聴いていたバンド名だった。しかもライブも何度か参戦経験もあり、ライブレポートも書いたことがあったほど、自分にとって日常を彩っていたバンドだった。


なので必然的にそのバンドへの溢れんばかりの愛情が、『見知らぬライブキッズに声を掛けてしまう』という歪な形となって表れたのであった。


「あの……○○好きなんですか?」


僕が発した第一声は、およそ『音楽好きに声を掛ける』点においては教科書通りの一言だったように思う。早くも僕の脳内シミュレーションでは、続く「そうです!あなたも好きなんですか?」→「何の曲が好きですか?」といったキャッチボールを、鮮明に描き出していたほどだった。


しかし「○○好きなんですか?」に対する返答は、僕のイメージとは大きくかけ離れたものだった。


「はい!あなたは誰推しですか!?」


一瞬、思考が止まった。こいつは何を言っているんだ……。


話を深掘りしてみると、その人が言わんとしていることは何となく分かった。要は「バンドメンバーの中で誰が好きですか?」ということを言いたかったらしい。ちなみに彼女はベース推しで、ぱあっと弾ける笑顔と天然なキャラクター性が、主に推す理由らしかった。


夏のライブツアーにも参加するそうだ。現段階で5ヶ所行くことが決定しており、ベースの顔を見ることを思うと夜も眠れない、といった話をしてくれた。後にスマホの待ち受けも見せてくれたのだが、ベースがケーキを口一杯に頬張っている写真だった。


……彼女と別れて視界から消えたあと、僕は申し訳ないが「お前マジか」と思ってしまった。もちろん悪い意味で、である。


……さて、ここで一旦冷静になって考えてみよう。


まず大前提として、彼女はベースの人のことが好きなのだろう。おそらく恋愛対象と言うよりは「綾野剛くんや神木隆之介くんカッコいいな」というような憧れと羨望の類いだろうが、それでもあの目は本気だった。彼女がベースを見る目は『恋する乙女』を地で行くような、そんな熱い視線だった。


思い返せば、そのバンドのメンバーの顔面偏差値は全体的に高い部類だ。整った顔立ちをしているし、インタビューや音楽番組での言動もイケメンという他ない。世間一般の『イケメン像』はあんな感じなのだろうな、とも思うほどだ。


しかしながら僕は思うのだ。「本当にそれでいいの?」と。


そう考える理由はひとつで、ミュージシャンは音楽ありきで評価されなければならないからである。


例えばアイドルであれば、必ずしも楽曲が良い必要はない。売りになるのは主に『顔と性格』であるからだ。メディア露出や週刊雑誌の表紙などでアイドルが頻繁に取り沙汰されたり、チェキ会や握手会が開催されることからも、それは明らかだろう。


だが逆にバンドマンは、アイドルのような売り方は完全にタブーであると思うのだ。別に誰が何を好きになろうがそれぞれの自由ではあるが、その先頭には絶対的に『楽曲の良さ』がなければならない。そのため今回のような『顔目当て』というのは良くない。否、あってはならないのだ。


『曲が良ければファンが付く』。バンド音楽が多様化した現代でも、ここだけは譲れない一線だ。それを上回る勢いで『イケメンだから』や『ファッションがカッコいい』、『天然なところがカワイイ』などといった個人のフィルターを介してしまえば、ちゃんちゃら訳が分からない。それは言わばバンド音楽の冒涜である。


本当にそのバンドの曲が好きで聴いている人には、僕は何も言うことはない。しかし悲しいかな、音楽をほとんど見ず(聴かず)に「○○のファンです!」と吹聴して回っている人も一定数いるというのは、純然たる事実なのである(YouTuberの音楽活動などはその最たる例だと思ったりもする)。


おそらくはそういった層もバンドが食べていく上では必要な部分だとは思うが、そうした事も踏まえて僕は声を大にして言いたい。バンドは音楽ありきであると。それに勝るものなど一つとしてない。もしも『音楽ありき』を上回るものがあるとするならば、そのグループはもはやミュージシャンではない、他の何かだ。


最後に今一度、読者貴君に問いたい。


あなたは本当にそのバンド、好きですか?

[後編]辛い、死にたい、鬱状態のときに聴きたい音楽10選

こんばんは、キタガワです。


今回は前編の続き。『辛い、死にたい、鬱状態のときに聴きたい音楽10選』と題し、残り5曲について書き記したいと思う。


それではどうぞ。

 

 

生きていたんだよな/あいみょん

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「今ある命を精一杯生きなさい」なんて綺麗事だな
精一杯勇気を振り絞って 彼女は空を飛んだ

あいみょんの音楽は、世間一般的には『恋愛ソング』と見られることが多いように思う。


確かに彼女の名をほしいままにした『君はロックを聴かない』や『マリーゴールド』といった楽曲群はその傾向が強いが、この楽曲に関しては恋愛ソングとは絶対に呼べない代物。言うなれば『あいみょん流・社会風刺的メッセージソング』と言えるだろう。


テーマは飛び降り自殺。突然の事件に集まる野次馬も、「ドラマでしか見たことなーい」と語る声も。まるでありふれた日常に落とされた非日常の光景を楽しんでいるようにも見える。しかし中には自殺者へ感情移入し、悲しみに暮れる人もいるかもしれない。


だが「希望を抱いて飛んだ」との一文からも分かる通り、自殺を決行した少女にとってはこれこそが何度も考え抜いた果ての最善の策であり、最期の希望の光だったのである。


そしてそれは今死にたいと感じているあなたにとっても同様だ。もちろん死んだら現在の苦しみから解き放たれ、絶対に楽になれる。しかしそれは考えうる限り最悪のバッドエンドであることもまた、揺るぎない事実なのだ。


『生きていたんだよな』と過去の事柄として名付けられたこの曲は、死にたい人間が未来を生きるためにも聴くべきなのだ。

 


あいみょん - 生きていたんだよな 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

 

 

main actor/美波

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少しだけ 少しだけ 少しだけ 少しだけ
1畳でも 居場所が欲しかった
僕だけが 僕だけが 僕だけが 僕だけが
誰かの1番でありたかった

今回の記事のタイトルにあるようなネガティブな気持ちを内包しながら日常生活を送っている人は、自己顕示欲の高い人間であると思っている。


自分の考えを認めてほしい。話を聞いてほしい。一緒に誰かと楽しく過ごしたい……。そうした理想と、周囲に交われない現実の狭間で揺れながら過ごしているはずだ。


とどのつまり、ストレスを感じないハッピーな生活というのは、自身の圧倒的優位性でもってのみ成し得る。いくら性格が悪いと言われようとも、自己嫌悪に陥ろうとも。結局はそうした自分勝手な結論に達するのが必然なのだ。


ただひとつ問題なのは、そうした思いを徹底的に圧し殺しながら生きなければならない点だ。好きで孤独になっているのではない。社会が「そうしろ」と口煩く言うから孤独を強いられているだけで、本当はもっと自分を晒け出して生きていたい。そう。漫画の主人公やアニメのヒーローのように。


『main actor』は、そういった悲しき村人Cレベルの存在感しかない自分を説き伏せるための楽曲だ。貧乏クジを引き続ける背中を優しく擦るような包容力でもって、必ずや『あなたが此処にいる証明』を与えてくれるだろう。

 


美波「main actor 」MV

 

 

太陽4号/10-FEET

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卑しい美意識で 取り乱さないように
笑みを浮かべて つまらないや
心が冷めてる人は 本当の感動を知っています
今夜も眠れない人が たくさん居ます
ああ きっと居ます

大型夏フェス『京都大作戦』の発起人であり、日本ロックシーンを牽引する重鎮バンド。


アーティストというのはいくら全盛期が素晴らしかったとしても、長い年月が経過するうちに動員が落ち込むものである。では彼らがなぜ第一線で活躍し続けているのかと言えば、類い稀なるメッセージ性と熱いライブが大きな理由だ。


彼らはライブ中、全てを悟ったかのような朗らかな笑顔で「辛いこともあるけど、頑張って生きていこうな」という趣旨の発言を必ずする。加えて彼らの楽曲には、困難に立ち向かう強さがこれでもかと秘められている。そして彼らは、そんな楽曲を声を枯らさんばかりの勢いで鳴らすのだ。単純明快だが、そのシンプルさは心を揺らす。


今回紹介する『太陽4号』は、10-FEET史上最も弱者に寄り添った楽曲と言えるだろう。人を傷付けたことや消えてしまいたくなる思い出の果てに今の自分がいる。よって愛すべきは何よりも自分自身であると、はっきりと明言する力強い楽曲だ。


人は変わる必要などない。弱さや苦しさを携えながら、そのまま自分らしく生きていくべきなのだ。

 


10-FEET 太陽4号

 

 

サザンカ/SEKAI NO OWARI

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誰よりも転んで 誰よりも泣いて
誰よりも君は 立ち上がってきた
僕は知ってるよ 誰よりも君が
一番輝いている瞬間を

紅白歌合戦には連続出場、総工費億超えの野外ライブツアーも全ソールドアウト。まさに日本国民がみな知るところのポップバンド、SEKAI NO OWARI。


『サザンカ』はそんなセカオワの平昌オリンピックのテーマソングとして、広くお茶の間に響き渡った楽曲であり、ファンならずともサビ部分を聴けば「これか!」と思うことだろう。


サビで何度も繰り返し歌われている通り、この楽曲で主軸となる人物はいわゆる『夢追い人』である。


世間一般、というより日本社会のひとつの性質として、人と少しでも違う行動をする人間は奇異の目で見られることが多い。進学したら勉学に励むもの。友人らと輝かしい青春を送って思い出を作るもの。成人したら正社員になるもの。30を過ぎれば結婚するもの……。


そうした『普通の人』から見る夢追い人はどうだろう。ある雑誌の調査によれば、夢追い人に対して20代~60代までの23.7%もの人が「馬鹿だと思ったことがある」という。本気で取り組んでいる人は報われるかどうかも分からない夢を追いかけつつ、必死に生きている。しかしそんな影の努力も『普通の人』からすれば「何だそれ」と一蹴されるような事柄に過ぎず、その側面には一切触れられない事実がある。


そしてここで言う『夢追い人』とは今絶望に押し潰されそうなあなたに、そっくりそのまま言い換えることができるとも思うのだ。


「自分を認めて欲しい」という思いも、「本当はこうじゃないのに」という葛藤も。全てを包み込んで応援してくれるのが、この『サザンカ』という屈指の名曲なのである。

 


SEKAI NO OWARI「サザンカ」

 

 

世界に一人ぼっち/Suck a Stew Dry

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今日も明日も 変われないんだろうなあ
夢の中でしか 夢なんて見られない
現実は今も怖くて 仕方がないけど
生きていることだけは持っていく

現在はバンド名を改名し『THURSDAY'S YOUTH』(サーズデイズユース)として活動する4人組ロックバンド。


彼らは特異な楽器も使っていなければ変わった奏法を駆使するわけでもない。この一部分だけを見ると「普通のロックバンドじゃん」という感想を抱く人は多いだろう。しかし特筆すべきは、その類い稀なる歌詞にあるのだ。


ボーカルを担うシノヤマの目線は常に俯瞰だ。日常風景をを客観的かつ多面的に見ることで、その裏に隠された部分に気付いてしまう人物、それがシノヤマという男だ。


そんな彼が描く『世界にひとりぼっち』は、徹底して孤独に焦点を当てた楽曲だ。誰にも相手にされない疎外感を内包しながら、「今日も明日も変われないんだろうなあ」と呟く半ば諦めの心持ちでいる。


本当に辛い人間は、辛いことを周囲に明かさない。それどころか取り繕った笑顔を貼り付かせながら生きることで、心に燻った闇を増幅させている。それが世間一般の当たり前。美学だからだ。


極端な話をしてしまうが、寂しがりな人間は彼女がいようが貯金がたんまりあろうが、一生孤独である。これはどんなことをしても覆らない決定事項であり、絶対に抗えない心の闇だ。


そう考えると『世界にひとりぼっち』というタイトルは得てして妙であり、それが分かっているからこそシノヤマは、死に物狂いで孤独を共有する。きっとこの曲が刺さる人はシノヤマと同類であり、世界に居場所のない人間なのだろう。

 


Suck a Stew Dry「世界に一人ぼっち」PV

 

 

……さて、いかがだっただろうか。前後編と続いた今回の曲紹介。


現在日本で『流行歌』と呼ばれる歌はほとんどがポジティブ、もしくは恋愛をトレンドにしているものが大半を占める。そう考えると今回の曲紹介は、日本における音楽チャートの枠からは完全にはみ出たものばかりだと思う。


しかしながら例え共感を得る割合が少なくとも、こうした楽曲が刺さる人も絶対にいるはずなのだ。少しでも気持ちが軽くなったり、生きる活力になったり。感じる思いはそれぞれ違うだろうが、そうした人間にとって今回紹介した楽曲はいわば『希望の光』であり、無くてはならないものなのだ。


世に蔓延る売れ線の音楽。それらももちろん最高だが、ふいに訪れる憂鬱な気持ちを打破したいと思ったときは、今回紹介した楽曲群を聴いてみてはいかがだろうか。きっとあなたの最良の助けになってくれるはずだ。

【企画】質問箱に寄せられた質問を全部返します

こんばんは、キタガワです。


半年前くらいに一度、ツイッターで『質問箱』なるものを導入しました。


それから長い間見向きもしてなかったんですけど、先日チラッと見てみたらかなりの数の質問が寄せられてまして。


ひとつひとつ返して他者のTLを埋めるのも嫌なので、今回のこの記事でもって現時点での質問に全て答えようと思います。面白くも何ともない回答ばかりなので、お菓子とジュース片手にテレビでも見ながら適当に読んでいただければ幸いです。


それではどうぞ。

 

 

Q1.今一番欲しいものは何?

CDですかね。今は邦楽ならヨルシカ、洋楽ならケミカルブラザーズのアルバムが欲しいです。毎月コロコロ変わります。


Q2.ブログの最終的な目標は何ですか?

僕が書く文章自体に価値を見出だしてもらうことです。音楽についてはアピールしてるつもりではいるんですけど、欲を言えば音楽だけじゃなくて「キタガワが書く文章なら何でも読むよ」みたいに思われるのが理想なのかなと思います。


Q3.どんなお酒が好きですか?

99.99(フォーナイン)っていう酒は常時箱買いするほど好きです。あと日本酒。ワイン以外なら何でも飲みます。


Q4.質問がなかなか来ないのですが、どうすればいいですか?

「そういえば質問箱ってやってたな」とふと思い返すくらいのレベルで向き合った方がいいかもしれないですね。多分Q4で質問してくれた方は逐一質問箱をチェックしてる人だと思うんですけど、気にしすぎるとストレス溜まっちゃうので。1ヶ月くらいは質問箱自体見ないようにした方がいいと思います。


Q5.『ww』って嫌いなんですが、私だけでしょうか?

あまり好きではないです。一周回って(笑)も嫌いになってしまって、全く使わなくなりましたね。


Q6.小6からずっと不登校でした。質問ありますか?

辛かったんだなと思います。でも絶対その過去もいずれ笑い話になるので、頑張って生きていきましょう。何かあったら吐き出してください。質問はないです。


Q7.寒い日に家で食べるアイスって好きですか?

『暑い日に家で食べるアイス』の方が100倍好きです。


Q8.直感タイプ?論理タイプ?

直感タイプです。


Q9.リポビタンDって効くのかな?気持ち程度?

気持ち程度だと思いますね。自己暗示みたいなところもあるんじゃないかと。


Q10.眼鏡男子は好きですか?

眼鏡女子は好きです。


Q11.仲良くしてください!

あまり自分から交流する人間ではないので……。それでいてガンガン来られてもイラっとするタイプなので、多分難しいと思います。『月イチでリプライ送る』みたいな関係だったら一番嬉しいです。


Q12.愛って一体何なんでしょうか?

分からないです。


Q13.ライブって行ったことある?

かなり行きますね。ライブレポート等も書いているのでぜひ。


Q14.投稿が面白いフォロワーさんは?

名前は挙げませんが、何人かはいます。


Q15.異性間の友情って成立するの?

成立すると思います。逆に異性見るとすぐ距離縮めたりやりたがる人は大嫌いですね。


Q16.小学校の校歌の歌い出し、まだ覚えてる?

一番だけ覚えてます。


Q17.魅力を感じる仕草ってどんなの?

「心を開いてくれてるなあ」と思ったときですかね。


Q18.日本代表と同じくらい応援してます!

日本代表を応援してください。


Q19.いくらなら宇宙旅行に行きたい?

1000円くらいなら考えなくもないなあ、くらいの感じです。行きたくもないですし。


Q20.どこのブランドの財布を使ってるの?

適当に中古ショップで買った2000円くらいのやつを使ってます。ブランドかは分かりません。


Q21.家に帰って一番最初にすることって?

ズボンを脱ぎます。締め付けられるのが嫌いなので。


Q22.身だしなみで気を付けていることはある?

結構適当な人間なので寝癖ついてたり髭剃らずに外出するのもザラなんですけど、無駄に服のホコリやら綻びは気になっちゃうタイプです。


Q23.今までで一番高い買い物は何?

1週間のアメリカツアーのチケットです。24万円くらいだったかと思います。当時の全財産で買ったので、その月に携帯電話の支払いが滞ったのを覚えてます。


Q24.魔法省に入ったら、どこの部署に入りたいですか?

各部署の待遇とか雰囲気とか見て、一番自分に会ってそうなところに入りたいですね。


Q25.月にいくらくらい洋服にお金使います?

0です。


Q26.知り合いの中で一番尊敬してます

ありがとうございます。でも僕以外の誰かを尊敬した方が100倍有意義だと思います。


Q27.会いたいと思ったら会えますか?

島根県まで来てくれれば会えます。


Q28.すぐにTwitter開く癖が直らないです

僕もです。完全に依存症ですね。


Q29.付き合う前のキスはアリ派ですか?無し派ですか?

ファーストキス未経験なので分かりません。


Q30.人を嫌いになる時とか恋愛で冷める時はどんな瞬間ですか?

相手の仕草や目の動きを見て「多分僕のこと嫌なんだろうな」と思った瞬間からです。「嫌いになってる可能性が高いな」と少しでも感じた瞬間にすぐ距離を置きますね。別に僕自身が嫌いなわけではないんですけど、「相手が僕と関わって少しでも嫌な気持ちになるんだったら会わない方がいいよね」みたいな感じです。


Q31.出前を取るなら寿司かピザどっちがいい?

断然ピザです。


Q32.ねえ、今どんな気持ち?

文字打つのすげーダルいなと思ってます。


Q33.夢って覚えてる?

覚えてないですね。次の日になったら完全に忘れてます。


Q34.最近の若者に一言お願いします

ネットの意見とかじゃなくて、自分で判断した方がいいですよ。


Q35.フォローする人としない人の基準は何ですか?

しない人の基準は『一日のツイートが極端に多い人』と『企業系のリツイートをめっちゃする人』です。それ以外だったら、過去のツイートを遡って「普通の人だな」と判断したらフォローを返すようにしてます。自分からフォローするのは音楽関係、もしくは有名人くらいですかね。


Q36.仮面ライダーとウルトラマン、就職するならどっち?

どっちも観たことがないので分かりません。でもかなりストレスが多い仕事だとは思うので、多分就職はしないですね。


Q37.好きな女優で一番といえば?

昔は能年玲奈さんが好きでした。今は特にいないです。


Q38.柄シャツって着ることある?

ないです。無地のシャツだけです。


Q39.好きな飲み物は何ですか?

酒です。


……いかがだったでしょうか。質問箱回答集。


書いてて気になったんですけど、これ誰が質問書いてるんですかね。僕のフォロワーはかなり少ない部類に入りますし、そもそも「質問箱やってます!」みたいな呟きもしたことがないので9割方は見知らぬ人からだとは思うんですけど。


でも多分1年半ブログやってきた中で、一番気楽に書けました。まさか39個も質問が来るとは思ってもみなかったので、何か売れっ子ツイッタラーみたいな感じがして楽しかったです。


また半年後くらいに見返してみて、質問が溜まってたら返そうかなと思います。

 

それでは。

【ライブレポート】〈物語〉フェス~10th Anniversary Story~@幕張メッセ

こんばんは、キタガワです。

 

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5月11日、幕張メッセイベントホールにて、物語シリーズ10周年を記念したイベント『〈物語〉フェス』(以下・物語フェス)が開催された。今回はそのレポートを記したいと思う。


レポートに進む前に、まずは今回のイベントの概要から説明する必要があるだろう。


物語シリーズ』とは西尾維新の青春怪異小説シリーズ、及びそれらのアニメ作品を総称して呼ばれる言葉である。物語シリーズは一般的に広く知られている『化物語』から『傷物語』、『偽物語』や『猫物語』といったいくつもの物語に分かれており、それぞれ異なるキャラクターを主軸として進行していく。


魅力のあるキャラクター、西尾維新による独特な言い回しやストーリー展開が話題を呼び、その広がりは凄まじいものとなった。原作小説は一冊あたり約1500円と高値ながらも、僅か5巻で120万部を突破。更に後のアニメに関しては、当時のアニメシリーズの最高売上を記録。シリーズ累計100万本以上を売り上げるという、文字通りのバケモノ作品となったのだ。


さて、今回記述する物語フェスは、そんな絶大な人気を誇り続ける物語シリーズの、10周年を記念したアニメイベントである。ややもするとDVD・Blu-ray化して莫大な売上を見込めるイベントではあるのだが、『一夜限りの夢物語』と事前に告知されていた通り、何とテレビ放映やDVD化は一切なしと言うのだから驚きだ。


会場に選ばれた幕張メッセは1万人が収容可能な大型施設としても知られているのだが、もちろんチケットは瞬時に完売。その人気の高さを改めて裏付ける形となった。


ちなみに、今回のイベントの出演キャストは以下の通り。

 

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[キャスト]
・神谷浩史(阿良々木暦 役)
・斎藤千和(戦場ヶ原ひたぎ 役)
・加藤英美里(八九寺真宵 役)
・花澤香菜(千石撫子 役)
・堀江由衣(羽川翼 役)
・喜多村英梨(阿良々木火憐 役)
・井口裕香(阿良々木月火 役)
・早見沙織(斧乃木余接 役)
・水橋かおり(忍野扇 役)
・井上麻里奈(老倉育 役)
・三木眞一郎(貝木泥舟 役)
・坂本真綾(忍野忍 役)


当初出演が予定されていた沢城みゆき(神原駿河 役)、櫻井孝宏(忍野メメ 役)については残念ながら出演キャンセルとなってしまったものの、結果としてアニメファン、声優ファンならずとも感嘆の声を上げざるを得ない豪華出演者陣には脱帽である。


更にこの布陣にプラス『〈物語〉フェススペシャルバンド』なる総勢数十人にも及ぶ豪華演奏者の出演も発表。要はこの発表により、物語シリーズのOP、EDを各話ごとに彩っていた各自のキャラクターソングにもスポットが当たることがほぼ確定事項となったわけだ。


しかしながらその全貌は、事前情報だけでは伺い知ることが出来ないというのが正直なところである。実際に何を演奏するのか分からないし、アニメの名シーンを再現する生アフレコがあるのかも、一向に不明なままだ。そんな一種の期待と不安が交錯した心持ちのまま、一夜限りの歴史的イベントは幕を開けたのだった。


時刻は開演を示す定時ジャスト。しかしながら、会場には未だ物語シリーズのアニメの日常パートの音楽が鳴り響き、主要メンバー勢揃いのキャラクタービジュアルがスクリーンに大写しになっている状態が続いていた。早くもペンライトを点灯させたり、痺れを切らして思い思いの歓談を行う観客を見ながら、次第に緊張感が高まっていくのを感じた。


17時10分を過ぎた頃、暗転。大歓声を前に現れたのは、神谷浩史(阿良々木暦役)と坂本真綾(忍野忍役)であった。


記念すべきイベントのオープナーということもあってか、各日常パートの冒頭を彷彿とさせるコメディ色強めの展開で進んでいく。


『ひたぎクラブ』や『まよいマイマイ』、『するがモンキー』といったサブタイトルを例に上げ「『まくはりメッセ』と書くとまるでサブタイトルのようじゃな」といったトークや、アニメ化されていない外伝作品をイジったり、幕張メッセの最寄り駅として実際の最寄り駅より遥か遠くの駅を教えるなどの怒濤の流れは、コメディパートに定評のある物語シリーズならではのスピード感だ。


その後も何度かキャラクター同士の掛け合いがあり、アニメ版と同様に喜多村英梨(阿良々木火憐役)と井口裕香(阿良々木月火役)の次回予告がスタート。「予告編クーイズ!」「クーイズ!」というおなじみのやりとりの後「アニメが放送開始されたのはいつでしょう?」との問いに対して瞬時に回答する火憐であったが、月火の「ですが~……」の引っかけに悪戦苦闘。


本来であれば答えが発表された直後「次回!ひたぎクラブその2!」といった次回予告で終わるのが定番なのだが、「次回!『staple stable』!」と曲名を叫ぶという、観客も予想だにしていなかった展開に。


暗転後、ステージには斎藤千和(戦場ヶ原ひたぎ役)がシックな衣装を纏って登場。そのまま移行したのはアニメ版化物語の記念すべきファースト・ソングである『staple stable』だ。

 


化物語 Staple Stable


〈重さじゃ 計れないこんな想い〉

〈君だけに今 伝えるから〉


背景にはアニメのOP映像と共に、リアルタイムで撮影された斎藤の姿が周囲に加工を施され、美麗に映し出されている。斎藤の歌声は大舞台の緊張もあってか、お世辞にも安定しているとは言い難い。楽曲自体も1番のサビまでの進行と、テレビサイズで若干物足りない感も否めない。しかしながら楽曲内に含まれる多大なメッセージ性には、ファンならばグッとくるものがある。


この楽曲が流れたのは今からちょうど10年前のこと。蟹の怪異に体重を奪われた戦場ヶ原ひたぎを阿良々木暦が助けたことから、物語シリーズの全ては始まったのだ。その後も暦は様々な怪異と仲間に出会い、身を挺して救っていく。そしてそんな真摯な姿に心打たれたひたぎと暦は、次第に惹かれ合う……。


もちろん今現在まで物語シリーズは続いているわけで、これらの出来事は過去の産物に過ぎないかもしれない。しかし物語シリーズ10周年を記念した今回のイベントの最初の曲として『staple stable』を選択したのは、間違いなく大きな理由があったのだろうと推測する。ここから全てが始まった、いわば『始まりの歌』なのだから。


斎藤が去った後「みなさん!盛り上がって参りましょう!」との一言でスタートしたのは、爆速BPMで進行する『帰り道』。ピンクを基調とした衣装で現れた加藤英美里(八九寺真宵役)はさながら小学生である八九寺を彷彿とさせ、『綺麗』というよりは圧倒的に可愛らしく見える。

 


化物語 OP2 帰り道 八九寺真宵(CV.加藤英美里) 1080P


八九寺は当初の物語上では蝸牛の怪異に取り付かれ、死者でありながらも成仏できないでいる存在であった。そのため母親の家を探し続けるその姿から『迷い牛』という名を付けられていたのだが、この日の加藤はまさにそんな『迷い牛』と呼ぶに相応しい挙動で、だだっ広いステージ上を右往左往していたのが印象的だった。


今回のライブで最も驚いた場面と問われれば、個人的には次曲の『ambivalent world』だと言わざるを得ない。というのもこの楽曲を歌唱している沢城みゆき(神原駿河役)は、今回のライブの出演者の中にはいなかったからである。そのため『ambivalent world』と『the last day of my adolescence』に関してはセットリストから除外されるのだろうと、てっきりそう思っていた。


しかし結果的にはこの2曲は演奏された。では沢城がサプライズで登場したのかと言えば、そうではない。沢城自身が歌唱したオケを使い、沢城不在の中フルでやってのけたのである。


イントロが流れた瞬間、観客は「ええ!?」と驚きの声を上げる。……これはもちろん前述したように沢城の不在が分かりきっていた故の驚きなのだが、『ステージに沢城の姿はなく、しかし沢城の歌声ははっきり聴こえている』という状態で進行。ステージ上にはかつて阿良々木暦を半殺しにした猿の怪異が跋扈し、所狭しと動き回る。観客はまさかの展開に腕を大きく挙げて答えていた。

 


Ambivalent World - The Suruga Monkey's Theme [HD]


『the last day of my adolescence』も同様で、沢城はやはり不在で歌声のみが聴こえている。大きく違うのは『神原駿河がいる』という点。要はVTuberや初音ミクのライブの如く、立体的な映像として神原駿河がスクリーンに映し出されているのである。


場所はかのライバルと最後の対決をした、思い出深き体育館。水が次第に満ちていく描写も、アニメ版を忠実に再現している。そこで歌い踊る神原の姿は決してリアルとは程遠いのだが、今回のライブのひとつのスパイスとしては上手く機能していたようにも思う。


神原曲の間に挟まれて披露された、喜多村が歌う『marshmallow justice』も素晴らしかった。阿良々木月火とふたり合わせて『ファイヤーシスターズ』と呼ばれ、特に火憐は正義感の塊として活躍しているのは周知の通りだが、そんな彼女を体現するかのようにスクリーンにはメラメラと燃え上がる炎が映し出されていた。歌唱も安定感抜群で申し分ない。結果として喜多村がその次に歌唱する瞬間は最終曲の『wicked prince』のみであるため、言い換えればそれまで長いおあずけとなるわけだが『marshmallow justice』の大盛り上がりは名状しがたいものがあった。

 


Nisemonogatari Karen Bee OP 1080p ᴴᴰ


さて、ここまで読んでいただければお分かりの通り、今回のイベントでは『まくはりメッセ第○話』と題し、各話『数回のオリジナル朗読劇+数曲の主題歌歌唱』の流れで進んでいく。


よって続いては『まくはりメッセ 第二話』となるわけだが、ここでは原作での関わりがある程度あったメンバーによるトークを主軸に行われることとなった。


第二話では阿良々木暦と井上麻里奈(老倉育役)、神原とひたぎ(神原役の沢城は不在のため実際の生朗読はなし)、早見沙織(斧乃木余接役)と忍と八九寺のトークなど目白押しであったわけだが、中でも面白かったのはかつて困難を共にしたスリーマンセルコンビ。


斧乃木は「僕はキメ顔でそう言った」という彼女曰く『黒歴史の語尾』が復活しており、その他にも「イエーイ」「ピースピース」といった無作為なボケを連発。原作ではツッコミ役も多くこなしていた斧乃木だが、この場では真顔でガンガンボケまくる役を担っていた。


更には八九寺もボケ役を担当。斧乃木の語尾を真似て「私は太陽のような笑顔でそう言いました!」など、やりたい放題。忍が徹底してツッコミに回らざるを得ない状況となり、もはや一種のカオス状態。客席は笑いに包まれ、心なしか声優陣も楽しそうだ。まるで自宅でドラマCDを聴いているかのような多幸感に満ち溢れた瞬間であった。


「火憐だぜ!」「月火だよー!」「二人合わせてファイヤーシスターズ!」との流れでスタートした二度目の予告編クイズでは、「この10年間で最も多く主題歌を歌ったのは誰でしょう?」という火憐曰く『ガチなクイズ』が進行。


実際の答えは斎藤千和(戦場ヶ原ひたぎ)なのだが、火憐は一貫して「はい!月火ちゃん!月火ちゃん!」と譲らない。当初は「お手付きは3回までです」と真剣モードだった月火だったが、遂には根負けしたようで「もー!正解!火憐ちゃん大好き!」とグダグダで終了。最後に「次曲、オレンジミント!」と声を揃えて去っていった。


暗転後に披露された『オレンジミント』では自身が演じる斧乃木余接同様に、至って無表情に歌い上げる早見沙織。実際の音源としての『オレンジミント』は自身のサンプリングボイスを多用してパーカッション的役割を担っていたのだが、全生楽器で演奏された今回のライブにおいてはそういった打ち込みはなし。ズドンと心臓に響く重厚なサウンドでもって、会場中を掌握していく。


映像についても書き記しておきたい。無数の扉から無作為に斧乃木余接と早見沙織が飛び出す展開は、エンターテインメント性抜群の出来。無表情でポーズを決める早見も愛嬌たっぷりで、その姿はファンならずともイチコロだったろう。

 


憑物語 OP 「オレンジミント」ノンクレジット (BDRip 1920x1080) 60fps


『terminal terminal』終了後は、いわゆるダークサイド系の曲が多数披露される展開に。物語上でも特に重要な部分を担っていた『つばさキャット』の主題歌である『sugar sweet nightmare』は、歌手としての実力も高い堀江由衣(羽川翼役)の高らかな歌唱によって強く心に響き、ラストで猫のポーズを決める堀江に関しては心からキュンとさせられた。


冒頭の含み笑いも忠実に再現した花澤香菜(千石撫子役)が歌う『もうそう♡えくすぷれす 』は、一見するとポップな歌に聴こえるものの、全ての結末を知っているファンからするとゾッとするホラー楽曲だ。タイトルこそ可愛いがその内容は暴走列車の如く突飛かつ理不尽であり、キュートな花澤香菜との対比がまた、楽曲の良さを際立たせているようにも思えた。


『mathemagics』や『decent black』に関しては放送開始からあまり時間が経っておらず、OPサイズでなくフルで聴くこと自体貴重なために若干盛り上がりに欠けた印象は否めないが、それでも美麗なVJと楽曲の持つキャラクター性が織り成すサウンドは、素晴らしいものがあった。

 


Owarimonagatari OP/Opening [HD] (Decent Black)


さて、今回のライブは物語シリーズのファンであれば、全編通して名場面であったことは疑いようもない事実である。しかしながら個人的に「最も感動した場面は?」と問われれば、間違いなく『白金ディスコ』と答えるだろう。


「ハァーどっこい!」というおなじみの歌声が聴こえた瞬間、『白金ディスコ』は怒号のような大歓声で迎え入れられた。スクリーンにはOPで披露されていたダンスシーンが投影され、ダンサーと共に三位一体でダンスを踊る井口。その歌い方は自身が演じる阿良々木月火というよりは井口裕香そのものであり、『可愛く』というよりは何度もライブで披露してきたような、極めてソウルフルな感覚で歌い上げていた。


中盤では兄である阿良々木暦がスクリーンに投影されるサプライズも。しかもその姿が『白金ディスコを完コピで踊る』というアニメ版のワンシーンを再現したものであるから、噴飯ものである。「プラチナっていうのは“プチ”を略したもので、別にそれ自体に大きな意味はないんだよ」とは月火の弁だが、もしも月火がこの光景を見たら「何これ!プラチナむかつく!」と言うに違いない。


終盤の『ディスコ!』3連発に関しては、本来であれば疑問符を付けたりポップにといった形で歌われる場面であるが、ここでの『ディスコ!』は全編通して叫ぶように歌い上げられた。その姿はまさにライブ体験といった様相で、エモーショナルに会場に響き渡った。

 


偽物語OP白金ディスコ(歌詞つき)


続いては『まくはりメッセ第三話』へ移行。ここでは本編での関わりが一切なかったキャラクター同士の会話が、物語上では絶対にあり得ない形として出現。まさにファンにとっては大喜びの展開だろう。


中でも阿良々木暦+老倉育+千石撫子が共に会話を共にするという驚愕の展開は、特筆すべきだろう。そもそも暦と千石は“いろいろあった”挙げ句にその後の関わりはなかった……というか“会うこと自体がタブー”なわけで、老倉と千石に至っては関わった経験すらないという謎の組み合わせ。


暦と老倉のトークに「なーでこーだYO!」と無理矢理割り込む千石。この『千石撫子・謎のDJラッパーキャラ』はアニメDVDの副音声機能を使ってのみ登場するもので、コアなファンでなければ理解不能な代物なのだが、とにかく。「今最もチケットが取れないラッパーなのだぞ?」と老倉が語るも、「そもそもチケットを売ってないからな」とツッこむ暦。


阿良々木暦とフェスの幹事・羽川翼のトークでは、今回のフェスの趣旨について説明がされた。今回のセットリストの冒頭で初期の楽曲が多く披露されたのも、ドレスコードが決められていたのも、全ては『10周年のお祝いの席』という意味合いと『また再び初心に立ち返ろう』といった思いが込められたものであったことが明らかとなった。


今回はファイヤーシスターズのクイズはなし。「次曲、『chocolate insomnia」と羽川が語ると、そのまま堀江由衣(羽川)が歌う『chocolate insomnia』へ。

 


猫物語 白 OP - chocolate insomnia


〈本当は全部 識(し)らなかったの〉

〈本当は全部 理解(わか)っていた〉


この楽曲が本編で流れたのは『猫物語(白)』であり、この物語は今まで隠し続けてきた阿良々木暦への想いを解き放つ内容となっている。暦の「お前は全部知ってるんだな」という一言に対し、羽川がお決まりのセリフとして「全部は知らないわよ。知ってることだけ」と返す流れが物語シリーズでは多用されるが、暦に対する淡い想いだけは、唯一羽川が『知っているが絶対に表に出さないようにしてきたこと』なのだ。


ひとつの結果として、羽川の恋は実らなかった。しかし堀江が高らかに歌う『chocolate insomnia』を聴いていると、この選択は必然でまた最良の結果であったことを裏付けるようにも思えて、グッと込み上げるものがあった。


去る寸前、小さく「せーのっ……」と発した堀江。おそらくはこの時点で大半の観客は次曲の予想が出来ていただろう。そう。ここにきての『恋愛サーキュレーション』である。

 


化物語 OP4【恋愛サーキュレーション】


花澤香菜が冒頭に「せーのっ」と発した瞬間の盛り上がりは、この日一番だったのではなかろうか。化物語史上瞬間最大風速を記録した楽曲でもあり、物語シリーズ屈指の人気曲。花澤が「でもそんなんじゃ」と歌った瞬間に観客が一丸となって「だーめ!」のレスポンスを返す様は圧倒的。


かつて花澤香菜は自身のソロコンサートにて、一度だけこの『恋愛サーキュレーション』を歌唱したことがある。その際はこれらのレスポンスを全て観客に託していたのだが、今回のライブではこれらの「だーめ」や「ほーら」他、中盤の「コイスルキモチハヨクバリcirculation」など、本来観客に託しても良さそうな場面も全て自身でカバーしていたのが印象的だった。


おそらくこれは『物語シリーズのイベント』という部分を意識してのことだったのではなかろうかと思う。ただ盛り上げるだけなら観客に歌を託す方法が最もボルテージを上昇させ、観客の思い出にも残るだろう。しかし疑う余地もなく千石撫子、ひいては花澤香菜のイメージとして広く定着したのはこの楽曲だ。物語シリーズを通して築いた縁や、物語シリーズを通して認知されたこと。これらに対しての花澤の心からの感謝の思いが伝わってくるようだった。だからこそ花澤はこの楽曲を盛り上げるでもなく、全て自身で歌い切ることを選んだのだろう。最後に「ありがとう!」と笑顔で去っていった花澤の笑顔は感極まったようでもあり、素敵に写った。


その後も比較的新しい楽曲が次々披露され、最後の楽曲へ。今回のイベントの出演者が一同に会しての本編最後の楽曲は、スマートフォンゲームアプリ『〈物語〉シリーズ ぷくぷく』のテーマソングでもある『wicked prince』だ。

 


〈物語〉シリーズ ぷくぷくテーマソング「wicked prince」/ NOW ON SALE!!


〈誰にでも君は すごくやさしいから〉

〈勘違いしちゃったんだ 知らないふりで〉

〈誰にでも君が くれるその笑顔を〉

〈何度だって 夢に見ちゃう〉


『wicked prince』は物語の主人公、阿良々木暦に向けての感謝の念や信頼をストレートに表したメッセージソング。今までテーマソングを歌ってきた女性陣が、マイクをスイッチしながら各パートを歌うその姿は、当然エンディングに相応しく明るいものだ。


しかし同時に素晴らしい時間の終焉を告げるセンチメンタルな感情も襲ってくるわけで、中でも大量の『ぷくぷく風船』が客席に降り注ぐ場面で僕の脳裏では、「楽しかったなあ」という単純な感想だけがグルグルと駆け巡っていた。


『君の知らない物語』のBGMをバックに、出演者が笑顔でステージを降りていく。その姿は心から楽しんでいるようにも、終わってしまう寂しさを噛み殺しているようにも、プレッシャーから解き放たれたようにも見えた。


一夜限りの歴史的イベントは、こうして幕を閉じた。映像化なし、テレビ放映なし。僕らがこの興奮を誰かに伝えようとしても、時が経って再度余韻に浸りたいと思っても、それは不可能だ。一夜限りの夢物語は文字通り、物語ファンにとっては夢のような瞬間だった。


しかし本編終了後のスクリーンに表示された『アニメ新シリーズ制作中!続報を待て!』との一報が明かされたことからも、物語シリーズはまだまだ終わらない。きっとこの先もファンの期待を上回る何かが、続々と発表されていくだろう。


これは終わりではない。新たなる始まりなのだ。物語シリーズは10年経って、また新たな局面へ入っていく。神谷浩史もラストの一幕で語っていたが、これは言うなれば「始まり」である。


「めでたし、めでたし」で終わる昔話があれば、「はじまり、はじまり」でスタートする新たな物語があってもいい。そしてそれは物語シリーズでしかあり得ない。僕らは『物語』という新種の怪異に取り憑かれながら、その日をじっと待つしかないのだ。

 

【〈物語フェス〉@幕張メッセ セトリ】
[まくはりメッセ 第一話]
staple stable (斎藤千和・short ver.)
帰り道 (加藤英美里)
ambivalent world (沢城みゆき)
marshmallow justice (喜多村英梨)
the last day of my adolescence (沢城みゆき)

[まくはりメッセ 第二話]
オレンジミント (早見沙織)
terminal terminal (加藤英美里)
sugar sweet nightmare (堀江由衣)
mathemagics (井上麻里奈)
decent black (水橋かおり)
もうそう♡えくすぷれす (花澤香菜)
白金ディスコ (井口裕香)

[まくはりメッセ 第三話]
chocolate insomnia (堀江由衣)
恋愛サーキュレーション (花澤香菜)
夕立方程式 (加藤英美里)
dark cherry mystery (水橋かおり)
dreamy date drive (斎藤千和)
wicked prince (女性陣全員)
君の知らない物語(BGM only)

 

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[前編]辛い、死にたい、鬱状態の時のオススメ音楽10選

こんばんは、キタガワです。


世の中には様々な人がいる。盛り上げ上手な人や仕事をバリバリこなす人、持ち前のキャラクター性で可愛がられる人や何も考えていない人……。細かな違いはあるにせよ、しかし基本的にはポジティブな性格な人が多いだろう。


そしてそんな中、自ら表沙汰にはしないまでも『極めてネガティブな人間』というのも一定数存在する。


希死念虜に取り付かれ、日々鬱々とした感情で必死に生きる。誰にも相談せずに一人で抱え込むばかりのそうしたネガティブな人間は、前述したポジティブな人間とは対極に位置するものだ。


『人と違ってみんないい』と学んだのは遥か昔。しかし悲しいかな、今の世の中ではそういったネガティブな感情を抱くこと自体が、悪とされがちだ。「そんなに悩まなくていいじゃん」「こっちまで辛くなってくる」……。心無い言葉を言われ続け、偽りの仮面を被りながら社会生活を送っている人は多くいるはずなのだ。


前置きが長くなってしまった。今回は『辛い、死にたい、鬱状態の時のオススメ音楽』と題し、強いメッセージ性でもって社会的弱者を鼓舞する楽曲を集めた。


しかし一言に『死にたいときに聴きたい音楽』と言っても、別にポジティブな歌詞で無理矢理明るくさせようとか、お涙頂戴の心境に持っていこうとか、そういったものではない。今回紹介するのは死にたがりの人々に徹底的に寄り添い、クソッタレな人生を共に生きていこうとするものばかりだ。


今回の記事があなたの生活を照らす、一筋の光となれば幸いである。断言する。あなたはひとりではない。

 

 

あんたへ/amazarashi

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今日は 何にもやる気が起きねえから
一日中 テレビばっかり観ていたんだけれど
「この人達はなんて幸せそうなんだ」
って考え出したら 急に笑えなくなった

弱者への応援歌を歌い続けるamazarashi。その中でも随一の強いメッセージソングがこの『あんたへ』だ。


この楽曲ではあまりにもリアルな『生きる希望が皆無な人間の姿』が描かれるが、しかしてその実態はかつてのamazarashiのフロントマン・秋田ひろむ自身である。


売れないバンドマン生活を6年以上続け、肉体労働のアルバイトで日銭を稼ぐ日々。酒を飲まなければ外出出来ないほど心が限界に達した時期に作られたのが、この楽曲だという。


しかし楽曲中には当時の秋田氏の精神状態とは裏腹に、未来の希望を切望する姿が色濃く描かれている。それはこの楽曲自体が『今にも死にそうな自分を説き伏せるための最終手段』であったからに他ならない。秋田氏は作曲者でありながら、誰よりもこの曲に救われてきた人物なのだ。


だからこそこの楽曲は、同じように苦しんでいる人の心を打つのだ。友人らの薄っぺらい励ましや勇気付けの何倍も強く。この楽曲のみならず、amazarashiの楽曲は『そういったタイプの人』の心を雄弁に物語るものばかり。死にたいとき、辛いとき。あなたの心を押すのは、きっとこんな曲。


amazarashi 『あんたへ』

 

 

明日はきっといい日になる/高橋優

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悲しみはいつも 突然の雨のよう
傘も持たずに 立ち尽くす日もある
降られて踏まれて 地は固まる
そこに陽が射せば 虹が出る

シンガーソングライター・高橋優最大のヒット曲であり、同時に数々の人の心を救ってきたであろう名曲。


この楽曲では、タイトルにも冠されている「明日はきっといい日になる」というフレーズが繰り返し歌われる。不出来な仕事や壮絶なイジメが描かれる下記のPVでは「明日はきっといい日になる」と期待し、笑顔で去っていく描写で幕を閉じる。


そう。高橋優がこの楽曲で伝えたいことは、タイトルにもサビにも使われるあの言葉ただひとつなのだ。


amazarashiの『あんたへ』が未だ見ぬ希望の光だとするならば、高橋優のこの楽曲は遥かに近い将来。明日を見据えて歌われる応援歌だ。


席を譲って「大丈夫です」と断られたことも、傘を持たずに立ち尽くした日も、全ては過去。きっと明日は素晴らしい光景に満ち溢れているはずだと、そう渇望する希望的楽曲だ。シンプルでストレートな言葉の繰り返しは、素晴らしき言霊となって明日を切り開く。


高橋優初監督MV作品「明日はきっといい日になる」オモクリ監督エディットバージョン(Short size)

 

 

ヒッチコック/ヨルシカ

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「先生、人生相談です この先どうなら楽ですか
涙が人を強くするなんて 全部詭弁でした」

インターネット発、素顔非公開。新時代の音楽として今話題の謎バンド、それがヨルシカである。


特に昨年あたりから若者を中心とした音楽シーンでは、素顔を見せない匿名性を売りにしたアーティストが台頭している印象だ。しかしその中でもヨルシカの音楽性ははっきり言って一線を画している。


ヨルシカの楽曲には、必ず誰にも言えない心の闇が描かれている。それこそ今回紹介する楽曲が収録された『負け犬にアンコールはいらない』では、消えたい一心で爆弾を抱えたり、理解されること自体を諦めた少年が歌詞に多く出現する。


そしてそれは『ヒッチコック』でも同様だ。答えのない哲学じみた禅問答を繰り返し、生きる意味や真っ暗な未来を知ろうとする主人公はズバリ、今現在辛い境遇に置かれているであろうあなたとリンクする存在と言える。


この楽曲は、心に闇を抱えている人間に広く刺さるはずである。それは人間関係でも仕事関係でも、はたまた金銭面かもしれない。この楽曲で涙を流す人は千差万別だろうが、間違いなくその根底はそれぞれの『闇』なのだ。闇を晴らす曲とは言わないが、徹底して寄り添ってくれる曲だとはしっかりと断言できる。

 


ヨルシカ - ヒッチコック (MUSIC VIDEO)

 

 

黒い羊/欅坂46

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反対が 僕だけならいっそ無視すればいいんだ
みんなから 説得される方が居心地悪くなる
目配せしてる仲間には 僕は厄介者でしかない

世間一般では、欅坂46は『アイドルグループ』という括りで語られることがほとんどだ。紅白歌合戦には連続出場しており、握手会も頻繁に開催される。ライブではサイリウムを持った野太い声が飛び、その光景はアイドルグループの教科書のようにも思える。


そうした現状を踏まえて始めに断っておくと、僕は欅坂46はアイドルではないと考えている。むしろ日本におけるどんなバンドやポップスグループよりも、闇を内包したアーティストだとも。


その理由は以下のPVを観てもらえば一目瞭然。この楽曲において重要な点、それは歌詞と映像である。


タイトルの黒い羊とはつまり『除け者や厄介者、変わり者』という意味を持つ。白を貴重とした羊の集団。そんな中に一匹の黒い羊が潜んでいれば、それ相応の差別的視線に曝されるのは当然だ。


それはさながら、日本社会を象徴しているようでもあるとも思うのだ。コミュニケーションが取れない人、仕事が不出来な人、少し変わっている人、輪に入れない人……。そういった変わり者は、本人の意思や意向に関わらず、決まってハブられる傾向にある。しかしながら周囲にしてみればそれこそが正義。それこそが当たり前なのだ。


『黒い羊』は、そんな当たり前の世の中にNOの意思を強く突き付ける。「白い羊に迎合しろ」とは言わない。「黒い羊は黒い羊のままでいいのだ」と、背中を押す弱者のための楽曲なのである。


欅坂46 『黒い羊』

 

 

シーソーと消えない歌/それでも世界が続くなら

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死ぬ死ぬって言って 死なないつもりで生きてる
もしも「今日が最後」って知ってたら
君は今日を生きたかい?

ボーカル・篠塚の心情を如実に歌にするロックバンド。2018年に活動休止を発表するも、2019年2月に暫定的に活動を再開。5月現在もいつ再び終わるかも解らない、瀬戸際での活動を行っている。


彼らの楽曲は全てメンバーの生い立ち、イジメや虐待、家庭環境や病気といった経験により形成。同時にこれらの大半はボーカルである篠塚が実際に経験した、もしくは他者から聞いたストーリーが基盤となっている。なお彼らのCDの全ジャケットは、手首欠損、発達障害といった要因で長年に渡り闘病中のイラストレーター、おおはましのぶによるものである。


ツイッターにて文字数制限の140文字ギリギリに自身の感情を綴る篠塚を見ていると『苦しみながら日々を生きる人間の等身大の姿』を生々しく感じてしまうのだが、楽曲においてもそれは同様で、ポジティブな歌詞や明るい曲調の楽曲はほぼ皆無といっていい。


篠塚の声、メロディー、歌詞。それらはリスナーにある種の鬱々しい感情と、現代に生きるSOSを送り届ける。間違いなくリア充には刺さらない音楽であると同時に、闇を抱える人には抜群に刺さる。


どれだけ辛く死にたくとも、結果として人間は生きるしかない。“それでも世界が続くなら”ば、僕らは辛い感情を圧し殺す必要があるのだ。一定数いる弱い人間の最高のパートナーとして、彼らの音楽は鳴り響いている。


それでも世界が続くなら 『シーソーと消えない歌』 PV

 

 

……次回は後編。新たに5組のアーティストによる、珠玉の5曲を紹介したいと思う。乞うご期待。

YouTuberのスパチャが全面的に許せない、という話

こんばんは、キタガワです。

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今全国的に、YouTubeを観る人々が増えているらしい。


調べてみると、リアルタイムでテレビを観る人は10年前と比べて著しく減少しているそうだ。「テレビは一家に一台」とも言われたかつての日本は、今はどこにもない。そう断言しても良い程に、今の若者はテレビを観ないという。


さて、そんなテレビの代替として今ポピュラーな存在にありつつあるもの、それこそがYouTubeである。


YouTuberのみならず僕らブロガーもそうだが、インターネット上で生計を立てる者にとっては広告収入が最大の生命線である。


あまり知られていない話なのでここで明言させてもらうと、ブロガーは記事内に配置されている広告をクリックされれば、それが収益になる。対してYouTuberは動画を再生した直後、ないしは数分経過した後に表示される広告(スキップできるもの、できないもの含む)が流れた瞬間、収益が発生する。


そう考えると、YouTuberはブロガーと比べて楽に利益を得られるとも言える。ブロガーはいくら記事中に広告を付けようが、それをクリックされなければ話にならない。


しかしYouTuberは、動画を観る際には必ず広告を出すことが可能だ。それがいくらつまらない動画であっても、である。だからこそ現在では文字だけで埋め尽くされたまとめ動画が横行し、検索に無理矢理引っ掻けて利益を貪ろうと躍起になっている。


それこそHIKAKINやはじめしゃちょーといった著名な人物においては、およそ一般人が想像も出来ないほどの金が転がり込んでくることは明白で、普通に働くのが馬鹿らしくなってくるほどである。例えばNHKから国民を守る党の党首である立花孝志氏は、チャンネル登録者数50万人の現在において、ある月の月収が1247万2868円であったと公言している。もしもひと月が30日としても1247万÷30で、単純計算で日当が41万5600円ということになる。僅か3分足らずの動画を毎日投稿するだけでこの収益。アルバイトをすることすら馬鹿らしくなってしまう程の額である。


……話が少し脱線してしまった。さて、そんなYouTuberにもひとつだけ欠点がある。それは「絶対に有名になる必要がある」という点だ。


前述したように、YouTuberは観られなければ意味がない。よって毎日毎回動画が閲覧され、定期的に広告収入を得るには単純に『有名になる』以外にない。極端に言うならば、日本国民が100人中1人くらいは名前を挙げられるような人物にならなければ、YouTuberとして生計を立てることは不可能だった。


そう。不可能“だった”のだ。この間までは。


2017年の1月、YouTube内で“ある機能”が実装されたことにより、YouTuberの収入源確保は大きく変わってしまった。その機能こそが『スーパーチャット』……俗に言う『スパチャ』である。


このスパチャが出来ることはひとつ。いわゆる『投げ銭』だ。


そもそも『投げ銭』とは、主にストリートミュージジャンやストリートパフォーマーに対して使われる用語だ。ストリートでは自分自身がそのパフォーマンスに感銘を受けたり凄いと思ったときには、お金を与えることができる。これが『投げ銭』と呼ばれるシステムである。


もちろんこの『投げ銭』は何円でもいい。百円であろうが千円であろうが、極論を言えば1万円だっていいのだ。自分が心からその人を応援したい、感動した、もしくは頑張ってほしいと思ったのならば、自ずと『今支払える額』というのは無意識的に提示されるからだ。いわば年末年始の初詣や結婚式の御祝儀ようなもので、最低限のマナーさえ守れれば、別に何円でも文句は言われないだろう。


そんな『投げ銭』が、スパチャと名を変えてYouTubeに降臨したわけである。


結論から書いてしまうが、今のYouTube界でこの『スパチャ』という機能は大変便利な収入源として重宝されている。何時間もの生放送を逐一行い、リアルタイムで観ている人から一定の金額を頂戴するこの方法は、有名YouTuberでなくても高収入を一夜にしてゲットできる千載一遇のチャンスでもあるからだ。


何度も書いてしまって恐縮だが、その人らは決して著名な人物ではない。いわゆる一般的な、酷く言うならば『底辺YouTuber』と呼ぶべき人の方が割合として多いだろう。しかしそんな人たちの中には1日で数万円のスパチャを得ているYouTuberもザラで、一般的には名前を知られていなくとも、汗水垂らすサラリーマンよりも遥かに高い収益を、PCの前で生放送(持論)を述べるだけで得ているのである。

 

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例えば僕が個人的にフォローしていたこのYouTuberのある日の呟きを見てみると、
「1日で20万円もの投げ銭(スパチャ)を頂戴した」としている。詳細は省くが、彼はツイッターのフォロワー数7000人、チャンネル登録者数2万人、日々の動画再生数4000回前後と、決して有名なYouTuberではない。しかしながらこの日の約6時間に及ぶ『雑談垂れ流し動画』たった1本だけで、ここまでの収益を得ているのである。ちなみにこのスパチャの額はリアルタイムの金額でしかなく、もしも別日にこの動画を閲覧した人がいるならば広告収入もプラスで入ってくる計算になるため、最終的な利益は20万ではきかない。おそらくは僕らが想定する以上に、ウハウハな生活を送ることが可能なはずだ。


更に2020年1月8日に配信されたにじさんじ所属のVTuber(バーチャルユーチューバー)御伽原江良の生放送では、約1時間の放送にも関わらず、彼女の「今がスパチャの投げ時だ!投げて!」の声と共にスパチャが降りしきり(これは誇張表現では一切なく、実際に大量の札束に埋もれる様子が映し出されていた)、この日1日の生配信におけるスパチャ総額は400万円以上にのぼったという。


そんな光景を見て僕は思う。「これってどうなの?」と。


そう。この収入源が罷り通ってしまうならば、要するに『有名になれば何でも良い』という考えに他ならないと思うのだ。


例えば悪口を垂れ流すYouTuberがいたとする。動画の内容は著名なYouTuberを大々的にディスったり、今の世の中を真っ向から否定するものばかり。おそらく閲覧者の大半は、嫌悪感を覚えることだろう。


しかし人間には様々なタイプがいる。大半は「嫌だな」と感じるトークであっても、その中の数%は面白がって焚き付ける閲覧者もいるはずなのだ。2ちゃんねるのスレッドや、YouTubeのコメント欄を思い返してほしい。その中にはほぼ確実に、一般論とはかけ離れた語り口で持論を述べる人物がいるはずである。


極論を言うならば、そんな『僅か数%だけ』の人々の思想(ニーズ)に合致した瞬間、スパチャ(収入)は絶対的に入ってくる算段になるわけだ。


「スパチャを貰えれば何でも良い。悪口を書こうが商品をディスろうが、それで金が入ってくるからいいじゃん」と見切りをつけ、そういった『悪い奴ら』を焦点に当てたYouTuberは、間違いなく今後多く出現するだろう。


だがこれは、そもそものYouTuber論とは異なった考え方のはずなのだ。


一昔前のYouTuberが述べた『好きなことで生きていく』というフレーズに象徴されるように、例えば今YouTuber界で頂点に君臨しているHIKAKINやはじめしゃちょーといったYouTuberは、このポリシーに則って動画を投稿し、今の地位を築き上げているはずなのだ。


それに比べてスパチャで収益を得ているYouTuberはどうだろう。果たして自身が行っていることが本当に『自分の好きなこと』だと、はっきり言えるだろうか。人の悪口を言いふらして自己満足に浸る動画が、一定のチャンネル登録者にのみ理解できる会話ばかりを列挙する動画が、本当に『自分の好きなこと』なのだろうか。


純粋で清き閲覧者から見ると、YouTuberとは『確固たるポリシーを持った人物のみが行う収益源』であって然るべきだと思うのだ。よって「金だけ貰えれば何でも良い」という邪な感情で活動するスパチャ目的のYouTuberはズバリ、真面目に奔走するYouTuberを真っ向から否定する低俗なものである。


上記の事柄を踏まえて、僕はスパチャ機能は即刻廃止すべきだと考える。無理矢理閲覧者を増やしてきたYouTuberが出す動画に投げ銭を払う必要などない。本当にYouTuberが力を注ぎ、閲覧者のために頑張ったであろう面白い動画には、そんな機能はなくてもファンや広告収入が付随するはず。否、そうでなくてはおかしいのだ。


……しかしここまで書いてきて何だが、楽に収入源を確保する方法が確立している以上、スパチャ機能が無くなることは絶対的にないのだろうとも思う。先日新元号に変わったが、令和ではそういったスパチャが今以上に普及していくだろう。僕のこうした正義感ぶった考え方は、もう古いのかもしれない。だがこんな凝り固まった考えを抱く人も、僅かながらいるはずなのだ。


もっと言えば、そういった『楽に金が入る』といった名目でYouTuberが知られれば、今後若者はどんどんYouTubeに参入していくはずだ。近い将来『子供のなりたい職業ランキング』のトップをひた走っているのは野球選手でもプログラマーでもなく、YouTuberなのかもしれない。